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観光船「はまゆり」、復元ほど遠く【東日本大震災パノラマ】Vol.532

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観光船「はまゆり」、復元ほど遠く【東日本大震災パノラマ】Vol.532

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観光船「はまゆり」、復元ほど遠く【東日本大震災パノラマ】Vol.532

 民宿に乗り上げた観光船。1枚の写真が津波の脅威を雄弁に語った。

 岩手県大槌町赤浜地区にあった民宿「あかぶ」。乗り上げたのは同県釜石市が所有する全長約27メートル、重さ約85トン、定員230人の大型双胴船「はまゆり」だった。震災から2カ月、倒壊の危険から市が解体した。

 町は24年、寄付を募る条例を制定。用途を、鎮魂の森公園の造成▽はまゆり復元▽どちらでもよい-の3つに設定した。

 鎮魂の森造成には大口の寄付金が寄せられ、この7年間で2億3千万円以上が集まった。はまゆり復元には約370万円。必要な4億5千万円にはほど遠く、30年度の寄付は今年2月末で2万円にとどまる。

 復興などを担う町総合政策課担当者は、はまゆりの復元にこだわらず、写真などで伝える方向へシフトする可能性を示唆する。

 復元に向け活動するNPO法人「はまゆり復元保存会」の古舘和子会長は、復元について町の意見が割れ、寄付を募ることにためらいもあったと明かす。はまゆりの未来は見通せないが、「協力してくれた人に恩を返さないと。望みは捨てていない」。

 はまゆりのスクリュー、ハンドルなどは釜石市が保存している。だが、市もその所在をすぐに答えることができない。8年というのは、そんな歳月だ。(文・千葉元、塔野岡剛)
(2011年3月23日-2019年3月6日、植村光貴撮影)

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