銀行員からタレントへ転身 うつだ流、自分らしく生きるコツ

タレント
うつだ あずみ さん
2008年文学部日本語日本文学科卒

ホリプロのタレントさん、と聞くとわれわれ一般人にはもう、別世界の人間に思えてしまう。しかし、深草キャンパス21号館の教室に、ひょいっと現れたうつださんは、バラエティ番組で大騒ぎしている彼女からは想像できない、しっかりとした自然体の女の子だった。もちろん、とっても美人である。

うつだあずみさんは、京都市出身の26歳。現在、毎日放送の情報バラエティ番組「女の子宣言!アゲぽよTV」、KBS京都の情報番組「蛤御門市場」のレポーターをはじめ、様々なTV番組やイベントで活躍中のタレントだ。

このままじゃ、すぐおばあちゃんになっちゃう!

芸能活動を開始したのは3年前。高校や大学在学中から芸能活動を始める人が多いなかで、うつださんは龍谷大学を卒業し、いったん社会人を経験してからのデビューである。しかも、就職先は、人気就職先ランキングでも常に上位に入る地元の銀行。しかし、せっかく入った銀行を、わずか4カ月で辞めてしまう。

「やさしい先輩に囲まれ、夕方には帰宅できる、申し分ない職場でした。でも、このままでは、すぐにお母さんになって、おばあちゃんになって、あっという間に私の人生は過ぎてしまう!そんな違和感を感じたんです」

きっと、就職したばかりの多くの新社会人は、入社半年くらいで理想と現実のギャップに気がつくだろう。それでもほとんどの人は、なんだかんだと折り合いをつけ前に進む。しかし、うつださんは違った。迷うことなく退職願を提出し、それまでの世界にきっぱりと別れを告げた。もちろん家族は猛反対。しかし、決めたら誰にも止められない性格をよく知っているご両親は、最後は応援してくれたという。

「タレントになるって決めたものの、自信はなかったです。うまくいく保証なんて全くない世界だし、自分が人と違うタレント性を持っているとも思わなかった。でも、やらないで後悔するよりは、やってみよう。行き詰まったらその時また考えたらいいじゃないか、そこからまた道は開ける!と思って。“思ったことはすぐに行動する”っていうのが私の信念なんです」

オーディションで珍芸を披露

それからは、タレント事務所などを調べ、オーディションを受ける日々。折しも、アイドルグループ全盛期、10代の若手アイドル達が、大量に芸能界に出はじめた頃である。ライバルは、自分より若い子や、子どもの頃から芸能活動をしている子だ。

そんななか、業界大手のホリプロのオーディションを受ける。年齢も規定の上限ギリギリだし、無理じゃないか、と思いながらも、それなら逆に思いきって自分らしいもので勝負しよう、と披露したのは、なんと“ボールまわし”。小学生の頃から9年間続けたバスケットボールを活かした芸だった。大抵オーディションでは歌やダンスをするものだが、この一風変わった芸が、マネージャーの目に留まったというから、芸能界はわからない。うつださんは、真似たり媚びたりすることなく、自分らしさで勝負することの大切さを思い知ったという。めでたく、レッスン生としてホリプロに所属できることになった。

「レッスン生とは、様々なレッスンやオーディションを受け、仕事をとって来れるようになると正規生になれるというもの。決まった仕事もなく、いつ切られるかもわからない。アルバイト禁止なので収入源もない。そんな不安定な状態で、落ち込むこともしょっちゅう。でも、だからこそ、人の何倍も努力しよう、と思いました」

がむしゃらにがんばるうつださんに、チャンスが巡ってきたのは1年後のこと。奈良の平城遷都1300年祭の公式フィナーレソングを歌う4人組のユニット、『ピクシーチックス』のメンバーに選ばれたのだ。人前でパフォーマンスをするのが初めてのうつださんは、不安なあまり泣いてばかりだったというが、当日は1000人もの人と踊って歌い、大成功を収めた。それを機に、所属もレッスン生から正規生となる。

好きなことで悩めるって幸せ

現在はいくつかレギュラー番組を持ちながら、舞台やイベント司会、CM出演など様々な仕事をこなす。メインで出演している前出の「アゲぽよTV」は20人もの“アゲぽよガールズ”達が、様々な企画に翻弄されながら挑戦し、ガールズトークを繰り広げるというもの。歌手・モデル・女優など様々な夢を描く若手タレント達が個性をぶつけ合い、みんなこの番組を機に、それぞれの道を登っていこうと必死だ。そんな番組に出演しながらうつださんは、いつも自分に問いかけるという。『このなかで自分は一番努力できているだろうか?』と。

「その問いにいつも肯定できる自分でいたいんです。みんなも一生懸命やってるから、同じことをしていても意味がない。結果が出るまでは、一秒たりとも油断できない。いつもそんな気持ちで臨んでいます。タレントとしてやっていくのは大変です。いつ番組が終わるかわからない、いつどこで誰が売れるかわからない。そんなプレッシャーがのしかかって来ない日はありません。でもそれ以上に毎日が充実しているし、好きなことができています。好きなことで悩めるってすごく幸せなことだなと思うんですよね」

そんなうつださんの夢は、スポーツ番組のレポーター。父親と弟がサッカーをしていたことから大のサッカー好きで、審判の資格も取得した。いつか試合の中継や選手インタビューをしてみたいという。

「芸能界に飛び込んでわかったのは、本気でやればどんな人でも、ある程度まではいけるんだなということ。その後は努力次第です。だから、本当にやりたいことがある人は、一回はチャレンジしてみてほしいですね」

そうやって自分に言い聞かせてるんですけどね、とうつださんは笑った。可憐な容貌からは想像もつかない芯の強さが彼女の魅力だ。「ふつうの女の子」を脱し、必死に自分の道を歩いていく、その姿は、自然と見る者に勇気をくれる。


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