自民総裁選、安倍・石破氏が票奪い合い
保守層や脱派閥 支持基盤重なる
安倍晋三元首相が12日、自民党総裁選(14日告示、26日投開票)への出馬を表明した。最大派閥・町村派は会長の町村信孝元外相と安倍氏の2人が立候補する分裂選挙になることが決まった。安倍氏は派閥主導への批判票や保守層の支持の獲得を目指すが、石破茂前政調会長と激しい票の争奪戦になる見通しだ。
「国民、党員の皆様に心からおわびを申し上げます」。安倍氏は12日の出馬会見の冒頭で深々と頭を下げた。持病の潰瘍性大腸炎で首相辞任を表明したのはくしくも5年前の9月12日。安倍氏は「2年前に画期的な新薬が登場し、難病を克服できた。今は心身共に健康だ」と強調した。
安倍陣営の懸念は5年前の辞任にまつわる「政権投げだし」との批判だ。所属する町村派の前会長の森喜朗元首相は「前回の辞任を世間は覚えている。今回は見送るべきだ」とたびたび安倍氏に出馬見送りを求めた。支持議員からも出馬辞退の要請は何度も上がった。
町村派は町村氏が既に出馬表明しており、分裂選挙が確定。派内では下村博文元官房副長官らが安倍陣営に加わるが、派内での安倍氏支持は「3割程度」(周辺)。陣営は脱派閥を訴え、派閥横断的な選挙戦を重視する考えだ。
12日の会見では「日本の領土領海、日本人の命は断固として守る」と強調し、支持を集める保守層に訴えた。橋下徹大阪市長についても「大阪維新の会のパワーには期待したい」と連携に強い意欲を示した。
ただ、支持基盤となるはずの脱派閥や保守層は、石破氏と重複する。両氏は合同勉強会を開き「安倍氏の高い志に共感する」(石破氏)とエールを送り合うなど、決選投票での「2、3位連合」を念頭に置く。
しかし、1回目の投票ではどちらが上位になるかをめぐり支持層の争奪戦になるのは確実。言葉とは裏腹に協力関係がすんなり構築できるかは不透明だ。「安倍氏が出馬したことで石破氏の支持票が割れて助かった」(石原陣営)との声も出ている。
「危機意識を持ってやっていこう」。出馬会見に先立つ12日の安倍陣営の会合。陣営の選挙対策本部長に就いた甘利明元経済産業相は、支持議員にこう発破をかけた。参加した議員の1人は「地方票の数がもっと多ければいいのに……」と嘆く。元首相の知名度を背景に、陣営では地方の党員票に期待を寄せる声が多い。一方で国会議員票をどこまで上積みできるかが焦点となりそうだ。