日本経済新聞社

記事利用について
印刷 印刷

日本ラグビー界ピンチ W杯開催白紙も

2015/8/28付
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

ラグビーW杯日本大会開催に暗雲が広がっている(7月15日、「キックオフミーティング」で下村文科相(右)と話す森元首相)=共同

ラグビーW杯日本大会開催に暗雲が広がっている(7月15日、「キックオフミーティング」で下村文科相(右)と話す森元首相)=共同

日本ラグビー界が大ピンチだ。国際統括団体から2019年ワールドカップ(W杯)日本大会の開催権剥奪の可能性を通告されるなど、課題が噴出している。

■サッカーW杯・夏季五輪に次ぐ世界的イベント

ラグビーW杯はラグビー世界一を決めるイベントだ。

ラグビーW杯は、ワールドラグビー(旧IRB)の主催で4年に1度、開催される。20カ国が出場。
人種差別撤廃後の南アフリカが主催した第3回大会で同国代表が初優勝を遂げるまでの軌跡は映画「インビクタス」に詳しい。
今や世界的なスポーツイベントとしてはサッカーW杯、夏季五輪に次ぐ規模を誇る
ラグビー・ワールドカップ(W杯)とは(2010年11月9日)
(IRBは2009年7月に)日本を2019年W杯の開催地に決めた。W杯のアジア開催は初めて。

■新国立、ラグビーW杯に使えず

日本大会の開幕戦と決勝は新国立競技場で行われることになっていた。

安倍晋三首相は7月17日、2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場について「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直すと決断した」と正式表明した。
2019年5月としてきた新競技場の完成予定時期も「20年春までが目安」(下村博文文部科学相)と大幅にずれ込む。想定していた19年9月に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)での使用は断念する。
新国立競技場「白紙に」、首相表明(7月17日)

2020年東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の予定地。建設計画は白紙撤回され、設計からやり直す緊急事態に。ラグビーW杯には間に合わなくなった=共同

2020年東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の予定地。建設計画は白紙撤回され、設計からやり直す緊急事態に。ラグビーW杯には間に合わなくなった=共同

新国立競技場の建設計画見直しは、2019年ラグビーW杯日本大会の運営に大きな影響が出る。
新競技場が会場に使えなくなり、メーン会場の収容人数が減少、収支が大幅に悪化する。
集客面では「新スタジアム初の国際大会」というPR材料を失うことも痛い。
大会組織委員会は4百億円以上の運営費のほとんどを入場料で稼ぐ必要があるが、数十億円の減収になる可能性が高い。

新国立見直し、ラグビーW杯の収支悪化(7月18日)

新国立競技場をメーン会場に使えないことで収入は数十億円減る見込み(東京都新宿区)

新国立競技場をメーン会場に使えないことで収入は数十億円減る見込み(東京都新宿区)

■代表チームのヘッドコーチ退任

ラグビーW杯日本大会に向けて日本代表チームの強化にも取り組んできた。だが、今秋のW杯イングランド大会後に強化体制の再構成を迫られる事態が起きた。

就任後の4年間でジョーンズ・ヘッドコーチは日本の地力を引き上げた=共同

就任後の4年間でジョーンズ・ヘッドコーチは日本の地力を引き上げた=共同

日本ラグビーフットボール協会は25日、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)が来月開幕のW杯イングランド大会後に退任すると発表した。
南半球最高峰リーグ、スーパーラグビー(SR)の日本チームの強化責任者も退く。
ジョーンズ氏はオーストラリア出身の55歳。2003年W杯豪州大会で母国を準優勝に導き、12年から現職。ウェールズ、イタリアから初勝利を挙げた手腕を日本協会は高く評価し、一時は19年W杯日本大会まで続投させる方向だった。
しかし、SRへの準備の遅れや、新天地からのオファーなどで退任に転じたもよう。
協会は19年W杯への強化体制を再構築する必要がある。

ジョーンズ氏「W杯を集大成に」 ラグビー日本代表HC退任へ(8月26日)

■「スーパーラグビー」参戦も危機に

ラグビーの南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」への日本チームの参加が危機に陥っていることが26日、分かった。
スーパーラグビーはニュージーランド、オーストラリア、南アフリカのクラブの大会。
日本協会は2019年ワールドカップ日本大会に向けた強化・普及の切り札として来年からの加入を申請。昨年11月に認められた。
主催者のSANZAR(サンザー)は日本ラグビーフットボール協会側に対し、選手・コーチ陣との契約を月内に結ぶよう求めているが、難航している。
条件を満たせないと、サンザーが参加を取り消す可能性が高い。

南半球最高峰「スーパーラグビー」 日本参戦ピンチ(8月27日)

■ついにW杯開催権の剥奪論議に

2019年ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会組織委員会に対し、国際統括団体のワールドラグビー(WR)が開催権剥奪の可能性を伝えたことが27日、複数の関係者の話で分かった。
新国立競技場をメーン会場に使えないことで収入は数十億円減る見込み。日本側が減収分の補償の確約などの条件を9月までに満たさないと、WRは開催国を南アフリカなどに移す恐れがある。
日本W杯白紙も ラグビー統括団体が通告 減収補償要求(8月28日)

■9月にイングランド大会開幕 日本代表、不動の心で

ラグビーW杯イングランド大会は9月18日に開幕する(強化試合でトライを決める日本代表のツイ選手)=共同

ラグビーW杯イングランド大会は9月18日に開幕する(強化試合でトライを決める日本代表のツイ選手)=共同

9月18日にラグビーW杯イングランド大会が開幕する。日本は第1回大会から8回連続出場だ。試合に集中しチーム一丸で逆風を吹き飛ばす活躍をしてほしい。

大きな大会後の監督交代が事前に発表されることは、プロスポーツの世界で珍しくない。
離任が決まっていると監督の求心力が落ち、チームが勝てないというわけでもない。
リーチ・マイケル主将(東芝)は淡々と話した。「彼も生活をしないといけないから当然。(退任が)決まったからといって、ここ(日本代表の指導)が中途半端になることは絶対にない」

ラグビー日本、指揮官退任にも不動の心を(8月27日)


本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービスに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。