施行から75年 憲法改正を問う

河野克俊元統合幕僚長 自衛隊違憲論も合憲論も破綻

河野克俊元防衛省統合幕僚長(田中一世撮影)
河野克俊元防衛省統合幕僚長(田中一世撮影)

--自民党は4項目の改憲案の一つに現行の9条の条文を残し、自衛隊を書き加える案を掲げている

「国防を担う組織に違憲論がある国家は正常ではない。まず第一歩として(他党の賛同を得やすい)自衛隊明記を行い、自衛隊は合憲か違憲かという不毛な議論から卒業することには賛成する。ただし、本来は9条を改正して国防軍の保持を明記し、自衛隊法を廃止して他国のようにネガティブ・リスト(やってはいけない例外を規定)の国防軍法を制定すべきだ」

--共産党は「自衛隊は違憲だが、急迫不正の主権侵害が起きれば活用する」と主張している

「自衛隊は国民に信頼される組織になり、『軍国主義の集団』などと言われた時代の違憲論に国民は賛同しない。そのことに違憲論者は気付いている。だから『自衛隊は解消すべきだが当面は働いてもらう』という矛盾した話になる。違憲論は破綻している」

--一方で政府は、自衛隊は戦力ではなく「自衛のための必要最小限度の実力」なので憲法に反しないと解釈している

「発足当初の自衛隊は規模が小さく、米軍の中古装備を使っていた。戦力に満たないという理屈も通った。今は中国や北朝鮮の脅威に対応すべく防衛力を増強し、最新装備を導入しているのに『戦力に満たない』と言えるのか。合憲論も破綻している」

--国会では9条改正の議論が盛り上がらない

「問題は立憲民主党や共産党ではない。『自衛隊はすでに国民に認められており、苦労して改憲しないでもよいではないか』と考える、分厚い『まあいいんじゃない保守』だ。改憲を党是とする自民党内にそういう人が大勢いるから、議論が進まない。国防組織を中ぶらりんにしたいい加減な憲法を次世代に引き継ぐべきではない」(聞き手 田中一世)

日本国憲法の施行から3日で75年が過ぎた。憲法改正の在り方について、識者や与野党の当事者に聞く。

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