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タイ 犬には「夢の国」? 殺処分なく生涯保護 前国王の精神浸透

 【バンコク浜田耕治】今年のえとは戌(いぬ)。タイの街を歩くと、路地の真ん中や店の入り口でごろりと寝そべり、気持ち良さそうに昼寝をする犬たちの姿に出合う。まるで「犬天国」だ。なぜなのか。背景を探った。

 「以前は5匹いたけど、今はこいつらが常連だね」。バンコクの中心部にある銀行支店前。警備員の男性(42)は、自動ドアの前に陣取った2匹の野良犬を笑顔で見つめた。ドアが開くたびに冷気が漏れて快適なのか、死んだように熟睡中だ。誰も追い払おうとせず、客の方がよけて通る。

 バンコク都によると、都内の野良犬は約10万匹に上る。年間の苦情は約4500件。その都度、行政当局が捕獲するが、日本のように殺処分はしない。避妊手術と狂犬病のワクチンを注射した後、飼い主が見つからなければ、施設で生涯にわたって面倒を見る。

 北部ウタイタニ県にある施設では約6千匹が飼われ、餌代だけで年間1200万バーツ(約4千万円)かかるという。「殺処分? そんなことをしたら大変だ」と都庁の獣医師マイソンさん(56)は話す。国民の9割が仏教徒。殺生をしない仏教の教えが息づき、国民も殺処分を認めないのだ。

 一方、故プミポン前国王の影響も大きいと話すのは、動物保護団体「ソイ・ドッグ基金」のハンパッタナさん(31)。国民の敬愛を集めた前国王は1998年、視察先で処分される直前の野良犬4匹を救い、そのうち1匹の子犬を引き取って大切に育てた。この話は国内に浸透しており、動物愛護の精神が広がるきっかけになったという。

 日本と違って、タイでは毎年、狂犬病の死者が出る。昨年は9人が死亡した。街中の犬に誰も構わないのは「かまれるのが怖い」との事情もある。マイソンさんによると、野良犬が減らないのは飼い犬を捨てる人が後を絶たないため。「仏教の影響で人々は野良犬に施しとして餌を与える。犬にとっては生きやすいが、身勝手な人間の犠牲になっている側面もある」と話した。

=2018/01/04付 西日本新聞朝刊=

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