NPB(日本プロ野球組織)の実行委員会が1日、都内で開かれ、今季より育成選手に限り、四国アイランドリーグPlusとBCリーグへの派遣を認めることになった。組織の枠を越えた選手育成を目的に、広島が2月の実行委員会で提案し、継続審議になっていた。NPBからは1球団4名までの派遣が可能で、独立リーグでは1球団5名までの受け入れが可能。シーズン途中の派遣や選手の入れ替えもでき、その間の給与もNPB球団が負担する(ユニホーム代などは独立リーグ球団の負担)。
 独立リーグ側が望んでいたNPBとの協力体制がようやく前進し始めた。NPB選手の独立リーグ派遣が議論となったのは2007年。千葉ロッテのボビー・バレンタイン監督がアイランドリーグの1球団を買収して選手やスタッフを送り込む構想を発表し、10月には育成選手の派遣を実行委員会に提案していた。しかし、この時は結局、認められず、以後、具体的な進展はなかった。

 今回、派遣を認める決定を下した背景には、MLBがアイランドリーグやBCリーグに触手を伸ばしているという流れがある。2年前より、複数のMLB球団が非公式ながら、両リーグへ選手派遣を打診。PDC(Player Development Contract=選手育成契約)を締結し、アジア圏でスカウトした若手を送り込むプランを示していた。

 米国ではMLB球団と各独立リーグがPDCを結び、MLB球団より選手や指導者、スタッフを派遣する代わりに、独立リーグ側が実戦経験の機会を提供するスタイルが一般的になっている。MLB球団としては選手などの育成を肩代わりしてもらえるメリットがあり、独立リーグ球団もその分の人件費が浮く。まさにwin-winの制度だ。現状、アイランドリーグ、BCリーグとも多くの球団が赤字を抱えており、コストカットは至上命題。両リーグともNPBとの提携を優先としながらも、それが困難な場合はMLBとの交渉を進める考えを打ち出していた。

 NPBも06年から育成選手制度を導入しながら、その運用はうまく言っているとは言い難い。今季のキャンプイン時点でNPBの育成選手は11球団で106名。だが、育成選手が出場できる2軍の公式戦は110試合前後と1軍よりも少ない。各球団とも大学や社会人チームとの練習試合を組んだり、イースタンリーグでは混成チームのフューチャーズなどを結成したりして、出場機会を増やそうとしているものの、あまり試合に出られないまま戦力外になってしまうケースも目立つ。山口鉄也や松本哲也(いずれも巨人)、岡田幸文(千葉ロッテ)、内村賢介(東北楽天)など育成選手から1軍に定着したのはほんの一握りだ。

 そんななか、昨季は福岡ソフトバンクが育成選手を主体とする3軍を創設。アイランドリーグ各球団との定期交流戦を含む70試合強を実施した。3軍設立に携わったソフトバンクの小林至海外担当兼中長期戦略担当部長は「3軍制にすると、多くの選手に試合に出られるチャンスが回ってくる。育成選手で支配下登録できそうな選手がたくさん出てきた」と、その効果を強調する。他球団でも育成選手の出場機会増加が課題になっており、遅ればせながらNPB内の足並みがそろった格好だ。

 今後は選手派遣を希望するNPB球団が、個別に独立リーグ球団と交渉を行い、合意に達すれば交流がスタートする。アイランドリーグの鍵山誠CEOは「ソフトバンクの定期交流戦がNPBとの連携の第1歩だとすれば、今回の育成選手受け入れは第2歩」とNPBの決断を歓迎。選手派遣は球団同士の話し合いとなるため、一部のチームにNPB選手が偏るなどの問題も予想されるが、鍵山CEOは「まずはスタートを切ることが大事。戦力の不均衡の問題が生じれば、(今季から米独立リーグより受け入れる)外国人選手の割り振りなどで対策を考えたい」と語った。

(石田洋之)