「逃げヘビ」が、ついに発見、捕獲された。横浜市のアパートから逃げ出した体長約3・5メートル、体重約13キロのアミメニシキヘビ捜索は22日、初めて屋根裏に入って捜索。6日に行方不明となってから17日目、屋根裏の木や鉄筋の支柱に巻き付くような形で見つかった。警察、消防、市職員、ボランティアら数多く動員された大捕物。多くの専門家が指摘していた通り、ごく近い場所に潜んでいた“灯台下暗し”の結果となった。飼い主はヘビの譲渡を決断し、しばらくは横浜市で保管することになった。

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17日間のアミメニシキヘビ騒動は、想定外に長かった。飼い主宅のアパート屋根裏に潜伏していたことは幸いだったが、飼い主の少しの油断や過失により、1歩間違えれば大惨事だった。

人に危害を加える恐れがあるとして指定されている「特定動物」の飼育方法の徹底や、責任の重要さを考えさせられる機会でもあった。アミメニシキヘビやオオアナコンダなどのヘビ、アリゲーターなどのワニを含む爬虫(はちゅう)類だけではない。哺乳類ではオナガザルなどのサルにも多く、ゴリラやチンパンジーも含まれる。鳥類でもヒクイドリやコンドルに加え、多くのワシ、タカも指定されている。

ペットとしての新規飼養に関しては、動物愛護法の改正により、現在は認められていない。一般的にペット飼養されているのは、爬虫類くらいだろうか。犬や猫はコミュニケーション目的が主。爬虫類は観賞用で違いはあるが、「鳴かない」「におわない」などの特徴は、近年の住宅事情にマッチしている部分もある。

専門家によると、的確な飼育をしていれば逃げ出す心配は皆無だと言う。だが、今回の一件により、爬虫類業界では“風評被害”も懸念している。ヘビ、トカゲ、ワニなどを飼っている住宅への過剰な偏見や恐怖。すでに、発見の立役者となった日本爬虫類両生類協会の白輪剛史理事長が園長を務める「体感型動物園iZoo」(静岡県河津町)では「家族に飼うことを反対されてしまったので、引き取ってほしい」との要望に、アミメニシキヘビを譲り受けることが決まった。今回のような、多くの人々に恐怖、不安、苦労を招いてしまった再発を危惧する声の1例だ。

記者としては、ヘビの見識は広がった。今後に役立つかは不明だが…。驚いたことは、ヘビは体長が長いだけでなく、交尾の時間も長いらしい。種類によっては半日どころか、数日続けることもある。しかも精子は数年間、雌の体内で生き、交尾直後でなくても受精することがあるようだ。

捕獲のニュースは、日刊スポーツの紙面やネットでも大きく扱った。取材が終了したのは午後7時半ころ。現場は原稿を打つには困難な環境で、アパート近くの畑を囲う石垣の上でパソコンを開いて作業開始。アリやダンゴムシは想定内だったが、全作業を終えてパソコンを閉じようとした瞬間、手にヌメッとした軟らかい感触が…。パソコンのふちにナメクジが2匹。夫婦だったのだろうか。そっと木の枝で持ち上げ、畑の夜の世界へ見送った。時計も、ちょうど午後9時だった。【鎌田直秀】