4. リゾート感を出すために

岩田

ここでちょっと、
前作についても触れておきたいのですが、
いまや『Wiiスポーツ』は
世界一販売本数の多いソフトになりました。
海外ではWii本体に同梱して販売していますので、
“世界一”という言い方が適切かどうかわかりませんけど、
20年以上破られなかった
『スーパーマリオブラザーズ』の記録を抜いているんですね。
そんなオバケソフトの続編をつくるようなことは、
まったくの更地で、新作をつくることよりも
とても難しいことだと思うんです。
そういった困難な仕事にどう向き合い、
どんなことを考えていたのですか?

山下

先代があまりにも、あまりにも、
あまりにもでしたので・・・。

岩田

自分でつくったんですけどね。

山下

そうなんですけど(笑)。

一同

(笑)

山下

『Wiiスポーツ』を出す前は
Wiiと同時発売ということもあって、
どれだけ売れるのか
ぜんぜん予想がつかなかったんです。
自分ではおもしろいものができたという自信はあって、
ある程度は受け入れてもらえるとは思っていたのですが、
現実は遙かに予想を超えてしまったので
続編をつくるという話になったとき
やっぱり心配でしたね。
それに、メジャーなスポーツで
実現しやすいものは・・・。

岩田

全部やっちゃったし(笑)。

山下

やっちゃいましたから(笑)。
前作でやってしまっていたので、
「これは大変」だと、スタッフ一同思ってました。

岩田

かといって、奇をてらった方向に行けば、
マイナー感が出ちゃいますし。

山下

そうなんです。そこで、
“アクティビティ”と“スポーツ”という
2つの柱を考えることにして。

岩田

“アクティビティ”と“スポーツ”?

山下

“アクティビティ”は
島でレジャーで楽しむような種目で、
“スポーツ”は前作の流れを汲むような、
ボールを使ったりする一般的なスポーツ種目です。
今回は、その2つの柱で行きましょうと。

岩田

まあ、1本の柱だけだと、
『Wiiスポーツ』と変わりばえしないから、
違う柱をつくりましょうということなんですね。
ちなみに誰が『リゾート』という
名前をつけたんですか?

嶋村

宮本さん、だったと思うんですけど。

山下

もともとは、いろんな案があったんですよね。

宮本

『Wiiスポーツ2 ○○リゾート』とかね。
それで、NOA(任天堂オブアメリカ)に相談したら、
『Wiiスポーツ リゾート』という
シンプルな名称にしたほうがいいんじゃないかと。

山下

『2』じゃないんですよね。

宮本

『2』はやっぱり邪魔くさいよねと。

岩田

『2』と呼びたくないのは
どうしてなんですか?

嶋村

やはり前作の存在が大きいので、
『2』にすると、お客さんにとっては
「またか」という気持ちにもなると思うんです。
それに、今回は何より
Wiiモーションプラスという新しいデバイスで、
これまでにない新しい遊びを実現していますので、
そのためにも『2』と呼びたくなかったんですね。

山下

前作とは遊び方が大きく変わりましたしね。

嶋村

それに、最初に考えたロゴの文字は
「Wii Sports」のほうが大きかったんです。
横にちっちゃく「Resort」をつけていたんですね。
ところが宮本さんから「逆でしょう」と言われて。

岩田

「Resort」は副題じゃないんだと。

嶋村

ええ。でも、自分のなかでは、
ずっと副題のように思っていたんです。
そこで、「Resort」の文字を中央にドーンと置いて、
ロゴを作り直してみたんです。
すると、自分だけでなく、
みんなの意識が大きく変わったんですね。

山下

僕らがつくってるのは
『Wiiスポーツ2』じゃなくって・・・。

嶋村

リゾートのゲームなんだと。

山下

それからは、とてもやりやすくなりましたね。
デザインするにしても、仕様を考えるにしても・・・。

佐藤

「これ、リゾート感があるねえ」とか言ったりして(笑)。

嶋村

その言葉、ずっと使ってましたよね。
「ちょっとリゾート感が足りないなあ」とか(笑)。

岩田

リゾート感・・・。
なんだか『ゼルダ』開発チームの人たちが
→ゼルダらしさ」と言ってることに
すごく通ずるものがありますね(笑)。

嶋村

僕らもどうやってリゾート感を出そうかと、
“リゾート感”という言葉をいつも使ってましたね。

山下

行ったことはないんですけど・・・。

宮本

だから琵琶湖に
ウェイクボードを見に行こうとかね。

嶋村

ハイビスカスをちょっと置いてみたり。

宮本

アロハシャツを着せてみようとか、
バナナボートはほしいよねとか。

岩田

そういうのがリゾート感なの?

一同

(笑)

山下

だから、少ないリゾート経験者から
話を聞くしかなかったんです。

岩田

南の島の経験者に?

山下

はい。「どんなところですか?」
「外でピンポンはするんですか?」と。

一同

(笑)

山下

すると「するらしいよ」と。

嶋村

「外でピンポンするの、見たことある」とか。

宮本

温泉に行ったらピンポンしますしね。

岩田

温泉とリゾートをいっしょにするのは
どうなんでしょうか(笑)。

一同

(笑)

山下

そこで「ピンポン」は屋外でやることにしたんです。

ピンポン

嶋村

プールサイドなので、リゾート感たっぷりですし。

山下

でも「チャンバラ」チームの人たちは、
ちょっときつかったですね。
リゾート感が足らなくて。

嶋村

そもそも、リゾートに行って
チャンバラをするような人はいないですしね。

宮本

だからと言って、
バナナボートの上でチャンバラするわけにもいきませんし。

一同

(笑)