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酸化ストレスを感知する仕組みを解明 ~何重にも張り巡らされたストレス感知のための巧妙な仕組み~

【発表のポイント】

  • ストレスセンサーKeap1が酸化ストレス※1を感知するメカニズムを初めて明らかにしました。
  • Keap1は複数のシステイン残基※2を使い分けることにより酸化ストレスを感知していることがわかりました。
  • Keap1は不具合が生じた場合においても酸化ストレスを感知して生体を守ることができる巧妙な仕組みを備えていることを明らかにしました。

【概要】

東北大学大学院医学系研究科の鈴木隆史講師(医化学分野)、山本雅之教授(医化学分野、東北メディカル・メガバンク機構 機構長)らは、ストレスセンサーKeap1が酸化ストレスを感知する仕組みを解明しました。

酸化ストレスは老化、そしてがんなどの様々な病気を引き起こす原因となりますが、転写因子※3Nrf2は酸化ストレスに応答して活性化し細胞を保護します。つまりNrf2は酸化ストレスから体を守っています。Nrf2はストレスセンサーKeap1によって、活性を調節されています。しかし、Keap1が環境中の毒物(親電子性ストレス※4)を感知する仕組みはこれまでに知られていたものの、酸化ストレスがNrf2を活性化するメカニズムは長い間わかっていませんでした。

今回Keap1が親電子性ストレスとは異なるメカニズムで酸化ストレスを感知することがわかりました。また、Keap1は、仮に不具合が発生した場合においても酸化ストレスを感知して生体を守ることができる巧妙な仕組み(フェイルセーフ機構)を備えていることがわかりました。本研究成果により、Keap1は複数のシステイン残基を使い分けて様々な環境ストレス刺激を感知していることが明らかになりました。今後、これらの知見を活用してNrf2活性化剤の開発が発展することが期待されます。

この成果は米国時間2019年7月16日に米国科学雑誌「Cell Reports」のオンライン版で公開されました。

【図】酸化ストレス応答におけるKeap1-Nrf2制御系のフェイルセーフ機構
Keap1は、Cul3と複合体を形成してNrf2をユビキチン(Ub)化し、Nrf2を分解することでその働きを抑制する。Keap1は、親電子性ストレスとは異なるシステイン残基(SH)で酸化ストレスを感知し、ジスルフィド結合(SS結合)を形成してNrf2を活性化する。酸化ストレスセンサーの一部に不具合が生じた場合においても、酸化ストレスを感知してNrf2を活性化できる仕組み(フェイルセーフ機構)を備えている。

【用語解説】

※1 酸化ストレス
過酸化水素など反応性の高い活性酸素種によってDNAやタンパク質が傷害されること。外来ストレスやミトコンドリアでの酸化的リン酸化など様々な要因によって細胞内で発生する。

※2 システイン残基
タンパク質を構成するアミノ酸の一つで、側鎖に反応性の高いチオール基(SH基)を持っている。

※3 転写因子
DNAに結合して遺伝子の発現を制御するタンパク質の総称。

※4 親電子性ストレス
内部に電子が少ない部分を持った分子(親電子性物質)によってDNAやタンパク質などが傷害されること。環境中の毒物の代謝(解毒)過程で生成することが多い。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究内容に関すること>
東北大学大学院医学系研究科 医化学分野
東北メディカル・メガバンク機構長
教授 山本 雅之(やまもと まさゆき)
TEL: 022-717-8084
E-mail:masiyamamoto*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院医学系研究科 医化学分野
講師 鈴木 隆史(すずき たかふみ)
TEL: 022-717-8088
E-mail:taka23*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道担当>
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)
広報・企画部門
長神 風二(ながみ ふうじ)
TEL:022-717-7908
FAX:022-717-7923
E-mail:pr*megabank.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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