衆議院

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第19号 平成18年4月21日(金曜日)

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平成十八年四月二十一日(金曜日)

    午前十時十二分開議

 出席委員

   委員長 石原 伸晃君

   理事 倉田 雅年君 理事 棚橋 泰文君

   理事 西川 公也君 理事 早川 忠孝君

   理事 松島みどり君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 漆原 良夫君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      太田 誠一君    川条 志嘉君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    中森ふくよ君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    枝野 幸男君

      河村たかし君    仲野 博子君

      西村智奈美君    細川 律夫君

      柚木 道義君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    滝   実君

      今村 雅弘君    山口 俊一君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   法務副大臣        河野 太郎君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    縄田  修君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     川条 志嘉君

  柳澤 伯夫君     中森ふくよ君

  枝野 幸男君     西村智奈美君

  津村 啓介君     仲野 博子君

同日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     近江屋信広君

  中森ふくよ君     柳澤 伯夫君

  仲野 博子君     柚木 道義君

  西村智奈美君     枝野 幸男君

同日

 辞任         補欠選任

  柚木 道義君     津村 啓介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)(参議院送付)

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十三回国会閣法第二二号)


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     ――――◇―――――

石原委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長縄田修君、警察庁交通局長矢代隆義君、法務省大臣官房長小津博司君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、法務省入国管理局長三浦正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細川律夫君。

細川委員 おはようございます。民主党の細川でございます。

 それでは、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 まず、窃盗罪と公務執行妨害罪、これについてお聞きをいたします。

 この窃盗罪と公務執行妨害罪等に、今まで自由刑だけであったのに罰金刑を新設する、こういう法案でございます。なぜこういう法案を出したか、罰金刑を新たに創設するということ、理由を考えてみますと、一つは、罰金刑がこれまでなかったので、したがって、起訴するかどうか迷って、そして結局起訴猶予にしたような事件を罰金で起訴できるように、こういうことが一つ考えられます。もう一つは、これまで懲役刑を宣告したけれどもちょっと重いんじゃないか、こういうように考えられるようなものが、実は今度は罰金刑で処理できる。

 こういう二通りが考えられるわけですけれども、どうも政府の方では、これまで参議院で審議をしていたその経過を読ませていただきますと、前者の方でなかなか起訴できないようなものを今度起訴できるというふうにしたい、こういうことのようですけれども、これはそのままそういうことでお聞きをしてよろしゅうございますか。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正では、御指摘のとおり、公務執行妨害罪、職務強要罪と窃盗罪について罰金刑を新設することとしています。

 まず、公務執行妨害罪とは、暴行または脅迫により公務員の円滑な公務を阻害する犯罪であり、その影響が我が国社会に広く及び得ることから、一般に違法性が高いと考えられておりますが、近年、この罪に係る検挙件数が急増するにつれ、例えば、酔余あるいは感情の行き違い等から警察官に暴行を加えたものの、すぐに制圧、検挙されるといった比較的影響の大きくない事案も見られるようになりました。

 また、窃盗罪につきましては、その利欲犯的性格を考えるとその責任を看過することはできず、また、成人による万引き事犯の急増という問題もあるところ、例えばこのような万引き事犯等については、その犯罪類型としての特質や偶発的に行われる場合が少なくないことなどから、被害金額が少額にとどまり、かつ速やかに被害回復がなされるといった類型の事案が存在しています。

 このような事案の中には、一方で、相応の刑罰を科し、刑罰が有する抑止効果により同種事犯の再発を防止する必要があると考えられるものの、他方で、法定刑が自由刑に限られていることから、現実には起訴をすべきか否かの判断に困難を伴うものが少なくありません。さらに、窃盗罪については、交通業過を除く全刑法犯の認知件数の約八〇%を占めていることに照らすと、その事案に対応した適正な処分、科刑を実現することは、我が国の犯罪情勢や市民生活の安全に与える影響が極めて大きいという意味で重要であると考えられます。

 そこで、事案に対応した適正な処分、科刑を実現する観点から、公務執行妨害罪とその補充的な犯罪である職務強要罪、さらに窃盗罪について、選択刑として罰金刑を新設し、刑の選択の幅を拡大することとしたものでございます。

細川委員 それでは、お聞きをしますと、これまで、なかなか起訴できない、ちょっと無理だということで起訴猶予にしていた、そういう人を今度は処罰する、こういうことでございますけれども、それでは、今まで起訴猶予ですから結局処罰されない、そういう人が今度はこの法案によって処罰をされるようになるわけですから、そうしますと、全体として重罰化に向かった、あるいは重罰化を目的としているんだ、こういうふうに考えられるんですけれども、どうですか、重罰化ではないですか。

杉浦国務大臣 重罰化と言えるかどうか、先生のおっしゃっている意味はわからないわけではありませんが、ちょっと首をひねるわけですけれども、今刑事局長が御答弁したように、これまで自由刑しかありませんから、起訴すべきかどうか判断に困難を伴うような事案について、より適正な処分、科刑の実現が図られるように選択刑としての罰金刑を新設して、刑の選択の幅を広げたということだと思います。

 局長が触れましたが、抑止力といいますか、それも期待されていると思います。局長答弁にあったように、刑法犯の八〇%ぐらいが窃盗罪で、そのうちかなりの部分が万引きですね、成年男女による。最近の万引きのケースというのは、いろいろ聞きますと、お金に困ってやるわけじゃない、もう豊かな社会ですから。ついついというのが多いようなんです。

 抑止力があるかどうか、これは何とも即断はできませんが、例えば飲酒運転で罰金刑を三十万にしましたよね。あれで飲酒運転は激減したという大変な抑止力があった。例えば、万引きの場合に、千円のものを万引きして三万円の罰金というようなことになると、引き合わないといいますか、そういう効果も期待できるんじゃないかというふうにも思うわけですけれども、飲酒運転の場合は重罰にしたわけです。罰金刑をうんと上げたわけですが、今度の場合は、起訴猶予にせざるを得ないけれども、その中にも罰金刑にした方がいい、刑罰を加えた方がいいというものについてできるようにしたという意味でございますから、重罰化と言われるとちょっと抵抗を感じますが、今の犯罪情勢を見ると必要なことではないかというふうに思いますが。

細川委員 今まで起訴されない、そういう人、罪にならなかった人が今度は罰せられるわけでございますから、そういう意味では私は重罰化というふうに思いますが、窃盗罪については、今大臣から御説明があったように、万引きなどもふえておりますから、そういうことから納得をするところがありますけれども、公務執行妨害罪については、これはちょっと問題があるのではないかというふうに私は思っております。

 この公務執行妨害の対象は、九割が警察官でございます。罰金刑を新設したということになりますと、大部分が警察官の公務の執行を妨害した者が新たに罰せられる。今まで罰せられていなかった者が新たに罰せられる、こういうことになります。

 本来は、国家権力というもの、その行使についてはできるだけ抑制的に行わなければならないという見地からいたしますと、警察官の権限の濫用というのがちょっと心配でございます。例えば、暴力団だとか酔っぱらいとか、あるいは若い者が、ちょっと粗暴な連中が公務を妨害して、そこで罰金刑で処理されるというようなことは、これは妥当な場合もあると思いますけれども、しかし、例えば政治的な行動、よくありますのがデモなんかの場合ですね。こういうような場合に、公務執行妨害に問われる事例がふえてくるということも当然予想されるわけです。

 したがって、私は、こういう公務執行妨害罪に罰金刑を新設して、そのことが警察権力の濫用にならないように、慎重な運用というのが当然要請されるものと思いますけれども、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか、聞かせてください。

杉浦国務大臣 もちろん、先生のおっしゃるとおり、濫用されてはならないものでございます。先生がおっしゃるとおり、国家権力の行使は抑制的でなきゃならない。デュープロセスを柱とする法治国家においては、もう当然のことでございます。一方において、例えば、警察官の職務執行は、犯罪抑止のために保護されなければならない重大な公益、法益でございます。

 今度の場合は、局長が御説明申し上げましたように、法定刑が自由刑に限られているということから、起訴すべきものは起訴するんですが、起訴猶予にする、これは無罪ではないわけで、やったわけだけれども起訴猶予にする事案の中に、罰金刑を科した方が相当ではないかというような事案が増加しているということにかんがみまして、事案に対応した適正な処分、科刑を実現するという観点から、刑の選択の幅を広げることとしたものでございます。

 したがいまして、今回の法改正によりまして、明らかに相応の刑罰を科する必要のない、起訴猶予ですか、そういうような事案についてまで新たに刑事処分の対象とすることは想定しておりませんし、捜査機関は、公務執行妨害罪を恣意的に適用することによって政治活動の自由を不当に侵害するようなことはないというふうに考えております。

細川委員 ぜひそのように、政治的行為などを妨害するような、そういう濫用については厳に慎むような御指導をしていただきたいと思います。

 続いて、業務上過失致死傷罪などについてお聞きをいたします。

 これは、罰金刑は五十万というのを百万円に引き上げる、こういうことでございまして、私は、百万円に引き上げるということは妥当な法案だというふうに考えております。

 そこで、私は、特に事故との関係でいろいろとお聞きをいたしたいと思いますが、事故というのは、航空機の事故もあれば鉄道の事故もある、そして車、自動車なんかの事故もあるわけなんですけれども、事故の場合は、何といっても再発を防止するということをやはり第一に考えなければいけないと思います。同じような事故が起こらないようにということで、そのためにはしっかりと事故調査を、事故の原因を調査することが大変大事だというふうに思っております。

 そういう意味で、私は、国土交通委員会の方では、航空・鉄道事故調査委員会の調査の対象に自動車の方も入れるべきだ、車の方もやはり第三者機関によって原因究明をすべきだ、こういうような提案もいたしたところでございます。

 また、最近、医療事故が大変問題になっております。この医療事故についても同様に、システム上の問題があるような事故、医療というのはチームによって治療に当たっている場合でございますから、その一人のミスを刑事責任に問うというようなことがあってはならない。むしろ客観的な調査によって、その医療事故が起こった原因をしっかりと究明する、そして再発防止に役立てるということが医療事故についても必要だというふうに思います。

 交通事故、それから医療事故、いろいろと考えてみましても、再発防止を考えて、事故原因の究明が私は大事だというふうに思っております。そういう意味で、この点について、個人の責任を問う刑事捜査よりも、事故原因をまず優先する、再発防止のための事故調査を優先するということについて大臣はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

