ニュースと中継に代表されるスポーツ番組の放送される過程を追う。
阪神優勝を追いかけるスポーツニュースの現場
スポーツ選手の活躍はいつも私たちに夢と希望をもたらし、明日への活力を与えてくれる。18年ぶりにリーグ優勝を果たした阪神タイガース。スポーツニュースではその瞬間を伝えるべく、連日連夜スタッフの慌しい準備と取材が続いた。そしてシナリオのないドラマとして数々の名勝負を伝えてきたスポーツ中継。カメラは一瞬のドラマを逃せない。スポーツ番組の製作現場をもうひとつのカメラで追った。

 

<スタジオ>
ゲスト:スポーツジャーナリスト二宮清純 氏
MC:龍田梨恵 TXアナウンサー

龍田: テレビで伝えられるスポーツをジャーナリストとしてどうみていますか?
二宮:もともと、スポーツとテレビは相乗効果というか競い合いながら発達してきた。
しかしこれからもいい関係であり続けるためにはもっともっと知恵をしぼらなければならない。
 
☆スポーツニュースの製作過程
●試合の内容を伝えるVTR部分の作成 (横浜ベイスターズ球団担当の上野記者)
記者の仕事
試合前の選手の取材 
→試合開始:スコアシートをつけながらカメラを指示


映像に合わせてナレーションをいれてニュースVTRが完成

上野記者:いかに短い時間の中にエッセンスをいれるか?試合の分岐点となる部分をいかに伝えるか?がポイント

●優勝の瞬間を伝えるニュース番組
M9になった頃、テレビ東京ではスポーツニュースのチーム内に阪神優勝担当が決定。
松下記者:生放送なので、間違えずに正確に視聴者の求めるニュースをタイムリーに伝えることが必要。

松下記者を追うカメラ
最短であと2日の神宮球場。優勝パターンを想定して構成をたてる日が続く。
しかし、神宮では優勝は決まらず、M2で迎えた名古屋ドーム。可能性があれば準備は必要。記者の準備はもちろん、祝勝会の行われるホテルでも、中継するスタッフなど着々と準備が進む。
しかし、名古屋でも優勝はなく、すぐに大阪に移動。ケーブルなどの中継の準備も撤収。
大阪へ移動して、テレビ大阪で仕切りなおしのミーティング。番組の出演者も放送スケジュールが変わったため、再考しなければならない。そして迎えた9月15日。


その頃、大阪では各局趣向をこらしたインタビューブースも準備万端。
共同記者会見から始まり、祝勝会場(ビールかけ)へ。ビールから守るためにカメラは防水対策も。
大橋アナウンサー:難しいことは聞かず、うれしい表情とコメントがきければと考えている。


その映像は中継車ではすぐに編集が行われる。(左写真)収録時間が予定から大幅に変更になったために、一部を急遽テレビ東京で編集することに。
そのころ大阪の会場では各局に割り当てられた時間内で選手のインタビューを事前収録。生放送のメインとなる星野監督インタビューのために江夏豊(野球解説者)を起用。

松下記者:伝えたいことを視聴者にわかってもらいたい。このような番組の性質上、直前までわからないことが多くて(苦労も多いが)楽しいから乗り切れる。

<スタジオ>
二宮:書き手とテレビの作り手は違う。テレビはチームプレーである。
書き手はリングにあがるボクサーだとすれば、テレビはアメフトなどのチームプレーなのではないか?

Q:各局の個性について

二宮: 基本をおさえなくてはいけない。奇をてらいすぎると独りよがりになる。
優勝の瞬間など抑えなければならないものはある。でもそれだけでは同じになってしまう。どんな味付けにするかが大切。

Q:スポーツニュースに必要なことは?

二宮:ニュースはコラムである。あれもこれも詰め込むと幕の内弁当になる。
これが売り物だ!を押さえた上で、いかに切るかがディレクターの手腕がとわれるところ。

 


 

☆ スポーツ中継(ヨネックスレディスゴルフ中継を中心に)の製作過程

国内女子ツアー第18戦「ヨネックスレディスゴルフトーナメント」は8月29日(金)から31日(日)までの3日間、新潟県にあるヨネックスCCで開催された。
放送は30日(土)31日(日)の二日間。124万平方メートル(東京ドーム26個分)に108名の出場選手というゴルフ中継の様子を追いかけた。

14〜18番ホールの各ホールに中継車が配置され、全30台のカメラで追う。中継ケーブルなどは放送の3日前(水曜日)からから敷設。ケーブルは1本100メートルあたり15kgあり、その延長は20kmに及ぶ。中継するためのカメラ用やぐら(イントレ)も組まれ、一台80kgのテレビ用カメラも次々と運ばれる。(左写真:イントレ上のカメラ)

