フィンランドがNATO加盟示唆、米ロ協議控え権利強調
北欧のフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に加盟する権利を強調している。ニーニスト大統領が年頭演説で言及した。ロシアがNATOの拡大停止を求めて米国と協議するのを控え、加盟を示唆することで自国の安全保障政策を決める権利を訴える狙いがある。ロシアの反発は必至で、欧州との対立が一段と深まる可能性がある。
ニーニスト氏は1日の演説で、ロシアによる再侵攻が懸念されているウクライナ情勢に触れ、欧州の安保を巡る緊張が高まっていると指摘した。フィンランドには「NATOへの加盟を申請する可能性を含む選択の自由がある」と言明した。
マリン首相も年頭の声明で、フィンランドを含むすべての国に「NATO加盟を申請する選択肢がある」と強調した。
欧州連合(EU)加盟国のフィンランドはロシアと過去に戦火を交え、約1300キロメートルにわたって国境を接する。NATOには加盟していないが、2014年のロシアによるウクライナ侵攻を受けてNATOや米国との関係強化を進めた。同時に緊張の激化を避けるため、ロシアとの一定の関係維持も探ってきた。
首脳陣がNATO加盟への言及に踏み込んだ背景には、ロシアが提示した欧州安保をめぐる合意案への危機感がある。
ロシアは21年12月に緊張緩和にむけて米国やNATOに示した合意案で、NATOの東方拡大の停止やロシア国境に近い地帯での軍事演習を控えることなどを一方的に要求した。1月には米ロ、ロシアとNATOがそれぞれ協議を予定する。
フィンランドは、自国やウクライナなどの安保を左右する駆け引きを米ロが当事国不在のまま進めることを警戒する。
ニーニスト氏は演説で、地政学的なバランスが変わるたびに大国よりも小国がその影響を受けてきたと主張した。ロシアの提案は「欧州の安保秩序に反する」と非難し、ロシアと米国やNATOの交渉を注視する構えを示した。ロシアへの不要な譲歩を避けるように米欧に暗にクギを刺した。
フィンランドの発言にロシアは強硬姿勢を強めるとみられる。ロシア外務省のザハロワ情報局長は21年12月下旬の記者会見で、NATOの軍事演習にフィンランドやスウェーデンが積極的に参加するようになっているなどと批判を展開した。両国がNATOに加盟すれば「軍事的、政治的に深刻な影響」を与えるとして、ロシアが対抗措置を取ると警告していた。
ロシアの脅威の高まりが改めて認識されれば、フィンランド国内で実際にNATO加盟の議論が盛んになりそうだ。04年にNATOに加盟した旧ソ連のバルト3国の議員からもフィンランドの加盟が北欧の安保を強化すると支持する意見が出ている。対ロシアで中立政策を掲げてきたフィンランドの動向がスウェーデンなど他国に波及することも考えられる。