大相撲史上最多32回の優勝を誇る元横綱大鵬の納谷幸喜(なや・こうき)氏(日刊スポーツ評論家)が19日午後3時15分、心室頻拍のため東京・新宿区の慶応病院で死去した。72歳だった。

 元大嶽親方(元関脇貴闘力)の鎌苅忠茂氏(45)は沈痛な面持ちで大嶽部屋に入っていった。身内だけが集まった病院を訪れて、納谷氏の最期をみとったという。「最後に顔を見られて、良かった」と言葉を振り絞った。

 93年10月に納谷氏の三女、美絵子さんと結婚。引退後は大鵬部屋の部屋付き親方となり、大嶽部屋として後を継いだ。だが、野球賭博事件に関与したことで、10年7月に日本相撲協会を解雇された。離婚にも至り、養子縁組も解消されていた。ただ、納谷氏からは優しい言葉をかけられていた。「『いつでも帰っておいで』と言ってくれていました。懐が深かった。優しい親方でしたからね」と涙ぐんだ。

 部屋の近くで焼き肉店を開き、納谷氏の体調をいつも気にかけていた。「ずっと車いすだったので、元気がなかったんです」。ショックを隠しきれなかった。