危険な空き家 特措法で解体 費用は所有者に全額請求 土浦で2例目

2023年1月18日 08時00分

崩れかけた空き家の解体工事に取りかかる業者=茨城県土浦市で

 茨城県土浦市は、放置されていた市内の空き家の行政代執行による解体工事に着手した。二〇一五年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づく空き家の解体撤去は市内二例目。土地と建物の所有者は分かっており、かかった費用は撤去完了後に全額請求する。市空家対策係は「所有者には周辺住民の安心、安全を確保してほしい。放置すれば解体してもらえるとは思わないで」と強い態度で臨む構えだ。(林容史)
 特措法は、空き家の放置によるトラブルを解消し、活用や処分を促進するために制定された。市は昨年一月、特措法に基づき市内の納屋を解体撤去。この時は所有者が不明で「略式代執行」の手続きを取ったため、費用は市が肩代わりせざるを得なかった。
 十六日に解体工事を始めたのは、藤沢地区にある民家で、延べ床面積約七十八平方メートルの木造平屋。明治終わりごろの建築とみられる。市によると、〇二年ごろまで高齢の夫婦が住んでいたが、その後、空き家に。地域住民から「道路沿いにあり、崩れそうで危ない」との声が寄せられていたほか、一五年には強風で屋根瓦が飛ばされる恐れが生じ、市が屋根にネットをかける応急処置をした。
 市は一九年、この民家を特措法に基づく「特定空家等」に認定。市外に住む土地と建物の所有者に修繕や撤去を指導・勧告してきたが、回答はなく、直接会うこともできなかった。屋根の一部が崩れ落ち、建物全体がゆがんでおり、このまま放置すれば倒壊の恐れがあるとして、市は行政代執行による解体撤去を決定。本年度予算に工事費約二百三十万円を計上した。
 十六日は解体業者が、がれきが飛び散らないよう建物の周囲にブルーシートを張るための足場を組んだ。作業は週内にも完了する見込みという。
 この民家の向かいに夫婦で住む関口リキエさん(75)は「台風の時は屋根が飛ばされてこないか心配だった」と打ち明ける。以前住んでいた老夫婦とは手料理をお裾分けする仲だったといい、「家がなくなるのは寂しい気もする。子どもが出て行ってしまえば高齢世帯が増え、こういうことが多くなっていくのかも」と話していた。
 昨年三月末現在、市内の空き家は六百四十六戸。市は、うち十一戸を特定空家等に認定している。
 市は、空き家の適正管理を呼びかけるパンフレットを作成し、市役所窓口などで配布している。
 空家対策係の佐野和美係長は「事前に家族で相続について話し合っておく必要がある。困ったら弁護士など専門家に相談してアドバイスをもらってほしい」と訴える。

◆県内 空き家率過去最高14.8%

 総務省の2018年の住宅・土地統計調査(5年に1度)によると、県内では約133万戸の住宅のうち19万7200戸が空き家となっている。空き家率は過去最高の14.8%(13年の前回調査から0.2ポイント増)で、全国の13.6%よりやや高い。
 空き家のうち、管理されず放置された可能性の高い「その他の住宅」は7万8200戸で、全体の約4割を占める。10年前と比べ約1.4倍に増えている。
 県は特措法施行を受け、部局横断の「空家等対策連絡調整会議」を設置。関係団体への協力要請や、市町村が行う空き家対策への支援などに取り組んでいる。(宮尾幹成)

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