五ェ門死す…井上真樹夫さん80歳、急性心臓死 声優以外にもマルチな才能

[ 2019年12月3日 05:30 ]

 井上真樹夫さん
Photo By 共同

 アニメ「ルパン三世」の石川五ェ門(2代目)、「巨人の星」の花形満などで人気を博した声優の井上真樹夫(いのうえ・まきお)さんが、11月29日午前、持病の狭心症を悪化させ急性心臓死のため千葉県内の自宅で亡くなっていたことが2日、分かった。所属事務所の青二プロダクションが2日、公式ホームページで発表した。80歳。山梨県出身。通夜・告別式は近親者のみで行われる。お別れの会を行う予定はないという。

 「また、つまらぬ物を斬ってしまった」が決めぜりふの寡黙で渋い剣の達人五ェ門や、華やかでプライドが高い花形など二枚目を中心に幅広い役柄をこなした。特に五ェ門の声は30年以上も担当。井上さんの代名詞にもなった。甘いマスクで“元祖アイドル声優”として昭和のアニメ界をけん引した存在でもあった。

 中学時代から舞台俳優を目指し、17歳でテレビデビューしたが、エキストラ程度の仕事しかなく、生活は困窮。空腹でおなかが鳴り、NGを出したこともあった。東京アナウンスアカデミーの第1期卒業生で声には自信があったことから、生活費を稼ぐために知人の勧めで声優業に挑戦。これが人生の大きな転機となった。

 1963年にテレビアニメの「鉄腕アトム」や「鉄人28号」などに出演。68年「巨人の星」の花形満役で一気にブレーク。その後も五ェ門をはじめ「キャンディ・キャンディ」のアルバート王子、「宇宙海賊キャプテンハーロック」のハーロックなどで人気を不動のものとした。

 声優だけでなくナレーション、読み聞かせ、作詞家などマルチな才能を存分に発揮。私生活では4WDの車を乗り回し、アウトドアを楽しむ一面もあった。晩年は千葉県内のお寺で住職を務めていた。スタジオに袈裟(けさ)姿で現れることもあったという。井上さんをよく知る関係者は「人当たりも良く、明るい人だった。艶の中に凄みもある声優だった」と話した。別の知人は「お酒の席が大好きで、話し上手。もてる人でした」としのんだ。

 今年は4月に「ルパン三世」の原作者モンキー・パンチさんが死去(享年81)。ルパンファンには悲しみの1年となってしまった。

 ◆井上 真樹夫(いのうえ・まきお)1938年(昭13)11月30日生まれ、山梨県出身。舞台俳優を目指し、文学座草の会、劇団表現座などを経て声優になった。テレビアニメのほか、洋画の吹き替えも数多く担当。俳優としてもテレビドラマ「安堂ロイド」「家族狩り」「IQ246~華麗なる事件簿~」などに出演。報道番組のナレーションも評判だった。

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2019年12月3日のニュース