「高齢親囲い込み」に賠償命令 姉2人、妹と母会わせず
当時80代の母親を自宅から連れ出した長女と次女が、三女と母が会うことを阻み続けるのは不法行為に当たるとし、東京地裁が長女らに対して110万円を三女に賠償するよう命じる判決を言い渡していたことが30日までにわかった。
高齢の親を持つ子が、親と他のきょうだいなどを会わせないトラブルは「囲い込み」と呼ばれ増加しており、相続が絡む場合もある。昨年には別のケースで横浜地裁が、妹と父母を会わせない兄らに面会妨害を禁じる仮処分決定を出した。
判決は11月22日。母は夫と死別し都内の自宅で独居し、近くに住む三女が世話をしていた。ところが、長女、次女と三女が母の財産管理を巡り意見が対立した。
母が病気で自力の移動が困難になった2012年11月、長女と次女が母を連れ出し、それぞれの自宅や施設に住ませ、三女に会わせることを拒み居場所も知らせなかった。姉2人はその間に、判断能力が低下した母の利益を代理する任意後見人になった。
松本真裁判官は判決理由で「親と面会交流したいという子の素朴な感情や、面会交流の利益は法的保護に値する」とし、合理的な理由なく拒めないと指摘した。
訴訟で長女らは母自身が三女と会うのを嫌がり、会わせれば健康に支障が出かねないと主張。しかし判決は、三女が独自に母の居場所をつかみ1度だけ面会した際の三女と母の会話内容などに基づき、会いたくない意向はうかがえないとした。面会が健康に影響する根拠もないと退け、会わせないのは姉2人の後見人の裁量を考慮しても不法行為と判断した。
三女側の清瀬雄平弁護士は「親に不法に会わせない行為に対し、賠償を得られることが明確になった」と評価する一方「面会を実現させる命令までは現行法では困難で最大の問題として残る」と指摘した。
〔共同〕