海峡新時代

新幹線「北の大地」へ

 新幹線、北の大地へ-。北海道と本州を結ぶ北海道新幹線が26日開業し、東北の新幹線各駅で始発の列車の出発を前に式典が開かれた。新函館北斗駅までは最短で仙台から2時間半、新青森から1時間余りで結ばれることになり、東北と道南地域の交流の活発化に期待が集まっている。

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 ■奥津軽いまべつ駅 「産業・地域活性化の起爆剤期待」

 本州側で唯一の新駅となった「奥津軽いまべつ駅」(青森県今別町)では、新幹線を一目見ようと、午前5時ごろから町民らが駅に詰め掛け、開業による町の活性化への期待に胸を膨らませた。

 同駅では午前6時から関係者約60人が出席して開業式典が行われ、JR北海道の平川敏彦取締役が「先人の苦労があって新幹線が開通したことを忘れてはならない。安全・安定的な運行に努め、多くの経済効果が生まれることを期待する」とあいさつ。

 阿部義治町長も「開業を一過性のものとせず、新たな人の流れを創生し、新幹線を地域活性化の契機にしたい」と期待を寄せた。この後、関係者がテープカットし、くす玉を割って整備計画決定から43年での開業を祝った。

 開業を祝うかのような好天に恵まれる中、新青森駅午前6時32分発新函館北斗駅行きの下り一番列車「はやて91号」が12番ホームに入ると、集まった人たちが小旗を振って歓迎。あちこちから感嘆の声が上がった。石沢透駅長が出発の合図をした後、定刻通り同6時48分に発車、初めて新幹線が津軽海峡を渡った。

 学生の目線から同町の活性化に取り組んでいる青森公立大のサークル「A-project」のメンバーで3年の依田啓夢(ひろむ)さん(21)は、新青森駅発の一番列車で奥津軽いまべつ駅に降り立った。「開業がゴールではなく、町民とともに町をPRしていきたい」と話した。同町の教諭、松浦清晴さん(54)は「感動した。新幹線が産業、地域活性化の起爆剤になることを期待したい」と笑顔を見せた。

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 ■新青森駅 「新しい時代ここから」

 新青森駅で開かれた一番列車の出発式で三村申吾青森県知事は「新しい日本の北の時代をここから、今日からスタートさせていこう」とあいさつした。

 定刻の午前6時32分、開業に合わせて導入したねぶた囃子の発車メロディーが流れ、新青森駅長が出発を合図すると、列車はゆっくりと走りだした。

 一番列車に乗るため、新潟から車で6時間かけて青森まで移動した朝倉政樹さん(25)は「この日を心待ちにしていた。車内で車掌がどんなアナウンスをするのか楽しみ」とうれしそうに話した。

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 ■元今別町長「感動」「多くの観光客を」

 平成元年から3期、今別町長を務めた熊谷範一さん(82)も開業を感慨深げに見守った。熊谷さんは町長時代、同町に新駅を誘致するため国や県など関係機関との折衝などに尽力。「いろいろな苦労を思い出す。新幹線が今別に来たのを見て感動した。これを機に津軽半島のPRに努めてほしい」と話した。

 奥津軽いまべつ駅に隣接する道の駅「いまべつ」の山田基駅長(55)は「一人でも多くの観光客が来てもらえるようイベントやさまざまな仕掛けを考えたい」と語った。

 この日は、町の宿泊施設で食事を提供している女性グループ「はまなす会」が、山菜をふんだんに使った郷土料理「あづべ汁」を400食用意し、同駅で振る舞った。会長の沢田ひろ子さん(65)は「食で町の活性化を図りたい」と意気込んだ。

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