カメラについて・・・・固定カメラは一人だが、ワイヤレスカメラはカメラマンとその映像を飛ばすアンテナと2人で担当。クレーンカメラはアーム担当とカメラ遠隔操作担当二人で操作している。

音声・・・ゴルフに大切な音。ショットやカップインの音は欠かせない。これらは集音マイクをもった音声担当が各ホールに待機。

→これらの映像・音声が中継車に集まる。中継車にはVE・音声ミキサー・スイッチャーがいる。
VE:ビデオエンジニア・・・・カメラやVTRなど多くの映像素材を万全に調整する。
音声ミキサー・・・・各ホールからきた音を映像にあわせて送出する。
スィッチャー・・・カメラ数台から画像を選ぶ。
これら全体を中継車で見ているのが中継ディレクター

桐谷 中継ディレクター:ショットをするときの状況をいかにわかりやすく伝えるか?が大切。

各ホールにあるこれらの中継車から送られた映像は放送センターに集められる。放送センターの建物はこの中継のためにゴルフ場の敷地内に仮設され、放送するためスタジオさながらの機材が運び込まれている。

放送センターでは選手のプロフィールなどの情報からコースレイアウトのCGや風向・風力などの情報、効果音なども入れられる。(左写真)
その横に設けられた『放送席』では送られる映像にアナウンサーが即座に実況をつけていく。
植草アナ:(心がけていることは)流れ。逃してはいけない部分を大事にしないと全体がふやけてしまう。

放送は土・日のみだが、TV中継はトーナメントの一日目(金曜日)から本番さながらに行われる。
もし、土曜日が雨の場合は一日目(金曜日)の中継の模様が放送されることになるからである。

見学会

実はそんな中、スポンサーが招待した子供たちのTV中継見学会が行われていた。
桐谷Dが子供たちに説明。
子供たち:画面がたくさんあった。システムがよくわかった。
スポンサー(ヨネックス社長):スポーツは子供たちの夢をつくることができる。テレビは大きな力をもっていると思う。

ドラマを生むスポーツ<スタジオ>
龍田:よくスポーツがドラマを生むといいますがなぜでしょうか?
二宮:もともとドラマがおきやすいようになっている。
ピッチャーとホームベースは14.88m。これは、人間(投手)が投げたときにカウントが2ストライク3ボールになるような位置に設定されている。塁間にしても精一杯走る人間(打者)と精一杯投げる人間(野手)がギリギリで競るように設定されている。
龍田:ディレクターの演出についてはどう思われますか?
二宮:読みが大切。先をよむのがプロ。それでもアクシデントは起きる。作り手と視聴者は違う。
TVの作り手はすべてを頭にいれてシミュレーションして、しかしそのアクシデントの1%の違いを喜べるのがディレクターではないか。

最終日 ディレクターの見せ所
草野 総合プロデューサー・チーフディレクター:ゴルフのプレーは止まっていてもTV中継は止まらない。その矛盾を抱えつつ、何を見せるか?からチョイスしていくことでドラマティックにみせていかなくてはならない。
草野Dの仕事・・・・・試合が終盤を迎え,優勝の行方がトップ4人nに絞られていく中、スタッフに続々と指示を出して、各選手のショットを追う。最終組のティーショットに合わせてVTRの再生・・・など次々と画面指示を出しながら、実際の生映像と交互に収録済みのVTRなどを入れ込んでいく。そこにはトラブルショットを繰り出した優勝候補、それを追う選手のプレーなど、次なる展開が読まれ、組み込まれている。優勝が決まったところで、龍田アナの優勝インタビューが挟みこまれる。
すべての映像は中継所を経てテレビ東京へ。


テレビ東京内では、放送内容のチェック、CMの割り振りなどを行い、放送に至る。

インタビューで大切なこと
(左写真:ヨネックスオープンでの優勝インタビューシーンから)
龍田:優勝インタビューで気をつけたのは、彼女の涙やことば"間"を大事にすることでした。
二宮:"間"は大切。人から「話」を聞き出すためには"間"を操れるかどうかが肝心。

スポーツ番組の今後の課題<スタジオ>
二宮:スポーツにしてもメディアにしても発展途上である。イギリスのことばで
「民度以上の為政者はもてない」という言葉があるが、ファンのいわゆる民度以上のTV番組はつくれない。だからだめだというとそれで番組の発展がとまってしまう。やはりメディアには啓蒙する意識は必要。しかし、最近の傾向で思うのは絶叫するアナウンサーが目に付く。感動や興奮を伝えるには、自分の感情をときはなつのではなく、自分のことばをけすことによってその感動を伝えるようなデリカシーも必要になってくるのではないか?

 

 
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