架空ID「錬金術」防げ 多額の特典ポイントを詐取 県警、札幌の母子 容疑で逮捕

2020年2月13日 02時00分
 架空名義でヤフーの会員IDを大量取得し、多額の特典ポイントを得たとされる事件が相次いで発覚している。県警は昨秋、七万件以上も虚偽の会員登録をし、約九千三百万円分のポイントを入手し、大部分を換金したとみられる札幌市の母子を逮捕。氏名などの入力だけで会員になれる手軽さが“錬金術”に悪用され、ヤフーは対策を進めている。
 県警は昨年十月、ID九十五件を不正取得し、特典で付与される「Tポイント」約十四万円分をだまし取ったとして、電子計算機使用詐欺の疑いで無職男(28)=同罪で起訴=と母親(56)=不起訴=を逮捕した。
 県警によると、会員登録のためウェブ上に個人情報を記入する際、男は自作した自動入力プログラムを利用。虚偽の氏名や住所をランダムに入力し、短時間で大量のIDを入手した。
 当時、千五百十五円分のTポイントを新規会員に贈呈するキャンペーン中で、多額のポイントを得た男は、インターネット上の店舗でギフト券などを購入。金券ショップに郵送して換金したとみられ、県警は自宅や銀行口座にあった現金約八千五百万円を押収した。調べに「貯蓄や今後の生活のためにやった」と話したという。
 ヤフーIDを大量取得する手口は、宿泊予約サイトで無断キャンセルを繰り返し、約百九十万円分の特典ポイントを得たとみられる母子が一月、京都府警に逮捕された事件でも使われている。
 ヤフーは、IDの取得希望者の携帯電話番号にショートメールを送り、記載の認証コードを入力しなければ会員登録できない仕組みに変更した。ただ、身分証の画像を提示させるなどして本人確認するのはハードルが高いとの見解で、「利便性と安全性のトレードオフではなく、どちらも高い手段を提供していきたい」としている。
 産官学の連携組織、日本サイバー犯罪対策センターの担当者は、架空IDが盗品の販売などにも使われる恐れがあると指摘。捜査関係者は「企業に厳格な対策を申し入れても強制力はなく、IDの悪用を完全に防ぐのは難しい。新たな手口を見つけ次第、摘発するだけだ」と話した。

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