初めてイノシシ捕獲 糸島半島から30キロ泳ぎ着く? 長崎・壱岐島

 長崎県の離島・壱岐でイノシシが初めて捕らえられた。もともと島に生息していなかったが、4年前に海から上陸するところが目撃されて以来、農作物の被害が相次いでいた。専門家は「対岸の糸島半島などから追い立てられ、海に飛び込んだイノシシが、約30キロ離れた島に泳ぎ着いたのではないか」とみている。(大森貴弘)

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 壱岐市によると、3月21日、島北部の山中で地元猟友会のメンバーが体長1・3メートル、体重90キロの雌を見つけ、駆除した。

 壱岐では平成22年6月、島南部の海岸に上陸するイノシシが初めて目撃された。その後、南部を中心に稲が踏み倒される被害が続出し、足跡も複数の場所で発見された。海岸に漂着した死骸も2頭見つかった。

 イノシシが繁殖すれば、深刻な農作物被害が生じる恐れがある。実際、瀬戸内海でも泳ぐイノシシが目撃されており、たどり着いた離島で繁殖し、農作物を荒らすケースが出ている。

 長崎県や壱岐市は対策協議会を設立し、イノシシの姿を知らない島民向けに、写真入りのポスターで情報提供を呼び掛け、島内に駆除用のわなを設置した。

 今回駆除されたイノシシが、4年前に目撃されたイノシシと同じ個体かは不明だ。

 中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)の仲谷淳上席研究員(58)=動物生態学=によると、イノシシは通常、水に入ることを嫌うが、追い立てられると海を泳いで逃げる場合があるという。

 壱岐の対岸の糸島半島では、有害鳥獣としてイノシシが山間部を追われ、海岸付近に出没しており、そこで犬などから逃れようと海に飛び込んだ可能性がある。壱岐から糸島までは30キロあるが、十分泳げる距離だという。

 では、壱岐のイノシシは絶滅したのか。

 今回捕獲されたイノシシは大型の成獣だが、2、3年以内に出産した様子がないことから、島内に雄はおらず、繁殖していた可能性は小さい。

 仮に繁殖が確認された場合でも、壱岐島の場合は一斉に山狩りを実施すれば、完全な駆除は可能だ。同じ離島の対馬では、江戸時代にイノシシの生息地を少しずつ柵で区切りながら駆除する手法で、いったんイノシシ被害を根絶した。

 ただ、対馬では現在、再びイノシシが増加している。泳ぎ着いたか、人が持ち込んだかはわからない。

 市の担当者は「繁殖している可能性も捨てきれない。今後も駆除活動を続けます」としている。

 仲谷氏は「増えたら大変なことなので、繁殖していないかの確認は慎重を期すべきだ。イノシシは基本的に人を襲わないが、犬には反応する。万一飼い犬の散歩中にイノシシに襲われたら、手綱を放すようにしてほしい」と述べた。

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