2年連続で開幕投手を務めた藤浪は7回6安打3失点と踏ん張ったが、〝潮目〟が変わり始めたのは、8-3の八回だ。ベンチは昨季19試合に登板した斎藤を送り出したものの、1死から村上に四球を出し、続くサンタナに中越え2ランを被弾。勝利の方程式入りを期待する若虎を起用したが裏切られた。
その後2死一塁でスイッチした岩崎も燕打線の勢いを止められない。内山壮と塩見の適時打で1点差に詰め寄られた。シーズン中の一試合以上の重みを持つ開幕戦。勝利へ万全を期すため、5点リードでも八回頭から岩崎を投入する選択肢もあったはずだが、指揮官が下した決断は試合の結果を大きく左右するものだった。
トドメはケラーの誤算だ。1点リードの九回に登板。来日初セーブの期待もかかったが、先頭の山田に124キロのカーブを左翼席に運ばれて同点とされると、無死一塁からサンタナに再び125キロのカーブをバックスクリーン左にたたき込まれ、逆転を許してしまった。開幕直前に連投テストを行うなど、急ピッチで調整してきた新守護神だったが、指揮官は「結果がよくないときにそういうのって言い訳にもなるし。ケラーも攻めていく投球をしてもらうしかない。状況は関係ないよね」と厳しかった。
昨季はゲーム差なしの2位に終わり、誰よりも、どのチームよりも一試合の重みを知っていたのが矢野阪神のはず。味わった悔しさを〝凝縮〟したかのような黒星だ。開幕戦での最大7点差の逆転負けは、40年ぶり2度目でプロ野球史上ワーストタイという負の歴史に名を刻んでしまった。
「パワーというか、この雰囲気というのを久しぶりに味わった。熱気はすごく伝わってきた。だからこそいいスタートを切りたかったけど、切り替えるしかない」
入場制限がなくなり、3万5510人が詰めかけた一戦を痛すぎる形で落とした。矢野虎がスタートから暗雲に包まれた。(新里公章)
★データBOX
◉…阪神が最大7点リードを逆転されて開幕戦黒星。開幕戦での7点差逆転負けは最大差で、西武が1982年4月3日の日本ハム戦(四回表終了7-0→最終7-10)で喫して以来40年ぶり2度目
◉…阪神の開幕戦2桁失点は2014年3月28日の巨人戦(●4-12、東京ドーム)以来