トルコ、ベネズエラに経済協力 対米けん制
【サンパウロ=外山尚之、イスタンブール=佐野彰洋】トルコのエルドアン大統領は3日、ベネズエラを訪問し、同国への経済協力を拡大すると発表した。米国の制裁で経済が崩壊状態のベネズエラにとり、トルコは数少ない支援国の一つ。トルコはベネズエラ支援を通じ、緊張関係が続く米国をけん制する構えだ。
エルドアン氏はアルゼンチンで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議に参加した帰途。カラカスでベネズエラのマドゥロ大統領と会談した。イベントに出席したエルドアン氏は「両国間の貿易をより安定的に、持続可能にする必要がある」と述べ、貿易拡大の方針を示した。ベネズエラへの45億ユーロ(約5800億円)の投資も約束したが、詳細は明らかでない。
物資不足で年率100万%近いハイパーインフレに苦しむベネズエラからはすでに300万人以上の国民が周辺国に流出して難民化している。
ベネズエラはこれまで中国やロシアに支援を求めてきたが、最近になってトルコの存在感が大きくなっている。1~10月の2国間の貿易額は10億ドル(約1130億円)超で、前年同期の7倍に急増した。ベネズエラが同国で産出する金の精錬・加工先をトルコに切り替え、同国への輸出が急増した。トルコは食品や日用品の輸出を増やした。
欧米の航空会社が相次ぎベネズエラへの就航を停止するなか、トルコ政府が出資するターキッシュエアラインズは週3回のイスタンブール―カラカス線の運航を続ける。
トルコは反米左派政権のベネズエラを支援することで、米国に圧力を加える狙いだ。エルドアン氏はシリア情勢への対応を巡って米国と対立し、ロシアやイランに接近している。トルコで起きたサウジアラビア人記者殺害事件では、サウジのムハンマド皇太子の関与を認めようとしない米国にに対し、エルドアン氏が皇太子の関与を強く示唆する発言を続けている。
米国は11月1日の大統領令でベネズエラの金の取引を禁じる新たな制裁措置を決めた。ベネズエラからトルコへの金の輸出を停止させる狙いだ。エルドアン氏は「貿易を制限するような制裁は誤っている」と述べ、米国を批判した。ベネズエラ産の金の取引を巡る問題は今後、米国とトルコの間の新たな火種になっていく可能性がある。
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