河野副大臣 御指摘のとおり、行政による調査を優先して事故の再発防止をするべきではないか、それを優先するべきではないかというお考えがあるのはよく承知をしております。諸外国では、事故によってはそういうことを現にやっているところもあると聞いております。

 ただ、事故の原因の究明、それから再発防止をやるための行政機関の調査と、その行為者に対する社会的な制裁というんでしょうか、科すための刑事手続というのは、どっちを優先させるというべきものではない、どちらをどっちで置きかえるというべきものでは恐らくないんだろうというふうに思います。

 例えば交通事故などで、原因の調査をもう少し詳しくやるべきではないかという問題提起があるのはよく承知をしておりますが、だからといって事故の原因者を全く処罰しないというのは、なかなか国民感情からも御理解をいただけないと思いますし、医療事故の場合には、昨今問題になっているケースもあるのは承知をしておりますが、だれが医療事故の原因究明をやるのかというシステムそのものが、残念ながら、我が国ではまだしっかり整備をされていないんだと思います。役所がやるのか、あるいはプロとしての医師のグループから、名誉にかけて真相を究明するといった活動が行われるのか、その辺もまだ統一をされていないというふうに思っておりますので、現時点で、こうした業務上過失事件においてどちらかを優先させなければいけないというのはなかなか難しいんだろうと思います。

 事故の解明ももちろんしっかりやらなければいけませんし、再発防止が何よりも大事だということはよく理解をいたしますが、現状では、やはりそれと刑事手続をあわせて、行為を行った者の責任もきちっととってくれというのが国民感情ではないかというふうに思っております。

細川委員 確かにそういう考えもあろうかと思いますけれども、しかし、事故調査を優先して、そして調査をして、その過程の中で、個人のどの者に刑事責任を負わせたらいいか、これがはっきりしてくれば、その後で刑事責任を追及しても国民の皆さんは納得をするのではないかというふうに私は思っているもので、ぜひ引き続き御検討をお願いしたいと思います。

 それから次に、交通関係での業務上過失致死傷罪のうち、業務上過失致傷罪、死亡に至らない致傷罪について、いわゆる非犯罪化といいますか、致傷罪については起訴がなかなかされていない、起訴が少なくなっているというふうに統計上は出ております。例えば、一九八八年では自動車によります業務上過失致死傷罪の起訴率は四四・六%、これが二〇〇四年には一一・二%、こんなに減っている。四分の一にも致死傷罪については起訴率が減っております。

 こういうふうになってきているのは、一体どういう理由からこういういわゆる致傷罪が非犯罪化というか、起訴されないようになってきているのか、説明をお願いいたします。

大林政府参考人 まず、自動車等による業務上過失致死事件は、被害者の死亡という重大な結果が生じていることから、検察当局においても厳正に対処をしているものと承知しており、現に、その起訴率はおおむね六〇%台で推移しております。

 これに対し、御指摘の自動車等による業務上過失傷害事件の起訴率は、昭和六十一年に七三%を記録して以降漸減し、ここ数年は、おおむね一〇%程度で推移している状況にございます。

 業務上過失傷害事件における結果、すなわち傷害の程度は、全治数日程度の軽いものから治癒まで数カ月以上を要するものまで多岐にわたっております。また、傷害の場合は、自動車保険の普及により治療費や修理費等は保険でカバーされることに加え、示談や謝罪等により被害者が処罰感情を有しないものも少なくございません。そもそも、車社会と言われる現代社会においては、業務上過失傷害事件は一般市民が日常生活を営む上で少なからず生じ得るものであると言えます。

 こうした事件の中には比較的軽微な事案も含まれるわけですが、これらのすべてを厳正に処罰することが刑罰のあり方として妥当であるかどうかについては、いろいろな議論のあるところと承知しております。

 そこで、検察当局において、昭和六十二年以降、全国的に業務上過失傷害事件の処理のあり方の見直しが行われ、傷害の程度が軽微で、酒気帯び運転、速度違反あるいは無免許運転等の特段の悪質性も認められず、被害者も特に処罰を望まないような事案について、起訴猶予処分の弾力的運用を図ることとする一方で、重大ないし悪質な事案について厳正に対処するなどの処理が行われており、その結果が起訴率の推移にあらわれているものと思われます。

細川委員 いろいろ理由を述べられましたけれども、業務上過失傷害で起訴されないという事案、これはされるのが十件に一件なわけですね。罰金刑も当然あるわけですから、私は、少し少ないんじゃないか、やはりこの過失致傷罪の非犯罪化がずっと進んでいるというふうに思います。

 しかし、私は、致傷であっても、結果が傷害であっても、悪質なスピード違反とか信号無視とか、そういうものは、しっかり犯罪として起訴して処罰をきちっとやるべきだ。そうしないと、けがをした被害者の感情というのは、どうして処罰も何もされないんだろう、こういうふうに思いますよ、けがをした人は。やはり、十人に一人しか処罰されていないというのは、私はおかしいと思いますね。

 さらに、問題は、警察の方が全部調査するわけでしょう、どんな事故でも、けがをしたら。それで、その調査をしたって、全部それを検察庁に送っても、全部不起訴で処理されたら、警察の方だって捜査するのが嫌になるんじゃないですか。そういう声も私は聞いております。

 そうしますと、やはり再発防止の観点からもしっかり調査をしていただかなければいけませんし、加害者についての再犯防止の観点からも、やはりこれは、私はちょっとこの傾向については納得できないところでございます。

 この業務上過失傷害についての非犯罪化と言われることにつきまして、私が述べたようないろいろな疑問が起こっているわけなんですけれども、これについて大臣はどのように考えておられるか、見解をお聞きしたいと思います。

杉浦国務大臣 確かに、先生御指摘されるとおり、今確認しましたら、略式請求、罰金を含めて一割という数字でございますので、いささか低いかなという印象もないわけではございませんが、先ほど局長が答弁しましたとおり、重いものはきちっとやっているんだと、きちっと。

 ただ、被害感情が全くないケース、被害が弁償され、金銭的には保険等でカバーされているわけですが、そういう場合について、適切に処理しているということでございますので、過失の程度、結果の重大性、示談の成否、被害者の処罰感情などを総合的に考慮して、事案においては適切な処分に努めているものと私は承知しております。先生の御指摘は御指摘として受けとめさせていただきます。

細川委員 ぜひ、ひとつ検討をさらに進めていただきたいと思います。

 次に、もう一つ問題は、この業務上過失致死傷罪について、お酒を飲んで運転をして、事故を起こして、そしてひき逃げをする、こういう事例が大変ふえております。酒酔い運転などについては、罰則強化あるいは危険運転致死傷罪の重罰化によって、飲酒運転による事故そのものは減ったということで、それはそれでよかったと思いますけれども、その反面、事故を起こして、その現場から逃げるという人がふえているということは、これは大変大きな問題だというふうに私は思います。

 危険運転の刑は、最高が二十年でございます。これに対して、業務上過失の方は最高が五年、救護義務違反が道交法で五年の懲役、これが上限でありますから、併合罪でも七年六月というのが最高でございます。そうしますと、飲酒していて事故を起こした、それで、そこで事故でけがした人たちを救助するということをするよりも、そこから逃げた方が刑が軽くなる、こういうふうに思ってその場を逃げる、そういうふらちな者がいても不思議ではないというふうに私は思っております。

 事故を起こして、そこで救護義務を果たさず逃げた場合のいろいろな運転者の理由を警察の方で調べておりますけれども、それは、やはり酒を飲んでいた、だから逃げたというのが圧倒的に多いわけでございます。したがって、これについては、交通事故で亡くなった遺族の方々からもいろいろと法務省などにも要請があると思いますけれども、この飲酒、ひき逃げをなくす方法について、ぜひ、刑法や道交法改正も含めて検討していただきたいと思いますが、法務大臣、どのようにお考えでしょうか。

杉浦国務大臣 先生の御指摘の点が問題であることは認識しております。

 その前に、一般論でございますが、事故を起こして逃げたからといって、いわゆる危険運転致死傷罪が一律に適用されなくなるものではございません。ただ、本人が出頭したときには酒気はさめておりますので、酒気帯びで運転したかどうか認定するのはなかなか難しいという点がございます。それを免れるために逃げるというケースが多々あるんじゃないかと思いますが、そうしたときにおいても、事案に応じた対応に努めているものと思います。

 また、業務上過失致死傷罪というのは、過失犯を処罰するものでございます。危険運転致死傷罪は故意に悪質、危険な自動車の運転行為を行ったことによって人を死傷させた者を、その行為の実質的な危険性から特に重く処罰するものでございまして、そのような罪質の違いから、両罪の法定刑に差異があるものというふうに考えられます。

 先生おっしゃったように、ひき逃げをした方が得をするというようなことはあってはならないことでございます。先日、副大臣と一緒に被害者の方々とお目にかかって、事情をいろいろとお伺いしましたが、胸を詰まらせる思いがございました。被害者の方々は、ひき逃げ罪、ひき逃げそのものを処罰してほしいという要望でございました。

 新たな法整備の要否については、関係省庁と協議しながら、道交法は警察庁でございますので、関係省庁と協議しながら検討を進めてまいりたいと考えております。

 検察当局においては、今後とも警察と連携しながら、事案に応じた対応に努めていくのは当然ですが、そのように承知しております。

    〔委員長退席、松島委員長代理着席〕

細川委員 警察庁の方に。

矢代政府参考人 いわゆるひき逃げの罰則につきまして、さらなる引き上げを行うべきであるという意見、要望があることは私どもも承知しておりまして、今後、ひき逃げ事案の発生状況や実際の科刑状況、危険運転致死罪、致死傷罪等、他の犯罪に対する刑罰との均衡も踏まえまして、関係省庁とも協議しつつ、どのような対応が可能か、検討してまいりたいと考えております。

細川委員 酒を飲んで事故を起こして、そこから逃げて、さらに酒を飲むというような、本当にふらちなやつもいますから、ぜひそこは検討して、そういう悪いやつを逃さないようにしっかりやっていただきたいと思います。

 次に、労役場留置についてお聞きをいたします。

 罰金を払えなかった場合には労役場に留置をするという制度がございますが、この制度は罰金刑の代替刑だとされておりますけれども、この労役場留置というのは懲役と一体どこが異なるのか、労役場留置とは一体何なのか、お聞かせください。

