月刊正論2月号

沖縄は日本ではない…に翁長雄志県知事はなぜ抗議しないのか? 八重山日報編集長・仲新城誠

尖閣諸島魚釣島 海上自衛隊哨戒機P3-Cから撮影=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)
尖閣諸島魚釣島 海上自衛隊哨戒機P3-Cから撮影=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)

 ※この記事は、月刊「正論2月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

 報道は客観的な事実を読者に伝えるものであり、それが「国益」にかなっているかどうかを考慮する必要はない、というのも一つの考え方だ。しかし、自国の国益を害するだけでなく、敵対的な他国の国益に一致するような報道に対しては、読者は「この報道は果たしてまともなのか」と身構えてかからなくてはならない。

 2016年11月、日本が進めている「奄美・琉球」(奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島)の世界自然遺産登録に対し、中国が妨害の動きを見せていることが明らかになった。外交ルートで日本政府に懸念を伝え、国連教育科学文化機関(ユネスコ)にも反対の意向を伝えているという。  

 事の発端は石垣市が2013年3月に策定した「海洋基本計画」にある。市の行政区域である尖閣諸島について、世界遺産登録を視野に入れた調査研究を進める方針を明記した。  

 尖閣諸島は貴重な自然の宝庫だ。固有動物としてはセンカクモグラ、センカクサワガニなど、固有植物としてはセンカクツツツジやセンカクアオイなどが知られている。1940年に無人島化して80年近くが経過しており、環境には人の手がほとんど加えられていない。世界自然遺産としての価値を検討する余地は十分にある。  

 世界自然遺産登録の意義はもう一つある。尖閣が日本の領土であると、国際的に公認させる効果だ。副次的な効果だが、日本にとって見逃せないメリットである。石垣市は当然、海洋基本計画の策定時にそのことを意識していた。

 中国は即座に猛反発した。「釣魚島(尖閣の中国名)は中国固有の領土であり、日本が世界遺産登録を申請する権利はない」と訴えたのだ。

 2018年に実現するスケジュールで、日本が国として作業を進めてきた「奄美・琉球」の世界遺産登録について、中国は将来、登録範囲が尖閣諸島に拡大される可能性を警戒。日本が「今回の世界遺産登録に尖閣は含まれない」と再三説明しているにもかかわらず、反対姿勢を崩していないという。  

 さらに沖縄県民を驚かせたのは、中国紙「環球時報」が11月16日に掲載した専門家の論文だった。「琉球は日本固有の領土とは言えない」「琉球は独立国で、中国が長く宗主国だったが、日本に占領された」などと主張。「日本が琉球諸島を自国の領土にする目的で世界遺産登録を利用するなら、戦後の国際秩序への挑戦だ」とまで極言した。石垣市が尖閣の世界遺産登録を目指していることに対する「意趣返し」と見るべきだろう。  

 沖縄県民としては敢然と中国に反論しなくてはならないが、この約3週間前、県紙「琉球新報」は10月29日付で、奇妙な社説を掲載していた。米軍北部訓練場の部分返還をめぐるヘリパッド移設工事で、機動隊員が反対派に「土人」と発言したことを批判する文脈で、こう書いていた。

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