ブッシュ元大統領に別れ 国葬に3000人参列
【ワシントン=中村亮】第41代米大統領のジョージ・H・W・ブッシュ氏の国葬が5日、ワシントン大聖堂で行われた。トランプ大統領やオバマ、クリントン、カーター各歴代大統領のほか、海外からはドイツのメルケル首相やチャールズ英皇太子、日本の福田康夫元首相が出席した。米メディアによると、約3000人が参列してブッシュ氏との別れを惜しんだ。
43代大統領を務めた長男のジョージ・W・ブッシュ氏は「父は、大統領は高潔であり勇気と米国民への愛情を持って国を主導すべきだということを教えてくれた」と語った。「歴史書には偉大な大統領として名が刻まれるだろう」と述べた。
あいさつの最後には「あなたの礼儀正しく誠実で優しい魂は永遠に我々とともにある」と強調。「私たちが流してきた涙を通じて偉大かつ高貴で最高だった父に愛していると伝えたい」と述べると、言葉を詰まらせて目に涙を浮かべた。
トランプ氏はメラニア夫人と最前列に座り、腕を組んだり、目をつぶったりしながらブッシュ氏らのあいさつを聞いた。葬儀の直前には「すばらしい人生を送った偉大な人物を祝福する日だ」とツイッターに投稿した。会場ではオバマ夫妻と握手を交わしたが、2016年の米大統領選を戦ったヒラリー・クリントン元国務長官とは握手をしなかった。
ブッシュ氏の大統領在任中にカナダ首相を務めたブライアン・マルルーニー氏は「50~100年後にブッシュ氏ほど信念を貫き、尊敬されたホワイトハウスの主はいないと語り継がれているだろう」と指摘した。ブッシュ氏が1991年の湾岸戦争で各国と協調して多国籍軍をまとめあげた功績をあげて「現代史で最も成功した取り組みだった」と回顧した。
米大統領の歴史研究家ジョン・ミーチャム氏は、ブッシュ氏は太平洋戦争で自身が搭乗する軍用機が旧日本軍に撃墜されたにもかかわらず命を救われた理由を頻繁に自問自答していたと指摘。ミーチャム氏はその理由を「(大統領として)米国民の生活をより自由かつ温かく高貴なものに変えることが彼のミッションだったからだ」と説明した。
ブッシュ氏は国連大使や米中連絡事務所長、米中央情報局(CIA)長官を歴任し、1981年にレーガン政権の副大統領に就任した。88年に大統領選で勝利すると翌年にはソ連のゴルバチョフ共産党書記長と会談し、東西冷戦の終結を宣言した。92年の大統領選ではクリントン氏に敗れて任期は1期限りだった。今年11月30日に94歳で亡くなった。