マツダ、100周年の変革期で試す独自性
マツダは30日に創立100周年を迎えて、広島市の本社で記念式典を開いた。丸本明社長は「100年を振り返ると、良いときも、悪いときも取引先や地域の皆様などの支えがあり、今日を迎えられた」と感謝を述べた。地殻変動が起きる自動車業界を駆け抜ける出発点として、「独自性を貫いていく」(丸本社長)と挑戦にこだわる姿勢を示した。
電動化や自動運転など次世代技術の対応を迫られるうえ、グローバルを舞台にした競争環境も厳しさを増している。「100年に1度」ともいわれる変革期は、マツダにとって大きな節目と重なった。
30日午前中に広島本社で記念式典が開かれた。国内の工場では生産を一時停止し、従業員もモニターを通して式典に参加した。式典で決意表明を述べたグローバル販売&マーケティング本部の杉本学アシスタントマネージャーは、「100周年はひとつのステップで、学んだ過去の反省やいい点を今後につなげたい」と話した。
「CASE」で新たな一歩を踏み出す。2020年に量産初となる電気自動車(EV)「MX-30」を欧州で、年度中にも日本で発売する予定だ。個性がある走りや斬新なデザインでファンを魅了してきたマツダにとって、EVでもその真価を問われることになる。
マツダの世界販売は約160万台で、業界内では「スモールプレーヤー」だ。それだけに小粒であっても、キラリと輝く独自性や斬新さこそが、完成車メーカーとして本領を発揮していくポイントになる。
次世代技術への対応はスモールプレーヤーには重荷にほかならない。「社会的責任を全うしながら、車を愛し走るよろこびを楽しいと感じる人に技術を提供していきたい。全方位的にできるとは思っていない」(丸本社長)という。強みとする分野を見極めて、選択と集中を進める。
足元では新型車の売れ行きが伸び悩み、米国、中国など主要マーケットも低調に推移する。マツダは何度も危機的な状況に追い込まれながら、再建を粘り強く繰り返してきた。「大事にしてきたのは常に先をみることで、5年、10年先にどうありたいかを考えて実行しながら厳しさを乗り越えてきた歴史だ」(丸本社長)と振り返った。
マツダは1920年の1月30日に東洋コルク工業として創立され、もともとは飲料瓶などに使われるコルクを手がけていた。その後、3輪トラックやロータリーエンジン車などを独自の技術で時代を駆けてきた。
マツダの代名詞でもあるロータリーエンジン車の生産はすでに終了している。「全ての従業員がロータリーが好きで、もう一度世に出したいという思いは変わらない」(丸本社長)。難局を切り抜けるには手堅い現実路線が欠かせないが、マツダらしいビジョンやロマンも忘れていない。(岡田江美)