大林政府参考人 まず、労役場留置制度の法的性質についてお答え申し上げます。

 労役場留置とは、罰金等の言い渡しを受けた者が、その罰金等の全額を納付できない場合に、その者を労役場に留置して労役を科すものでありますけれども、この性質につきましては、罰金等にかえて自由を剥奪する換刑処分と見る見解と、罰金等の特殊な執行方法と見る見解とに分かれておりまして、この点について、最高裁は、換刑処分であり、また罰金の特別な執行方法であると判示しているものと承知しております。

小貫政府参考人 続いて、具体的な執行場面のことについて御説明申し上げます。

 御案内のとおり、労役場は、監獄法八条一項によりまして、監獄に付設するもの、こうされております。実際は、全国の刑務所あるいは拘置所に附属して設置されております。

 ただ、現実問題といたしまして、刑務所等と別個の建物を設置することは困難である、こういうことから、施設の一画を分画いたしまして、分画した区画を労役場として運用しているのが実情であります。

 この労役場の留置者につきましては、衣類あるいは寝具について、自弁のものを使用することができるとされているほかは、その性質に反しない限り懲役受刑者に準じて処遇すべきもの、こういうふうにされているところであります。

 具体的には、自由刑といささか性質は異にする、こういうこともございまして、原則として、懲役受刑者と同一の雑居房に収容したり、あるいはまた、同一の工場に出役させるということはしてはならないとされておりまして、実際には、直接拘置所等に入所した場合は、その居室内において梱包具の製作などの作業をさせているという現状でございます。

細川委員 そうしますと、労役場留置というのは懲役刑で収容されているのと同じようなことだということならば、では、そもそも、懲役刑にせずに罰金という一ランク軽い刑をやったのが、結局、労役場に留置されると懲役刑と同じだということで、僕は、どうもこれは刑法のちょっと矛盾したところではないかということで、この点については大臣にもお聞きをしたかったんですが、時間がございませんので先に進みます。

 実は、罰金が払えない場合には労役場に留置をされるんですけれども、罰金は金額が定められます。そうしますと、その労役場に留置をされる、その一日が幾らか、これを換算しなければならないことになりますが、通常、裁判なんかでは、一日五千円というふうに換算をして労役場留置の期間というのが決まるわけなんですけれども、しかし一方では、例えば、平成四年の四月に東京地方裁判所で判決がありました例によりますと、こういう判決、右金額五億円を完納することができないときは、金百万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する、こういうような高額の換算の例があります。

 労役場留置されて、同じような仕事もして、同じことをするんですけれども、その人が、一方では五千円と評価されて、一方は百万円。これは余りにも大きな差があり過ぎるんですけれども、これは憲法十四条の法のもとの平等に反するのではないかというふうに率直に私は思いますけれども、大臣の率直な意見をお聞かせください。

    〔松島委員長代理退席、委員長着席〕

杉浦国務大臣 確かに、先生のような印象といいますか御意見もあり得ると思いますけれども、刑法では、罰金等の言い渡しをするときには、その言い渡しとともに、労役場留置の期間も定めて言い渡さなければならないといたしております。法定期間は、一日以上二年以下の期間となっております。そして、その法定期間の範囲内において留置期間の決定を裁判官にゆだねているわけでございます。

 それで、労役場留置の期間につきましては、一日当たりの換算額で定めるという実務が定着しておるわけですが、この換算額については、最高裁判所の判例で、裁判官が自由裁量をもって定めることとされ、個々の事案ごとに判断がなされているものと承知しております。

 罰金額が高額の場合、脱税事件になりますと、逋脱額において、個人の場合は億を超えるのもあるようですから、ですから、百万円というふうにしないと二年におさまらないというようなケースもあり得るんじゃないだろうかと思うわけです。したがって、裁判官が自由裁量権の範囲内で妥当な判断をされているものと私は承知しております。

細川委員 ちょっと、大臣の御説明では、私、法のもとの平等に反するのではないかと。だから、裁判官の裁量でやっても、実質的に、一方が五千円で一方が百万円というのは、これはだれが考えてもちょっとおかしいんじゃないでしょうか。これはぜひ検討していただきたいと思います。

 次に、労役場留置者というのを年末の収容人数で見ますと、物すごくふえているんです。平成十一年では二百八十四人だったものが、平成十六年では八百八十四人、五年間で何と三倍以上になっております。

 これは、交通業過の罰金刑が高くなったということも一因だと言われておりますけれども、今度、窃盗罪それから公務執行妨害罪などで罰金刑が新設をされます。そしてまた、業務上過失致死傷が五十万から百万に増額というか高くなりますから、そうしますと、罰金が完納できなくて労役場に留置される人がどんどんふえるんじゃないかと思います。

 一方で、刑事施設、収容施設は、今、過剰収容で、大変な過密になっているわけなんです。これは大体、罰金刑を創設して、そして罰金刑を五十万から百万に業過では上げるとなった場合に、どれぐらいふえるというふうに予想しているのか。

 そして、いわゆる刑事施設に、今でこそ過剰収容と言っているところに、さらにふえて、そもそも収容し切れなくなるんじゃないか、こういう心配もあるわけなんですけれども、その点、どういうふうに考えておられますか。

大林政府参考人 今回の改正によりまして、罰金刑を受ける者がふえる、その結果労役場留置となる者もふえる可能性は、確かに委員御指摘のとおりだと思います。

 ただ、一方では、罰金刑が科されながら払わないで済むということになりますと、これまた刑罰としての実効性が保たれないという問題もございます。私どもとしては、任意の納付ということを粘り強く働きかけた上、それでもなお完納することができないと認めた場合に、労役場留置という形にせざるを得ないということで、その取り扱いについては慎重に努めてまいりたい。

 お金がないという問題については、本当にない人についてはなかなか避けられない問題は確かにございますけれども、ただ、なるべくそのような形にならないで済むものならばそのように努力してまいりたいというふうに考えております。

細川委員 時間が来ましたからあれなんですけれども、私の質問にちょっと答えていただけなかったんですよ。

 今度の罰金刑を創設し、業務上過失致死傷では五十万から百万に上げる、そうした場合には、大体どれぐらいの労役場留置がふえるのか予想しているのかということを聞いて、それに合うような施設、今、過剰収容になっているんだけれども大丈夫か、こういう質問ですから、これをちょっとお答えいただきたいと思います。

小貫政府参考人 今回の法改正で労役場留置者が増加していくか、あるいはどのくらい増加するか、現時点で確たることは申し上げられません。

 いずれにしましても、過剰収容状況下にございますので、今までも収容力の増強には努めてまいりました。この法律が成立いたしまして施行されるということになれば、その推移を注意深く見守りつつ、施設増強が必要であればそれに対応してまいりたい、このように考えているところでございます。

細川委員 大変不満な回答ですけれども、時間が来ましたので、これで終わります。

石原委員長 次に、河村たかし君。

河村(た)委員 河村たかしでございます。

 きょうは罰金刑法の話ですけれども、先ほど細川さんも言われましたように、公務執行妨害なんかのその公務が本当に適法であったかどうかというのは重要な争点になると思いまして、今回、ここにこれを持っていますけれども、これは、神戸のあるところで、後でパネルで示しますけれども、そこで歩道をちょっと通った人が手錠をかけられて逮捕された、原付で歩道を走った人がその後逮捕されてしまったということです。よく捜査の現場でいろいろなことがあるんじゃないかと言われますけれども、本当に、これがテープに入っているのは初めてだと思います。

 今、皆さんのところに起こしたものは行っておるよね。全文を起こさせていただいて、それが行っておると思います。

 それで、警察庁にお伺いしたいが、まず、このテープはいわゆるにせメールのようなものではないですね。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 どのようなものか、ちょっと確認しようがありませんので、またお答えのしようもありませんが、どのようなものかについてのお答えを申し上げるわけにいきません。

河村(た)委員 ちょっと待ってくれよ、おい。僕は非常にオープンにやっていまして、やみ討ちはしないんです。だから、後で言いますけれども、ぜひここで本当は再生してほしかったんだけれども、事前に民主党は強く要求したけれども、お断りになった。これは全くけしからぬことで許しがたいけれども、こういうことを国政調査でやらないかぬじゃないですか。だけれども、きのう記者会見で、当局も全部来てくれと、そこで流しましたよ、これ、現物を。それと、当局には責任があるだろうから、実はテープ起こしをしたものも渡したじゃないですか。確認されたでしょう、兵庫県警に。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 御説明が不十分でございましたが、にせメールのようなものではないということの意味が、いかなるものを私が確認したらよかったのかということがよくわかりませんので。

河村(た)委員 本物かということですよ。きのう聞かれたでしょう、逮捕の要件すべて、兵庫県警に。その方に聞いて、こういう状況で録音された、こういうのを渡したし、特別にメモももらったし、河村さん立派だ、ちゃんと事前に全部流した、これは本当ですねと聞いたでしょう。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 そのテープに基づきまして御質問いただきました事案については、確かに、兵庫県警で逮捕した事案、これに該当するものはございます。

河村(た)委員 録音されていたということも聞きましたね。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 そのように承知しております。

河村(た)委員 こういうことでございますので。

 ちなみに、そこに本人が来ております、この後ろでございますけれども、このときの被逮捕者が。大変勇気がありますよ。皆さん笑っておられますけれども、これはすごく勇気があるんです。彼は司法書士です。すごい勇気をかけて、自分も大変だけれども、これは逮捕歴がつきますから。

 では、彼に逮捕歴は残っていますね。

縄田政府参考人 警察において逮捕した者につきましては、私どもといたしましては、犯歴として、データとして保管をいたしてございます。

河村(た)委員 そういうことなんです。彼はまだ独身ですよ。それで、司法書士もやっておられて、このこと自体、ここへ出てくるのもリスクがありますけれども、彼の人生にとって決定的に大きな問題ですよ。たった一人でもこういうことを救うというのは、国会挙げてやってもらわないかぬ。交通違反というのは年間に八百万件ぐらいありますから、こういうことがいろいろなところで起きていないかというのを検証せないかぬですよ、委員長。

 だから、これは本当にぜひ再生させてほしいんですけれども、どうでしょうか、委員長。

石原委員長 これは理事会で協議をさせていただきまして、そのテープの起こしを参考資料として配付するということで合意しております。

河村(た)委員 本当に、これは押すと鳴るんですけれども、押しましたけれども、ボリュームゼロにしてありますので鳴りません。約束というか、約束じゃないんだけれども、承服できぬけれども、一応理事会で合意しましたので。

