月組の暁千星(あかつき・ちせい)はトップ龍真咲の退団公演「NOBUNAGA<信長>-下天の夢-」で3度目の新人公演主演を務める。5年目にしてバウ公演を含めて既に4度目のセンター。ひげを着け、髪形もシャープにし、男らしさを意識。6月10日に兵庫・宝塚大劇場で開幕した本公演では龍ふんする織田信長の家臣を演じて新境地を開拓した。新人公演は東京宝塚劇場で8月18日。

 「挑戦」。サイン色紙に“決意表明”を記した。

 「信長を描き、日本ものなんですけど、楽曲はロック。伝統の世界に新しいものを取り入れ、龍さんはずっと挑戦されてきた。私は同じ所に収まる傾向があるので、もっと挑戦したい」

 卓越したダンス、恵まれた体格を生かした男役らしい立ち姿で抜てき続きだったが、心中は不安だった。

 「ダンスは得意ですが、他にも上手な子はいて、歌も演技も。正直『なんで私に?』と思っていました」

 7年目以内の新人公演だが、3年目に入ったばかりの一昨年に初主演した。

 「あの後『次(の新人公演)は通行人Aの役だった』という夢を見たんですよ。そんな役、ないんですけど(笑い)。もう役をもらえないんだ、やっぱりダメだったんだって!」

 スター街道を歩む中、心は追いついていなかった。ただ実際には組内での存在感は増す一方。昨年は新人の枠を超え、バウホール公演での主演も果たした。

 「この間の全国ツアーでは下級生ばかりの場面で引っ張る立場になっていた。作品全体の中でのこの場面の意味は? って、考えることを覚えました」

 今回、相手役の紫乃(ゆかりの)小雪は初ヒロイン。同期ながら暁にはけん引役も求められる。「引っ張らないと。(紫乃は)妹みたいな存在でかわいい。面倒を見ちゃうと思います」と笑った。

 トップ龍が今作で退団する月組では、まだ9年目の珠城りょうが次期トップに決定。暁の立場も重みが増し「変革」が求められる。

 「今回(信長役で)ひげを着けるんですけど、こんなベビーフェースで似合うかどうか心配です…」

 父は元南海の最多勝投手、山内和宏氏。ひげを蓄えており「お父さんに聞いてみようかな」とジョークを交えながら、激しい気性でダークな面も持つ主人公像への意気込みを口にした。

 「野望、夢をガンガン押し出す信長。無理を実現させそうなカリスマ性があって、そこは(本役の)龍さんだからこそ出せると思う。でも私も芯の強さだけは失わないで演じたい」

 前作「舞音」で悪役を演じ、新発見もあった。

 「初めて悪役をやって、すっごく楽しくて! 自分にない(持ち味の)役、アクの強い役は楽しい。今回も何か、見いだせたら」

 本公演では信長配下の佐脇良之役だけに、ドラマ「利家とまつ」を鑑賞。反町隆史が演じた信長を参考にする。理想の男役像に向け、髪形への意識も変えた。

 「襟足が短いと顔が丸く見えるから長めにし、トップは短くして男っぽさを」

 肩幅が広く、衣装の着こなしには定評がある。若きスターがブラッシュアップを続ければ、その先は飛躍しかない。【村上久美子】

 ◆「NOBUNAGA<信長>-下天の夢-」 天下統一の夢へ向かい、駆け抜けた織田信長の生涯をロック調のナンバーにのせてつづるミュージカル。信長に夢を抱き、または信長を愛し、もしくは戦った、同時代の武将の生きざまも描く群像劇。

 ☆暁千星(あかつき・ちせい)9月14日、広島県生まれ。12年3月、宝塚音楽学校を首席で卒業、同4月初舞台。3年目に入ったばかりの14年4月「明日への指針」新人公演で初主演。昨年9月に「A-EN」でバウワークショップ初主演。172センチ。愛称「ARI」。