奈良・田原本町の歴史知って 「古事記と太安万侶」出版

 最古の歴史書「古事記」や、古事記の編者である太安万侶(おおのやすまろ)が生まれた田原本町の歴史、文化財などについて解説した「古事記と太安万侶」(吉川弘文館刊、206ページ)が出版された。町記紀・万葉事業実行委員会が監修。特に田原本町の紹介では、太安万侶の出身母体の多(おお)氏や多(おお)神社についても詳しく紹介している。

 町では、古事記編纂(へんさん)1300年紀に合わせて平成24年11月、町出身の和田萃(あつむ)・京都教育大名誉教授(古代史)や、寺川眞知夫・同志社女子大名誉教授(国文学)らによるシンポジウム「やまとのまほろば田原本」を開催。

 本はその内容を収録し、古事記と日本書紀の違いや、歌謡を多く含みながらも天皇統治の神聖性を説く古事記の特色などを解説している。

 また、古代の有力豪族・多氏と、町南部に位置し、古い歴史を持つ多神社についても解説。太安万侶ら多氏が輩出した人物についても紹介しており、太安万侶から数えて51代目が現多神社宮司の多忠記(ただふみ)さん(70)という。

 多さんは「多氏はもともと祭祀(さいし)を担当する氏族だった。神社近くの遺跡からは弥生時代の遺物が出土しており、古い歴史が感じられる。今回、本で取り上げていただき、大変ありがたく思っています」。

 このほか唐古・鍵遺跡や鏡作(かがみつくり)神社などについても紹介。和田名誉教授は「古事記は読みやすく、日本書紀よりも物語性がある。今回の刊行本はそうしたことを説明した案内書であり、町民の方を含め、多くの人に読んでいただきたい」と話している。

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