 空で回っておる音だけ出るかどうか知りませんけれども、全く個人的に残念というより、今ちょっと漆原さんにも言っておったけれども、やはり実際の逮捕の現場というのとここらの話とは違うからなということだよね。

 そういうことですので、ぜひひとつ、委員長、ぜひ今度はテープを再生させていただくことと、それから、当事者ですね、そこに本人が来ておりますので、本人はここにいつでも出ると言っております。それから警察の方、当事者です、向こう側でしゃべっておられる方、逮捕だ逮捕だと言っておる方、手錠ははまっておるんだと言っておる方ですよ、ぜひここに呼んでいただいて、やはり捜査の最前線の状況を国政調査をお願いしたいと要望しておきます。

石原委員長 要望を聴取いたしました。

河村(た)委員 聴取しましたというのは、何ですかね、これは。

石原委員長 聞いたということでございます。

河村(た)委員 聞いたですか。理事会か何か知りませんけれども、御議論をいただくわけですね、当然。

石原委員長 理事の方からお話が出れば、協議いたします。

河村(た)委員 えらいもったいつけた言い方でございますけれども、本当に、党がどうのこうのというより、これはやらないかぬですよ。

 それから、警察庁、かつて今まで、逮捕されている現場が録音されているテープというのは聞いたことがありますか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 なかったかどうかは子細に確認できませんが、聞いたこともありませんので、少なくとも、非常にまれである、あるいはなかったか、どちらかだと思います。

河村(た)委員 そういうことでございます。

 ちょうど大林さんも来てみえますので、ちょっと質問通告してありませんが、御自分の御体験でいいんですけれども、最高検の検事をやってみえますので、今まで自分の御体験の中で、いろいろな取り調べをやられたと思いますけれども、逮捕もされたことがあると思いますけれども、その現場が録音されているというのを聞かれたことがありますでしょうか。自分の体験だけでいいです。

大林政府参考人 逮捕後、警察に引致されるまでの間に車の中でテープを録音していた、被疑者がテープを録音していて警察に着いてからそれが見つかったという事例があったということは、私の経験上、それ一件はあります。

河村(た)委員 では、そのテープを聞かれたことはありますか。その話があったということですが、そのテープを実際に聞かれたことはありますか。

大林政府参考人 私はそのテープ自体を聞いたことはございません。

河村(た)委員 そういうことでございますので、多分これは国会始まって以来というか、警察庁の方ははっきり、ないということでございましたし、大林さんも本人は聞いたことがないということでございますので、大変貴重でございますから、ぜひそのチャンスを理事会でつくっていただきたいということでございます。

 それでは事案の方に行きますと、これはどっちに見せたらいいかわからぬけれども、カメラは向こうの方ですか。

 これは神戸でございますけれども、順番に行きまして、私が指さしておるところが、ちょうど歩道が行きどまりになっておりまして、あるところへ出るところで行きどまりになっておって、戻ればよかったんですけれども、戻って道を完全に逆走すればいいですけれども、それはいわゆる通行区分違反といって、歩道の上を、正直言って余りいいことじゃないですけれども、たまにちょっと走る場合ありますわね、こういうことです。

 ここから出てきまして、袋小路になっていまして、ずっとこちら側に植え込みがあるんですわ。ここへ出ておるのは私ですけれども、植え込みがあって、なかなか出られない。ちょっと区分があるところもあるんですけれども、相当大きな段差がありまして、原付ですけれども、後ろが二つのもの、ピザをよく運んでおるもの、ああいうものでございましたので、この一番下までずっと行った。この信号のところで現行犯逮捕で手錠をかけられてしまった。こういう事案でございます。

 本人は、通行区分違反は認めております。これは通行区分違反を争っておるんじゃないということでございます。逮捕自体が、それも手錠をかけるまで至ることか、これは逮捕歴が残っていますから。そこら辺の一部始終が録音されているということでございます。

 さて、まず、なぜ逮捕したかということをお答えください。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 なぜ逮捕したかということでありますが、これは、被疑事実は、ただいまのお話のように、通行区分違反でございます。

 これは、大体、状況を要約いたしますと、この日、歩道上を走っている単車、原付ですが、これを認めまして……(河村(た)委員「早目に言ってちょうだいよ」と呼ぶ)はい、わかりました。違反事実を告げまして、これは道交法違反ですので、これを検挙しようとしたわけです。人定事項を確認するために運転免許証の提示を求めました。これに対しまして、この方は、見せる必要はない、提示義務はないでしょうということでございました。さらに提示を求めましたが、運転免許証様のものをウエストポーチ内の財布から取り出し、ちらつかせるだけで、記載内容を確認できるまでの提示はなかったということでございました。これが一つでございます。

 そこで、捜査は、道交法違反だけではなくてすべて、人定事項の確認というのがスタートでございますけれども、免許証をよく見せてくれないということで、これは無免許の可能性もあるか、あるいは人定事項の確認にも役立つということで、運転免許照会を実施するために違反者に人定事項を自書していただきました。本籍地の県名、住居、携帯電話、それからお名前、氏名ですが、これを記載していただきました。生年月日については記載を拒否されましたので、運転免許照会はそこでは実施できませんでした。

 そこで、他の身分証明となるものはないかということでしたが、これは知らぬということで、応じないということで、この段階でも結局本人の人物を特定することができなかったわけであります。お名前を申し上げておりますけれども、確かにこの人がその人であるかということの特定はできない状況でございました。

 そこで、この方は急いでいるなどと申しまして立ち去ろうとしますので、まだ人定が明らかでないということで、このままでは逃走のおそれがあるということで、道路交通法違反の、先ほど申し上げました通行区分違反で現行犯人として逮捕したわけでございまして、この際に、一人で最初対応しておりましたが、現行犯人逮捕のために応援警察官とともに手錠をかけて逮捕いたしております。これがおおむね四十分弱の出来事でございます。

 お尋ねのなぜ逮捕したかということでございますが、本事案に対する逮捕ですが、人定事項を確認できず、逃走のおそれがあると判断して行われたという報告を受けているところでございます。

河村(た)委員 この内容を読みますけれども、先にちょっと言ってからかな、皆さんに誤解されるといけませんので。

 彼に運転免許の提示義務はあるんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 運転免許証の提示義務というのは、それに違反すると罰則があるという意味の義務だと思いますが、これはございません。

河村(た)委員 これは実はないんですよ。五項目だけ決まっておりまして、それも、無免許かどうかを確認するためということですよね。どうですか。

矢代政府参考人 御指摘のとおり、免許証の提示義務は、無免許ないしは無資格、飲酒運転、それから過労運転、これは薬物の使用ですが、これらの場合には往々にして無免許の場合が多いわけですので、免許証の提示義務を課しております。

河村(た)委員 ですから、本人、写真を、本当は出さぬでもいいんだけれども、自分で出すというか、いわゆる提示義務があるときの出し方というのは判例であるようですけれども、そういう意味じゃないですけれども、こういうふうですよと見せていますから、今も言われましたように、運転免許証は出された、あるということはわかった、そこはそういうことでよかったんですね。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 運転免許証様のものを持っておられまして、これは示されました。ただ、内容は確認できておりません。あと、先ほど申し上げましたように、免許証照会もできませんでした。大体そういう状況でございます。

河村(た)委員 ちょっと細かいところの前に、この後に手錠をかけられましたけれども、これはなぜ手錠までかけたんですか。やはり手錠をかけるというのは相当なことですからね。手錠をかけない逮捕というのは当然ありますよね。これはどういうことですか。

矢代政府参考人 逮捕は被疑者を実力支配下に置けばいいわけでありまして、手錠の使用は必ずしも必要ではありません。ただ、身柄を確実に捕捉するために必要に応じて使用するものでございまして、本件事案については、手錠の使用については逮捕に必要な実力行使として行ったというふうに報告を受けております。

河村(た)委員 必要だと言いますけれども、これは犯罪捜査規範ですよね、警察庁の書いた犯罪捜査規範の中で、百二十七条、この中に、手錠等の使用は必要最小限にとどめなければならないことは言うまでもない、こういうふうにありますよね。これは警察庁が出したものですよ、犯罪捜査規範。

 本人がその場におって、後で言いますけれども、住所も氏名も言って、手錠をかけるというのは、これは必要最小限ですか。当たり前なんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの御指摘は、犯罪捜査規範の百二十七条とそれに対する考え方でございますが、考え方はそのとおりでございます。必要最小限でやります。

 通常、例えば、任意同行を求めまして警察署の施設内にいるときに、実力支配のもとに被疑者がおりますれば、それ以上に手錠をかける必要はないわけでございます。通常、街頭におきます現場執行の場合には、身柄を確実に確保するために手錠を使用する場合が多いかと思います。

 この場合、本件事案についてどうかということでありますが、本件事案については、逮捕に必要な実力行使として、つまり身柄を確実に確保するために必要であるということで、適法な執行として行ったということを県警から報告を受けております。

河村(た)委員 だから、結局、これは録音を再生せないけないですよ。

 今回は、いわゆる可視化法案、民主党が出していますけれども、可視化法案の場合、取り調べの場合ビデオで撮るということが一番の原則になっています。できぬ場合は録音するということ。これは実際、可視化の状況になっておるわけです。

 物すごく貴重なことですから、あなたたちがそんなことを言っているけれども、これは通行区分違反でおりてきて、本人もそれを認めている、否認していないんですよ。

 それで、後で言いますけれども、人定事項の確認と言いますけれども、住所、氏名、携帯電話も言ったんですね。一体、これであと何が不足ですか。何ですか。生年月日ですか。生年月日なら、なぜ電話して確認しない。それから、オートバイに番号がついていたでしょう、車両番号。それを何で確認しないんですか。それから、ほかの証明手段あるじゃないですか。ほかの証明書ないか、なぜそれをしなかったんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、運転免許証は多くの場合人物の特定に使うわけですが、これは顔写真がありまして、この人がこの人だということについては非常にはっきりするわけであります。銀行の窓口なんかでも使います。捜査の場合、特に使いますが、交通の取り締まりの現場では大体この運転免許証で人定事項を確認するということでございます。

 それで、お話のありました、名前がこうである、あるいは本籍地の県はこうである、それから携帯電話、これは確かに承っております。ただ、これが確かに真実かどうか、それはやはりその場ではわからないわけです。

