人手不足、好況で浮き彫り 5月有効求人倍率1.09倍
景気の回復に伴い、働き手の不足感が強まっている。厚生労働省が27日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.09倍と前月より0.01ポイント上がり、1992年6月以来の高い水準になった。地方では15~64歳の生産年齢人口が減り続けている。不況が続いていたときには目立たなかった問題が、好況下で浮き彫りになった形だ。
有効求人倍率は職を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。求人数が変わらなくても求職者の数が減れば、倍率は高くなる。
5月の有効求人倍率が前月から0.02ポイント改善して0.84倍となった高知県。都道府県別の順位は41位だが、高知県としては求人倍率の最高値を記録した。原動力は新規求職者数が16カ月連続で減り続けていること。高知労働局は「最大の要因は県内の景気が回復してきていることだが、生産年齢人口の減少も一因」と分析する。
高知は長く都市部に比べ雇用環境が悪かったため働き手の世代が東京などに流出し続けた。総務省が先日発表した人口動態調査によると、全国の生産年齢人口はピークだった95年から2014年までに8%減にとどまったのに対し、高知は19%も減った。
高知市に本社がある建設関連機器製造の技研製作所は来春の採用を前年の22人から30人程度に増やす計画だが、苦戦している。「県内の若者の減少」(総務部)に加え、今は地元にいる学生らの志向も大都市の大企業に向いているためだ。
厚労省は都道府県別の有効求人倍率について今回から毎月、地域の雇用の実態をより反映させるため、就業地別の求人数を基にした求人倍率も公表することにした。
その就業地別の倍率では最も高かった福島県。東日本大震災からの復興需要による求人増に若者の減少が重なり、求人倍率が上がり続ける。福島県の生産年齢人口は95年から14年で13%減った。
業種別の求人倍率をみると保安が7倍超、建設が3倍超となるなど除染作業員や現場誘導員の需要が倍率を押し上げている。介護や飲食を含むサービスも2倍強だ。
南相馬市内の牛丼店「すき家」原町店は深夜帯のパート・アルバイトの時給が1500円に達した。運営するゼンショーホールディングスによると、東京都内の数店と並んで最高の水準という。同社は「地方のアルバイトの多くは地元の若者。応募がない以上、時給を上げざるを得ない」(広報室)と説明する。
地方では働き手不足に対処するため、高齢者や女性、外国人の活用を模索する企業が多い。
札幌市にあるコープさっぽろは今春、パートなど非正規職員の人事・雇用制度を相次ぎ見直した。非正規の契約職員が正職員のエリア職に移れるようにしたほか、従来は65歳が上限だったパートの継続雇用は68歳まで延ばした。同社は「経験を積んだ人材にできるだけ長く働いてもらいたい」(人事部)と説明する。
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