特集 近年における犯罪情勢の推移と今後の展望

2 平成元年以降の犯罪情勢

(1)街頭犯罪(注1)及び侵入犯罪(注2)の傾向

刑法犯認知件数がピークとなった平成14年頃は、街頭犯罪及び侵入犯罪の認知件数が急激に増加し、国民の不安が高まっていた(注3)ことから、これらの犯罪の発生を防止するための諸対策を強力に推進することにより、治安を回復することが喫緊の課題とされた。

元年から29年にかけての街頭犯罪及び侵入犯罪の認知件数の推移は、図表特-2のとおりである。元年から14年にかけて刑法犯認知件数は約118万件増加したところ、同期間に街頭犯罪の認知件数は約64万件増加しており、刑法犯認知件数の増加に対する寄与率(注4)は54.4%である。また、同期間に侵入犯罪の認知件数は約13万件増加しており、同寄与率は10.7%であることから、街頭犯罪及び侵入犯罪の認知件数の増加が、元年から14年にかけての刑法犯認知件数の増加に影響を与えたと考えられる。

一方、14年から29年にかけて刑法犯認知件数は約194万件減少しているところ、同期間に街頭犯罪の認知件数は約127万件減少しており、刑法犯認知件数の減少に対する寄与率は65.7%である。また、侵入犯罪の認知件数は約29万件減少しており、同寄与率は14.8%であることから、街頭犯罪及び侵入犯罪の減少が14年から29年にかけての刑法犯認知件数の減少に影響を与えたと考えられる。

注1:路上強盗、ひったくり、自動車盗、オートバイ盗、自転車盗、車上ねらい、部品ねらい及び自動販売機ねらいのほか、強制性交等、強制わいせつ、略取誘拐、暴行、傷害及び恐喝のうち街頭で行われたもの

注2:侵入強盗、侵入窃盗及び住居侵入

注3:公益財団法人日工組社会安全研究財団が14年に実施した「犯罪に対する不安感等に関する世論調査」(https://www.syaanken.or.jp/wp-content/uploads/2012/05/2_1403_01.pdf)によれば、犯罪被害に遭う不安を感じている者に対し、どのような犯罪に不安を感じるか質問したところ(複数回答)、「空き巣」(63.5%)、「通り魔的犯罪」(33.4%)、「すり・ひったくり」(32.6%)、「車上狙い」(31.4%)、「自転車を盗られる」(30.4%)の順に多くなっており、身近な場所で発生する犯罪に不安を感じていたことが分かる。

注4:データ全体の変化を100とした場合に、構成要素となるデータの変化の割合を示す指標

 
図表特-2 街頭犯罪及び侵入犯罪の認知件数(平成元~29年)並びに罪種・手口別認知件数(平成元年、14年及び29年)の推移
図表特-2 街頭犯罪及び侵入犯罪の認知件数(平成元~29年)並びに罪種・手口別認知件数(平成元年、14年及び29年)の推移
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元年から14年にかけての刑法犯認知件数の増加に対する罪種・手口別の寄与率は、図表特-3のとおりであり、車上ねらい(21.0%)、器物損壊等(14.8%)、自動販売機ねらい(11.6%)及び侵入窃盗(8.7%)の寄与率の高さが目立つ。

一方、14年から29年にかけての刑法犯認知件数の減少に対する罪種・手口別の寄与率は、図表特-4のとおりであり、乗り物盗(27.8%)、車上ねらい(20.0%)、侵入窃盗(13.7%)及び自動販売機ねらい(8.6%) の寄与率の高さが目立つ。