 したがって……(河村(た)委員「委員長」と呼ぶ)よろしいですか。

河村(た)委員 真実がわからないといっても、手錠をかけるんですよ、言っておきますけれども。そんじょそこらでちょっとあんただれというのと違いますよ、これは。逮捕歴を残して人の人生を破滅させるかどうかのところですよ、警察は。

 なぜ、もっとちゃんとサービスしよう、できる限りのことをやろうと。逮捕せずに、手錠をかけることは極力しない。これは犯罪捜査規範にもう一つあって、こういう交通違反の場合は逮捕を行わないようにしなければならない、こういう記述もあるんですよ。なぜそれを守らなかったんですか。一人そんなことで逮捕して手錠をかけて、当たり前のような顔をして、これは本当にとんでもないですよ。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 兵庫県警の事案の報告を見ておりますと、恐らく免許証を提示していただければ人定の確認はすぐにできただろうと思います。それで、そのための説得をかなりやっておるようでございます。先ほど申し上げましたように、逮捕までは四十分弱ほどでございます。

 したがいまして、その本人を特定するための努力をかなりやっておりまして、その上でのことでございます。

河村(た)委員 何が本人を特定するために努力していたんですか。携帯電話、かけたんですか。それと、車のナンバーは照会したんですか。単車についておるでしょう。照会したんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話しのナンバーの照会あるいは携帯電話、これは本人が持っていたわけですが、架電、これはやっておらないと思います。

 なお、逮捕する必要がある場合には逮捕することと、その際に手錠を使用するかどうか、これはまた別の問題だと考えております。

河村(た)委員 簡単に言っていますけれども、言っておきますけれども、これは大阪高裁昭和六十年十二月十八日判決、ここで国賠で負けているんですよ。逮捕しちゃった、これはやはり免許証を見せないなら逮捕すると。負けているんですよ、実は。それで、この方は否認しております。踏み切りへ入ったというものです。そういう事案で、逮捕して、負けているんですよ。

 やはり法律というのは、権力というのは、これほどまでにきちっとやらないかぬということです。人生をめちゃくちゃにするから、こんなもの当然じゃないか、そういうことですよ。ええわええわで済まされぬし、これはたまたま出てきましたけれども、もっと、八百万件の道路交通法違反、その他も含めて、おい、逮捕するぞということが、はっきり言っておどしのような、自白の強要といいますか、そういうふうに使われているんじゃないのか。

 これは本当に貴重なケースなんです。たまたまわかった。普通、本人は出てきませんよ。もう言われればみんな、済みません、わかりました、自分はおもしろくないかもしらぬけれども、全部従いますわいと。マスコミに言わぬでください、家族に言わぬでくださいとみんな従うんですよ。そうやって泣き寝入りしておる人がむちゃくちゃおるんだ。(発言する者あり)そういうことのために言っておるんであって、そんなもの、免許証見せて当たり前だなんてことはいけませんよ。法律違反ですから、それは。(発言する者あり)義務はありませんよ。

 確認しましょう。では、免許証を見せる義務はあったんですか。もう一回言ってください。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、私ども捜査をやっております者にとりましては、本人を特定しませんと捜査が進みません。したがって、免許証の提示を求めたら、ぜひ提示をしていただきたいと考えております。

 それで、その際に、提示をしなかった場合に罰則があるかどうかということについて言えば、これは罰則はありません。したがって、私どもは任意で協力を求めているわけでございます。

 ただ、それに対して国民の方々がどのような法律以外の義務を負っておられるか、これは別のことだと思います。

河村(た)委員 そういうことで、提示義務はないんですよ。別にそんなもの、ちゃんと切符切ればいいんですよ。考えないかぬじゃないですか、この人を逮捕して、どういうことが起こって、彼の人生どうなるかと。

 これは通行区分違反でしょう。(発言する者あり)切れますよ、そんなの。切符切れないですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 そのままでは切符を切るわけにはまいりません。

 実は、ほかの違反ですと、犯罪ですと、本籍照会までやります。本籍照会をやりまして、我が国にこういう人が、この人物がおるということをまず確定しまして、その次に、この人はこれに該当するということを特定していきまして、それから立件していくわけでございます。

 ただ、交通違反の場合には、免許証ということで、これは本籍照会をしなくても、顔写真入りで、かつ、そこに本籍も書いてありまして、したがってそこまでの必要はないということで、それで、免許証を確認した段階で、人物を特定した段階で切符を切っておるわけでございます。

河村(た)委員 法律はそういうふうになっていないということと、やはり捜査側というのはすごい権限を持っておるので、結局、こういうのはほかにもあるんですよ。

 それでは、ちょっと初めのところを読もうかな、逃亡のおそれというところですね。逃亡のおそれ、どういうふうであったんですか、実際。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、これを立件しようとしますと、人物を特定して、それで、この者が確かにこのようなことを行ったということを証明するわけですが、そうすると、この段階で、この人が確かにこの人だということがわからない段階ですから、そうしますと、その場で、現場を離れてしまいますと、この場合被疑者ということになりますけれども、被疑者に対して警察の捜査の手続というものがそれ以上事実上及ばなくなってまいります、あるいは困難になってまいります。そこで、この場合、説得をいたしましたが、これを拒み、その現場を立ち去ろうといたしますので、ここにおきまして逃走のおそれがある、これをもって逃走のおそれがあるというふうに認定したわけでございます。

河村(た)委員 立ち去ろうとしたというのは、どういうふうに、どういう状況ですか、それは。

矢代政府参考人 状況は、急いでいるなどと申し立てて立ち去ろうとしたということのようでございます。

河村(た)委員 じゃ、この録音テープの前ですか、それは、あなた方が言いたいのは。逮捕するときに、急いでいると言って立ち去ろうとしたと。何で逮捕事実を言わないんですか。一言も言っていないじゃないですか、この中で。一言も言っていないですよ。

 「道路交通法違反やっていうて、逮捕するんや」と。それからその後に、「逮捕するの、ね、逃亡のおそれがあるからですか、それは。現行犯逮捕でしょう?」と本人、被逮捕者が言っております。警察官が「なんで逃げよるんや、ほれ」、その被逮捕者の方が「逃亡のおそれがあるんですか、おまわりさん」、「ある、あるやない」、こういうやりとりがあって、その中で一回もそういうようなやりとりはないですよ、言っておきますが。

 これは本人に聞きましたけれども、だから、再生してもらわないかぬのですよ。これはテープを聞くとわかるけれども、この「なんで逃げよるんや、ほれ」というところは、左手に手錠をかけられたために、本人もやはりびっくりしたと、さすがに、手錠をかけられて。それで、びっくりして、両方つけようとしたので、右手を払おうとしたという状況で、「なんで逃げよるんや、ほれ」と向こうが言った。テープを聞くとわかりますよ、大体そういう感じが。

 全然違うじゃないですか、言っておる話が。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの担当者も昨日そのテープを一緒に聞かせてもらいましたが、それで、その「なんで逃げよるんや、ほれ」というようなことのようですが、これは多分逮捕に着手した後のことだろうと思います。私が申し上げましたのはその前のことでございます。

河村(た)委員 前なら前で、本人は司法書士をやっておることもわざと言わなんだと言っていましたけれども、そうなるとかえって配慮するからいかぬで、本当の現場がわからぬからということでございましたけれども、やはりこれは来てもらわぬとわからぬですね。だから、こういうところは、やはりこの法務委員会としては、きっちり国政調査をするということで、再度、委員長にお願いしておきます。一言言ってくださいよ。

石原委員長 聞かせていただきました、しっかりと。

河村(た)委員 聞かせていただきましたといって、よくわかりませんけれども、理事の方、ぜひこれはお願いしますよ。

 それから、時間が余りありませんので、取り調べのところがちょっとありまして、弁護士を呼ぶ権利というのがありますね。

大林政府参考人 身体の拘束を受けた被疑者は弁護人を依頼する権利を有しているところ、刑事訴訟法第二百九条及び第二百十六条により準用される同法第七十八条により、警察官または司法警察員が被疑者を逮捕ないし現行犯人逮捕した場合において、被疑者が弁護人の選任を申し出た場合においては、直ちに被疑者の指定した弁護士または弁護士会にその旨を通知しなければならないとされております。

 どのような場合に直ちに通知しなかったと言えるかについては、個々具体的な事情に即して判断すべき事項であることから、一般的にお答えすることは困難だと思われます。

河村(た)委員 例えば今の場合、これは十一分二十秒たったところで、この被逮捕者の方が、「今これ当番弁護士に連絡しちゃだめなんですか?」というのに対して、警察官の方が「調べ終わってからや。あわてんでええがな。何もそんな。警察逮捕したら四十八時間も時間あるんやから、まあまちーな。」「あ、そうですか。」というやりとりがあるんですけれども、これはどうでしょうか。これは明らかに、弁護人選任権というんですか、これを侵害しておると思うんですけれども、どうですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 弁護人選任につきましては、今のお話のように、法に基づきまして、これは重要な権利でございますので、それを尊重した対応をすべきであります。

 したがって、その申し出を受けました、この場合は警察官でございますけれども、直ちに被疑者の指定した弁護士または弁護士会に選任申し出があったことを通知するということになります。

 ただ、逮捕を行いますと、これに伴いましてさまざまな手続が続きます。弁解録取をやりましたり、あるいは必要なものを差し押さえたりいたします。あるいは取り調べをいたします。そういうことでございますので、まず弁解録取など手続をして、その中で直ちにその手続をする、こういうことでございます。

河村(た)委員 ここらはやりとりしておってもしようがないですから、ぜひ、本当に皆さんに聞いていただいて、警察は警察の言い分でこのテープに即して言ってもらわないかぬです。一方的に悪いと言っておってもいかぬので、お願いしたいんだけれども。

 もう一つ、九分のところにも出てきますけれども、この被逮捕者の方が「これ、取り調べですか?ちょ、ちょっと待って下さい。僕ね、当番弁護士呼びます」、これに警察官の方が「それはあとで……」、こういうふうに答えられておるということでございまして、六法もどうも見せてくれなかったようですけれども。そういう状況においてつくられた調書ということでございますので、これは、ぜひ一遍呼んでもらわぬとわからぬところでございます。

