北方領土の色丹島にロシアが経済特区を指定 共同経済活動に影響か

 【モスクワ=黒川信雄】ロシアのメドベージェフ首相は23日、訪問先の露極東ユジノサハリンスクで、北方領土に経済特区を設置する文書に署名した。イタル・タス通信が伝えた。露政府によると、特区は色丹島の斜古丹(ロシア名・マロクリリスコエ)に設置される。露側の特区設置は、日露が交渉中の北方四島での共同経済活動と矛盾しかねず、日本の反発は必至だ。

 経済特区はロシアが極東などで進める経済振興策で、税制優遇や行政手続きの簡素化などを通じ、企業進出を促進する制度。極東の経済情勢に詳しい日本の関係筋は「日本側の対応を見定めつつ、北方領土の他の地域にも設置する可能性がある」と指摘した。

 昨年12月の日露首脳会談での合意を受け、両国は現在、双方の法的立場を害さない「特別な制度」の下での北方領土での共同経済活動の実現に向け交渉を進めている。ロシアの法律に基づく経済特区は、共同経済活動の枠組みと矛盾しかねず、ロシアによる北方領土への管轄権を認めることにもつながりかねない。色丹島は、1956年の日ソ共同宣言で平和条約締結後に日本側に引き渡すとされた島で、今回の措置は日本の領土返還交渉をさらに困難にさせる可能性もある。

 7月にトルトネフ露副首相が北方領土の特区指定を表明した際に、菅義偉官房長官は「わが国の法的立場を害さないことが大前提であることは変わりはない」と述べ、強い警戒感を示していた。

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