 
図表特-3 平成元年から14年にかけての刑法犯認知件数の増加に対する罪種・手口別寄与率
図表特-3 平成元年から14年にかけての刑法犯認知件数の増加に対する罪種・手口別寄与率
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図表特-4 平成14年から29年にかけての刑法犯認知件数の減少に対する罪種・手口別寄与率
図表特-4 平成14年から29年にかけての刑法犯認知件数の減少に対する罪種・手口別寄与率
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街頭犯罪の罪種・手口別認知件数の指数の推移は、図表特-5のとおりである。オートバイ盗を除き、いずれの罪種・手口も14年は元年より増加しており、中でも路上強盗は7.2倍、ひったくりは5.2倍、自動販売機ねらいは4.7倍と大幅に増加している。14年と29年を比較すると、暴行(街頭)を除き、いずれの罪種・手口も減少しており、元年と29年を比較すると、路上強盗、強制わいせつ(街頭)、略取誘拐(街頭)及び暴行(街頭)以外の各罪種・手口は、いずれも元年より減少している。特にオートバイ盗は元年から92.6%、恐喝(街頭)は82.3%、自動販売機ねらいは77.3%の減少となるなど、元年と比較しても大幅に減少している。

 
図表特-5 街頭犯罪の罪種・手口別認知件数の指数の推移(平成元年、14年及び29年)
図表特-5 街頭犯罪の罪種・手口別認知件数の指数の推移(平成元年、14年及び29年)
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(2)窃盗の傾向

(1)のとおり、街頭犯罪及び侵入犯罪の認知件数の推移が刑法犯認知件数の推移に影響を与えたと考えられるところ、罪種別では、図表特-6のとおり、窃盗の認知件数の推移が大きな要因となっている。

平成元年から14年にかけて刑法犯認知件数は約118万件増加し、このうち窃盗は約89万件(75.7%)を占めており、14年から29年にかけて刑法犯認知件数は約194万件減少し、このうち窃盗は約172万件(88.8%)を占めている。

また、刑法犯認知件数がピークであった14年の窃盗の認知件数は約238万件と、刑法犯認知件数全体の83.3%を占めていた。

 
図表特-6 窃盗の認知件数の推移(平成元~29年)
図表特-6 窃盗の認知件数の推移(平成元~29年)
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窃盗の主な手口別認知件数の推移は、図表特-7のとおりである。元年と14年を比較すると、オートバイ盗以外の手口の認知件数はいずれも増加しており、特に、自転車盗、車上ねらい及び自動販売機ねらいの増加が著しい。

一方、14年と29年を比較すると、いずれの手口も減少している。特に、車上ねらい、オートバイ盗、自動販売機ねらい、空き巣、自動車盗、ひったくり及びすりは、8割以上減少しており、自転車盗及び車上ねらいの認知件数は、いずれも30万件以上減少している。

 
図表特-7 窃盗の主な手口別認知件数の推移(平成元年、14年及び29年)
図表特-7 窃盗の主な手口別認知件数の推移(平成元年、14年及び29年)
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(3)検挙人員の傾向

① 年齢層別の傾向

年齢層別人口1万人当たりの検挙人員の推移は、図表特-8のとおりであり、平成元年以降、他の年齢層と比較して、14歳から19歳までの人口1万人当たりの検挙人員が圧倒的に多く、ピーク時である15年に176.0人となり、同年の20歳から29歳までの人口1万人当たりの検挙人員と比べて4倍以上多かった。しかし、その後、14歳から19歳までの人口1万人当たりの検挙人員は大幅に減少し、他の年齢層との差が急速に縮小している。

 
図表特-8 年齢層別人口1万人当たりの検挙人員の推移(平成元~29年)
図表特-8 年齢層別人口1万人当たりの検挙人員の推移(平成元~29年)
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② 刑法犯少年の検挙人員の傾向

元年以降の刑法犯少年の人口1万人当たりの検挙人員は、4年にかけて減少した後、10年にかけて増加し、15年以降は減少傾向にある。また、罪種別では、常に窃盗が最も多くを占めている。

 
図表特-9 刑法犯少年の人口1万人当たりの検挙人員の推移(平成元~29年)
図表特-9 刑法犯少年の人口1万人当たりの検挙人員の推移(平成元~29年)
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