 それから、やはり手錠のところですね。手錠のところは、先ほど言いましたけれども、これでも当然なんですか、彼に手錠をかけてしまうのは。こういうことはよくあるんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今回のものが当然であるかどうかということでございますが、これは、兵庫県警からの報告では、先ほど申し上げましたように、その必要があったのでそれを使ったということでございます。

 それから、よくあるかということでございますが、いろいろなケースがありますが、一般に、街頭で被疑者を捕捉する場合には手錠を使うことは多いことではございます。

河村(た)委員 しかし、本当に、彼はそのままパトカーに乗せておるわけでしょう。その前とか、抵抗か何かしたんですか。もっと重い罪、殺人罪とかそういう場合は、これは抽象的に、逃げた方の利益が大きいかもわかりませんけれども、彼は道路交通法の通行区分違反で、本人も認めておるのに、これは逃げるんですか。手錠をかけるほどの、そういう逃走の危険性があるんですか。どう思いますか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 手錠を使ったことにつきましては、先ほど申し上げましたように、兵庫県警から、これはその必要があって手錠を使ったということで報告を受けております。

河村(た)委員 必要があって必要があってと言いますけれども、この犯罪捜査規範は間違いないですね、これはおたくのものですから、何遍も言いますけれども。

 二重に確認しておきますが、こんなこと当たり前ですけれども、一つは、犯罪捜査規範の二百十九条ですね、交通法令違反の事件の捜査を行うに当たっては云々で、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない、こういう規定があることは事実ですね。二百十九条にこういう規定があるんです。

 それからもう一つ、百二十七条に、先ほど言いましたけれども、たとえ被疑者が逃亡し、自殺し、暴行する等のおそれがある場合においても、他にこれを防止する適当な方法があればこれによるべきであって、手錠等の使用は必要最小限度にとどめなければならないことは言うまでもない。これは警察庁の本ですよ。間違いないですね。これはほかに、これしか、手錠をかけるよりなかったんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 これは警察活動すべてにわたることでございますが、必要な実力行使というのは必要最小限でやるべきでありまして、そのように、この条文もそれを映したものでございまして、その解説もその考え方を示しております。

河村(た)委員 承服できるわけないじゃないですか、こんなもの。むちゃくちゃですよ、こんなことをやられたら。

 もう一回ちょっと、必要だと言いましたけれども、この犯罪捜査規範に照らして、逮捕を行わないようにしなければならないのに、なぜ逮捕したか。今言われたことでもいいですよ。それから後の、手錠をかけたところ、ちゃんと文書にして提出してください、きちっと説明して。

縄田政府参考人 手錠及び捕縄の使用につきましての一般的なお尋ねでございますので、お答え申し上げます。

 今、当庁のいろいろ物の考え方、委員の方からもお話がございました。交通局長からも答弁がございましたけれども、あくまでも、警察の権限行使につきましては、常に最小限でやっていくというのが原則だというのが基本原則であります。捜査につきましても、基本的には任意捜査というのが基本原則、そういう原則になっております。

 そういったところから、必要に応じて、逮捕するものは逮捕するということでございますが、今お伺いしておりましたところ、通行区分違反ということで、あれはたしか三月以下で罰金もついておる犯罪行為であります。これにつきまして、氏名をはっきり名乗らずに現場から立ち去ろうとした場合というのは、これは現行犯でありますので、これにつきまして警察官がその場で逮捕行為をするということは、これは通常のことだろうと思います。そのまま逃走させるということになりますと、これは警察官としての責務を全うしていないということだろうと私どもは考えています。(河村(た)委員「氏名、名乗っとるよ」と呼ぶ)

 その氏名につきまして、確認できないということであります。本人が免許証を持っておるということで、それを提示されれば十分私どもの目的は達せられるにもかかわらず、長時間説得した中でのことでありますので、私どもといたしましては、逮捕あるいは手錠をかけるということにつきまして、これは現場の、その場の状況判断があろうかと思いますけれども、適切であろうと考えております。

河村(た)委員 もう最後にしますが、承服できないということと、それから、もう一つ尋ねているので、これは一遍、このところで携帯電話なんかで連絡をとったりしてやってきたと思うんですよね。その中でどうやって署長にその報告が上がっていて、決裁といいますか、どう決裁されて、それが本部長に行って、警察庁、どう言ったか知りませんけれども、その対応をきちっと報告してほしいんですけどね。

矢代政府参考人 お答えいたします。

 本件事案につきましては、現行犯逮捕がなされた後、所要の手続がなされ、この手続は、先ほど申し上げましたような逮捕に伴う一連の手続でございますが、そして、警察署長の指揮によりまして、同日、被疑者の釈放がなされたということでございます。

 なお、翌日付で、警察本部に対して本件報告がなされたということでございます。

河村(た)委員 そこを、所要の手続を教えてくれということと、この方は不起訴になって、罰金の前の、反則金まで払わぬでもよくなっているんですよ。そうですよね。そういう方に手錠をかけたということですよ。

 だから、とにかく手続をしっかり教えてください。それだけ答弁してもらって、終わりでいいです。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 本件は現行犯逮捕でございます。現行犯逮捕いたしますと、これをまず引致いたします。それでその後、まず弁解の機会を与える必要がございますので、弁解録取の手続をとります。(河村(た)委員「交通課長からどうしたとか、そういう話です。そんな法律上の手続じゃなくて、実際の動き、後で報告してくれていいです」と呼ぶ)はい。

 この事案につきましては、これは当時の警察署内の体制の中で行っておりますので、その中での指揮、捜査を指揮する者がこれを指揮して、所要の手続を進めたということになります。

河村(た)委員 では、きちんと報告してください。

 終わります。

石原委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 今の河村委員の事柄とはまた別なんですが、間もなく、六月から駐車違反が民間委託される、こういうことで、この民間の駐車監視員はみなし公務員ということでございます。新聞などにも出ていますけれども、これまでと違って、デジカメで撮影、いや、五分だった、でもこれは違反は違反、こういう形で厳しく運用されるというふうに言われています。

 例えば宅配便の業界など、困惑して、半径四百メートルぐらいのところにステーションを置いて、そこから台車とかリヤカーとか、こういうことで対応しようとしている。

 私は思いますけれども、例えば東京の町中に何々運輸とか何々急便というようなリヤカーがあちこちうごめく、こういうことを想定してこの改正道交法というのをそもそも立法したのかどうか。宅配の時間であるとか、あるいは一般的な経済活動、商店街の荷おろしだとかいうことは当然考慮されていいと思うんですが、簡単に趣旨を答弁してください。

矢代政府参考人 駐車に関する新しい制度でございますが、違法駐車が問題となっている地域を中心に、駐車秩序が改善され、自動車交通の円滑化が図られるようにこの制度を導入しているわけでございます。

 その際、取り締まりの前提となる駐車禁止規制でございますが、これにつきましては、この二年ほどをかけまして、各都道府県警察におきまして、状況に応じ駐車規制の解除や緩和を行うなど、必要な見直しを行いますとともに、重点的な取り締まりを行う場所、時間帯等についても検討を加えまして、取り締まり活動ガイドラインを策定し、これをあらかじめ公表いたしまして、これに基づいて活動を行うというふうにいたしております。

保坂(展)委員 何かちょっとかみ合わないんですけれども、先ほど河村委員の話も、歩道を走っていたということで道交法違反だったということですが、これはどうなんですか。リヤカーあるいは台車、こういうもので、例えば電動自転車つきリヤカー、こういうものも検討されているようなんですね。これはまさか駐車違反にはならないですね。これは厳密に答弁してください。電動自転車つきリヤカーをマンションの前に置いて宅配している間に、まさかそれをデジカメで撮られるということはないですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、駐車のうち放置駐車につきましてこういう新しい制度を入れたわけですが、その際に、これは原動機付自転車以上の車両を対象としておりまして、軽車両はその対象といたしておりません。

保坂(展)委員 いや、モーターがついている電動自転車というのがありますよね、電動自転車。自転車だけれども、いわゆる電動で動くものですね。これを宅配便業者は、車道から歩道を経てマンションのアプローチにとめるということはあり得るじゃないですか。こういうことが、例えば、歩道にあった場合、あるいは車道にあった場合に、それが駐車違反になるということはありませんねと聞いているんですよ。それだけ答えてください。ないならないというふうに。それも駐車違反になるんだったら、もうやぶ蛇じゃないですか。

矢代政府参考人 失礼しました。今、車両の使用者の責任のところで、私、お答え申し上げましたが、今の電動自転車、多分電動機で駆動を与えるような自転車だと思いますが、これは自転車で、軽車両でございます。そこが駐車禁止規制の場所であれば駐車違反が成立です。駐車違反になります。(保坂(展)委員「駐車違反になるの」と呼ぶ)はい。

保坂(展)委員 これは聞いておいてよかったですね。それでは、四百メートル範囲の拠点をつくって、電動自転車つきリヤカー隊を出しても、またそれはぱちっと撮られれば、一瞬にして違反。そんなことをやっても意味ないということ、そういうふうになりますね。

矢代政府参考人 説明が不十分でございましたが、放置駐車がございましたときに、その車両の使用者の責任を問うために事実の確認をするわけですが、そのためにデジカメを使います。この場合、そのような事実確認の対象には軽車両はなっておりません。

 ただ、駐車違反、これは放置駐車も含みますが、駐車違反は、これは運転者の行為として道路交通法違反となります。つまり、そういう意味で、駐車違反は、軽車両であっても、その場所が駐車禁止規制の場所であれば道路交通法違反は成立するということでございます。ただ、これを実際にその場で取り締まるかどうかということは、これは別の問題でございます。

保坂(展)委員 これは、宅配便の車などが、例えば五分、あるいはマンションなら七、八分かかるかもしれない、そういうもので、カメラで撮られるからといってリヤカーだというようなこと自体が、やはり潤滑な経済活動を損なうということを強く申し上げておいて、厳密に言えば、では、台車はどこを走ればいいんだという話になりますよね。台車は、車道を走るのか、歩道を走るのか、あるいは今の自転車はどちらを走るのか、そういうことも含めて大変な混乱を招きかねないということで、しっかりとそこは整理をしていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 駐車違反、これは取り締まるのが目的ではありませんで、駐車秩序を回復するのが目的でございますので、それに沿いまして、それぞれの交通モード、それから現場の交通、駐車違反の状況などを踏まえまして、適切に対応するように指導してまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 次に、法案の多くは細川先生がやられたんですが、何点か、ちょっと伺っていきたいと思います。

 この駐車監視員もみなし公務員ですから、公務員というと公務執行妨害、例えばデジカメを阻止したり、そういうことになると公務執行妨害になるんでしょうけれども、なぜ、公務執行妨害、これまでは懲役、禁錮の自由刑のみだったのか、そして今回五十万円以下にしたのはなぜだったかという、基本的な質問ですが、刑事局長。

大林政府参考人 まず、公務執行妨害罪でございますけれども、暴行または脅迫により公務員による円滑な公務を阻害する犯罪であり、その影響が我が国社会に広く及び得ることや、その保護法益である公務の重要性にかんがみ、一般に違法性が高いものと位置づけられ、基本的には自由刑で対応するのが相当であると考えられていたということではないかと思います。

 それから、今回五十万円と罰金の上限を定めたことでございますが、公務執行妨害事案や職務強要事案のうち、今回新設することとしている罰金刑の対象として想定しているのは、起訴すべきか否かの判断に困難を伴う比較的軽い類型であることや、公務執行妨害罪等の保護法益の重要性等にかんがみれば、これらの罪については基本的に自由刑で対応すべきであって、罰金刑による対応は一定の範囲に限定されるべきであると考えております。

 他方、現行法上、法定刑を三年以下の懲役または禁錮とし、かつ選択刑として罰金が定められている罪の中では、五十万円以下の罰金としている罪が最も多く、比較的類似している業務妨害罪の法定刑も三年以下の懲役または五十万円以下の罰金とされております。

 このようなことを踏まえ、公務執行妨害罪等で新設する罰金刑の上限については、業務妨害罪のそれとあえて異ならせる必要はなく、五十万円とするのが相当であると考えたものでございます。

保坂(展)委員 もう一点だけ。略式命令の限度額の引き上げがなされておりますけれども、百万円を超える罰金刑を科するのが相当と考えられるのに、略式命令の手続で処理するためには百万円以下の求刑になってしまうというようなことは考えられるんじゃないか。もう一点、被害者が略式命令ではなく公開の法廷を希望したときにどうなるのか、この点についてお願いします。

大林政府参考人 まず、百万円を超えるような犯罪、罰金刑を科すべき事案について、百万円以下の罰金刑で略式手続になるのではないかということでございますが、検察官は、個々の事案に即して求刑判断を行うとともに、その際、罰金または科料が相当と判断した場合に、手続として略式命令の要件を満たすか否か等の判断を行っておりまして、略式命令の上限を超える罰金を科すべき事案について略式命令の請求をすることはないものと承知しておりまして、今後もこの点、何らの変更はないと考えております。

 次に、略式命令の問題で、被害者、その遺族の御意向の問題でございますが、略式手続については、個々の事案に即して検察官がこの手続を利用することが相当であると判断した場合に行われることになっておりまして、その判断において、被害者等の心情についても考慮がなされるものと承知しております。そして、検察官としては、被害者等が正式裁判による処理を求めてきた場合には、被害者等の心情を十分伺うとともに、処分の内容や理由を説明するなど、被害者等の心情にも十分に配慮した対応に努めるものと考えております。

保坂(展)委員 もう一点だけ。罰金刑の上限が引き上げられることでなかなかお金が集まらない、こういうことが考え得ると思います。しかし、払う意思はある、払いますといったときに、金額が足らなかったということで、例えば延納とか分納ということが認められるのかどうかという点。例えば、具体的に言うと、五十万の罰金刑で二十五万持ってきました、あとは半年後のボーナスで何とかしますというようなことがあり得るのかどうか、それについて。

大林政府参考人 まず、延納、分納について制度として認めるべきではないかという御質問だろうと思います。

 罰金等は、裁判所に言い渡される刑罰である以上、本来的には裁判に従って直ちに一括してこれを納付すべきであり、現行法上、検察官の裁量により延納、分納を認めることは可能と解されるものの、延納、分納の申し立ての権利として認めることは法制上問題があると考えております。

 その一方で、御指摘が、延納、分納の申し立てを権利として認めない形で規定すべきであるという御趣旨であれば、現在でも検察官の裁量によって延納、分納が許されておりまして、わざわざこれを法律上規定する実益に乏しく、かえって、規定を新設することにより罰金刑の刑罰としての感銘力を阻害することになりかねないというふうに考えております。

 今おっしゃられる、御本人が本当に払う気がある、それから、何年後とか言われても困るんですけれども、それが例えば、比較的近い期間においてお金が入る見込みがある、それまで待ってくれないかということについては、それは柔軟に対応するもの、こういうふうに考えております。

保坂(展)委員 わかりました。

 それでは、ここで、この法案について以外に、これはもう、ここの委員会の議論は我々もっと続けたいと思いながら通ってしまった法案なんですが、その際に河野副大臣と、レガシーシステムの見直しについて、こういうことで議論をさせていただきました。社会保険庁のオンラインシステムは一兆円を見込んでいるという規模ではありませんけれども、入管のレガシー、日立の設計と運営ということですけれども、刷新可能性調査がなされたということでございます。この調査を引き受けられた会社はどちらの会社かという非常に簡単な質問で恐縮ですが、どちらでありましょうか。

河野副大臣 株式会社アクセンチュアと承知しております。

保坂(展)委員 これは、入管の刷新可能性調査報告書ということが法務省のホームページでも明らかになっていると思います。明らかになって公開されているわけですが、また、現在、四月末に提案される最適化計画というシステム企画、これもアクセンチュアが受けて作成中で、四月中ぐらいに内容が固まってくる、こういうふうに聞いておりますけれども、これは何を頼んでいらっしゃるのか、その四月中にまとまるという中身は、一体どういう中身なのか。

河野副大臣 出入国管理業務の業務・システム最適化計画というものを策定することになってございます。

 このポイントは、今の現行のレガシーシステムと言われているシステムから次世代のオープンシステムへ刷新をする、そのために必要となる共通基盤はどういうものであるのかということを考える、あるいは情報システム管理体制の強化ということを考えたいと思っております。

 それからもう一つの柱は、テロ、犯罪、不法滞在を防止するためにバイオを使ったテロ対策関係のシステムを入れることになっておりますが、その関係についても触れてもらうことになっております。

 それから、電子申請でございますが、在留許可の諸手続を電子化、あるいはインターネットを活用した情報提供機能の充実、あるいはコールセンターの設置、そうした対応体制の拡充についてでございます。

 それから四つ目の柱が、情報収集、分析の関係で、情報共有化の促進、インテリジェンス機能の充実強化、位置情報システムを活用した実態調査及び違反調査業務の効率化、こうしたことに関して報告をしたいと思っております。

保坂(展)委員 ありがとうございました。

 こちらの各委員席の方にも資料でお配りをしておりますけれども、「低入札価格調査の概要」、こういうペーパーがございました。これは、我々が先日審議をした自動化ゲートなど、バイオメトリックスを活用したIC旅券に対応するため、また、認証装置及び自動化ゲートシステムに対するソフトウエア開発、実証実験などを行う契約であった。これが何と十万円。これはいかにも安いということで、これは法務省大臣官房会計課入札室において聴取が行われたようであります。これはどうだったのかということをお答えできますか。

河野副大臣 法務省では、会計に関する法令の規定に基づきまして、予定価格が一千万円を超える工事または製造その他の請負契約の競争入札に際して、予定価格より一定割合以上安い、要するに一定割合に満たない低価格な入札が行われた場合には、契約の内容に適合した履行がされないおそれがあるということで、それがしっかりできるかどうかを調査することとしてございます。御指摘の案件はそれに当たったわけでございます。

 法務省が落札者に決定した業者、アクセンチュア株式会社でありますが、生体情報認証技術を利用したシステムの設計等に関するノウハウを有しており、特に国土安全保障の領域において今後他の潜在顧客を開拓するなどのため、経営戦略の一環として本件について戦略的な入札価格をもって応札したものであって、契約の内容に適合した履行が可能であると判断し、落札者と決定いたしました。

保坂(展)委員 十万円というのはちょっと納得できないんですが。

 では、入管局長に伺いますけれども、このアクセンチュアという会社、今、河野副大臣の答弁のように、経験がある、やってきたノウハウの蓄積があるとこれに書いてありますよね。どういう経験がある会社なんですか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 アクセンチュアにつきましては、入管のシステム関係では、レガシーの刷新可能性の調査、先ほど委員からも御指摘ございました、これについてアクセンチュアが担当しております。また、最適化計画……(保坂(展)委員「そうじゃなくて、海外でやったことがあるのでと書いてある」と呼ぶ)

 失礼しました。質問の趣旨をちょっと取り違えました。

 アメリカでUS―VISITという指紋等の採取システムが行われておりますが、これらの管理もこのアクセンチュアがやっておるというふうに承知しております。

保坂(展)委員 入管局長、契約は公正になされなければいけないということをこの通常国会で重ね重ね申し上げてまいりましたけれども、この最適化計画、よろしいですか、まだレポートが出ていない最適化計画、先ほど河野副大臣にお答えいただきましたが、この中に、昨年の六月二十四日に、これは約一億円でしょうか、九千四百九十二万円の契約で締結をしていますね、アクセンチュアと最適化計画。

 それについて内容を先ほど言っていただいたんですが、その中身を見ますと、何をやるかということの中にこうあるんですよ。入国管理局の情報管理室並びに、IC旅券認証システム試行運行及び自動化ゲートシステムの実証実験の委託業者に対して、適宜助言を行うと。助言を行ったら自分になってしまったという話ですよ。これはどういうことですか。実際、この九千万円に含まれていたんじゃないのか、十万円なんという金額で落札するということは。

三浦政府参考人 御質問の趣旨が十分理解できないのであれでございますが、要するに、アクセンチュアは今御指摘の契約でございますと、最適化計画を行うに際して、どのような観点から行ったらよいかということを検討していただいたということでありまして、実際にこれを最適化、実施に当たっては、また別の業者がこれを実施するということになると思います。

保坂(展)委員 河野副大臣に伺いますが、私が言っているのは、先ほど内容を答弁していただいた、昨年六月の最適化計画の中身で、アクセンチュアの方にやらせること、あるいはやることとして、自動化ゲートのシステムなどについて受託業者に対して適宜助言を行うとあるんですよ。それを含めて約一億円の契約が成り立っている。ところが、その数カ月後に十万円でこの契約がなされる。これはどうでしょうか。

河野副大臣 日本のシステムを受注するということは、これからこのシステムが海外に広がるわけでありますから、同じような出入国のバイオを使ったシステムを導入しようという国はたくさんあるわけですから、そういう中で、日本のシステムのプロトタイプの実験をやっていますよというのは多分、営業戦略上、非常に有利になる。そういう判断をされた企業がたくさんあるんだと思うんですね。といいますのは、アクセンチュアが確かに最低価格でございますが、その次の価格も十万の単位で入札をされていたというふうに私は承知をしております。

 つまり、このプロトタイプの業務を落札して日本政府の実証実験に参加していますよということは、これからやろうとしている東南アジア各国の政府に対してその企業が信頼をかち得るだろう、いわばそういうための投資をしようと思っていた企業が何社かあってもおかしくはないと思います。

保坂(展)委員 入管局長に伺いますが、そうすると、レガシーシステムの改変のためにこういった刷新可能性調査報告書を出した後、最適化計画を出し、そしてまた自動化ゲートやバイオの認証の実験を十万円でやって、着々と実務的な準備をアクセンチュアは進めているんですが、この提案は基本的に了としてこちらの方に移行しようとしているんですか。そこだけ答えてください。

三浦政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、現行の出入国管理システムの開発、運用に直接関与していない第三者にシステムの刷新可能性の調査を委託したわけでございます。新たなシステムへの移行を行った場合に、安全性ですとか信頼性を損なうことなく、効率性、経済性及び利便性を向上させて、かつトータルコストを下げるということが期待されるかどうかということを検討したわけでございます。

 その結果、出入国管理業務につきまして、今後さらに量的な増加ですとか質的な複雑化、多様化が見込まれる中で、現行システムを維持していくことは費用対効果やパフォーマンスの点で問題がある、競争原理が十分に機能するオープン系のシステムを新たに構築してコスト削減に努めるとともに、戦略的IT投資によってバイオメトリックスなどの最新技術を取り入れて、テロリストや犯罪者の入国を防止するための厳格な審査と外国人旅行者の円滑な受け入れという多角的な政策目的の実現に寄与するためのシステム構築を推奨する、こういう報告がなされたわけでございます。

 これに基づきまして、実際にこれを実施するに当たりましては、また全く別の観点から別の業者等に依頼をするということになるかと思います。この延長線上にあるというわけではございません。実際のバイオメトリックスの関係については、またこれと別建ての話でございます。

保坂(展)委員 入管局長に伺いますが、先ほどちょっと、アクセンチュアの方が十万円でこれを受けられたということは、海外における経験というのは、US―VISIT、アメリカにおける入管システム、これは一兆円を上回る額で受注をされているようですが、この経験があったからだ、こういうふうに聞きました。

 それでは、US―VISITと今準備されようとしている日本版のシステムの同一点と相違点をお答えいただきたいと思います。

三浦政府参考人 我が国でのシステムにつきましては、今、国会の御審議をいただいている最中でございますので、最終的にこれが確定した上で詳細を詰めることになるわけでございますので、細かい点について比較というのはなかなか難しいわけでございますが、今我々が想定している範囲内で申し上げます。

 アメリカのUS―VISITと、我々の想定している我が国の将来のシステムの共通点として考えられるものは、空港や海港の上陸審査において外国人の入国者から指紋と顔の電子情報、個人識別情報の提供を受ける、これを、入管当局が保管しております、または関係機関から提供のありましたいわゆる要注意人物のデータと照合をしまして、その結果によって入国させるかどうかということを判断する。こういう点におきましては米国のUS―VISITシステムとほぼ同じでございます。

 他方、米国のUS―VISITシステムにおきましては、上陸審査段階のみならず、その前段階のいわゆる査証の審査の際に申請者から指紋情報を取得しまして、これを本国に送信して要注意人物のリストと照合しているというふうに承知しております。この点につきましては、我が国では今のところ想定はしておりません。

保坂(展)委員 十万円での低価格の調査もされたということ、そしてアメリカ大使館のホームページを見ると、こういった生体情報の交換等を外交努力等によって行っていきたいと書いてあります。この点については、引き続き、重大な問題ですので問いただしていきたいと思います。

 時間になったので、終わります。

石原委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石原委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石原委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、棚橋泰文君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び国民新党・日本・無所属の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。細川律夫君。

細川委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 罰金刑が新設された窃盗罪及び公務執行妨害罪の適用に当たっては、適切な科刑の実現という趣旨を踏まえ、その適用範囲が不当に拡大することのないようにすること。

 二 ひき逃げ事件の現状にかんがみ、危険運転致死傷罪、業務上過失致死傷罪、救護義務違反罪等の運用及び罰則の在り方について、検討を行うこと。

 三 労役場留置が自由を拘束する制度であることにかんがみ、より一層慎重かつ公平な取扱いがなされるよう、その制度の在り方について、検討を行うこと。

 四 罰金刑の新設等により、労役場留置者が増加し刑事施設への過剰収容に拍車がかかる可能性があることにかんがみ、計画的に刑務所及び拘置所の収容能力の増強に努めること。

以上であります。

石原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石原委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。杉浦法務大臣。

杉浦国務大臣 ただいま可決されました刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

石原委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

石原委員長 次に、第百六十三回国会、内閣提出、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。(発言する者、離席する者多し)

 趣旨の説明を聴取いたします。杉浦法務大臣。

    ―――――――――――――

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

杉浦国務大臣 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年のグローバリゼーションの進展に伴い、犯罪行為が容易に国境を越えるようになり、犯罪組織による国際的な犯罪が頻発しております。また、厳しい経済情勢の中で、暴力団等の反社会的勢力が組織的に関与する悪質かつ巧妙な強制執行妨害事犯が後を絶たないなどの状況にあります。さらに、近年、コンピューターが広く社会に普及し、世界的な規模のコンピューターネットワークが形成されておりますが、このような情報処理の高度化に伴い、ハイテク犯罪が多発しております。

 この法律案は、このような近年における犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化の状況にかんがみ、刑法、刑事訴訟法、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、平成十五年五月に国会において承認された国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴い必要となる罰則の新設等、所要の法整備を行うものであります。

 すなわち、条約の規定する重大な犯罪に当たる行為であって、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの等の遂行を共謀する行為を処罰する組織的な犯罪の共謀の罪及び、重大な犯罪等に係る刑事事件に関し、虚偽の証言、証拠の隠滅、偽変造等をすることの報酬として利益を供与する行為を処罰する証人等買収の罪を新設するほか、いわゆる前提犯罪の拡大など犯罪収益規制関係規定の整備や、贈賄罪につき国民の国外犯を処罰するなど国外犯処罰規定の整備を行うこととしております。

 第二は、強制執行を妨害する行為等についての処罰規定を整備するものであります。

 すなわち、現行刑法の関係罰則では処罰が困難な、封印等が不法に取り除かれた後における目的財産に対する妨害行為、目的財産の現状の改変等による妨害行為、執行官など関係者に対して行われる妨害行為または競売開始決定前に行われる競売手続の公正を害するような行為等の強制執行を妨害する行為等を新たに処罰の対象とし、関係罰則を含め、その法定刑を引き上げるとともに、報酬目的または組織的な犯罪として行われる場合に刑を加重することとしております。

 第三は、ハイテク犯罪に対処するとともに、平成十六年四月に国会において承認された欧州評議会のサイバー犯罪に関する条約を締結するため、罰則及び手続法の整備を行うものであります。

 すなわち、罰則の整備としては、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、不正な指令を与える電磁的記録等を作成等する行為を処罰する不正指令電磁的記録作成等の罪を新設するとともに、わいせつ物頒布等の罪の構成要件の拡充等を行うこととしております。

 また、手続法の整備としては、電磁的記録の記録媒体の差し押さえにかえて電磁的記録を他の記録媒体に複写等し、これを差し押さえることができるものとすること、電子計算機の差し押さえに当たり、電気通信回線で接続している記録媒体から電磁的記録を複写することができるものとすること、電磁的記録の記録媒体への記録を命じ、当該記録媒体を差し押さえる記録命令つき差し押さえの処分を新設することなどのほか、通信履歴の電磁的記録の保全要請の制度や、電磁的記録の没収に関する規定等の整備を行うこととしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。(拍手、発言する者あり)

石原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。(発言する者あり)

    ―――――――――――――

石原委員長 この際、本案に対し、早川忠孝君外二名から、自由民主党及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。早川忠孝君。

    ―――――――――――――

 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

早川委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提案の趣旨及び内容を御説明いたします。

 本法律案は、第百六十三回国会から継続審査となっている法律案でありますが、これまでの委員会の審査におきまして、一般の会社や市民団体等の活動も共謀罪の対象となってしまうのではないかとの懸念、犯罪の共謀をしただけで処罰することは、人の内心を処罰することとなってしまうのではないかとの懸念などが示されました。

 このような委員会の議論を踏まえ、これらの懸念を払拭するため、本修正案を提出した次第であります。

 次に、その内容について申し上げます。

 第一は、組織的な犯罪の共謀罪の成立要件を明確かつ限定的なものとすることについてであります。

 すなわち、組織的な犯罪の共謀罪が成立するためには、共謀に係る犯罪が団体の活動として行われるものであることが必要でありますが、一般の会社や市民団体等の正当な目的を有する団体の活動についてはおよそこの罪の対象にならず、犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものである場合に限って対象となることを条文上明らかにするため、政府原案の「団体の活動として、」という要件に言う「団体」を、「その共同の目的が重大な犯罪又は別表第一に掲げる犯罪を実行することにある団体」に限定するものであります。

 第二は、組織的な犯罪の共謀罪に処罰条件を付加することについてであります。

 すなわち、組織的な犯罪の共謀罪については、共謀をしただけの段階にとどまる限りその処罰を差し控え、さらに進んで実行に向けた段階に至ったことのあらわれである外部的な行為が行われた場合に初めて処罰の対象とすることにより、その処罰範囲を明確かつ限定的なものにするため、政府原案に、処罰条件として、「その共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合」という要件を付加するものであります。

 これらのほか、組織的な犯罪の共謀罪や証人等買収罪の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由を侵したり、弁護人としての正当な活動を制限するようなことがあってはならないことなど、運用上留意すべき事項を定めることとしております。

 以上が、修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、十分な御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手、発言する者あり)

石原委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十九分散会


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