沖縄の本土復帰50年を迎えたこの日、同県出身の力士たちが故郷に思いをはせた。

番付に載る出身力士8人のうち5人が土俵に上がり、2人が白星を挙げた。西十両14枚目美ノ海(ちゅらのうみ、29=木瀬)は武将山を押し出しで下し、5勝3敗とした。これまで地元から計6人が関取になったが、三役力士は生まれていない。「もっと強くなって目に触れる機会が増えれば、沖縄のことを考えるきっかけを与えられる」と奮闘を誓った。

幕内は1敗が消え、玉鷲、隆の勝、碧山、佐田の海、一山本の平幕5人が2敗で首位に並ぶ混戦になってきた。

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美ノ海が、沖縄県民にとって節目の日に白星を挙げた。武将山の強烈な突き押しを冷静にはねのけ、押し出した。6日に29歳の誕生日を迎えた。「もう若手じゃない」と言いながらも連敗を2で止めた。5勝3敗と白星先行で折り返した。

米統治下から本土復帰50年の日。「僕らは上の世代から継いできた話しか知らないけど、平和について考える良い機会」。ロシアによるウクライナ侵攻が続く世界情勢も憂いながら、願った。

18年7月の名古屋場所で、県勢としては元前頭琉鵬以来15年半ぶりに新十両に昇進。日々土俵に上がり「必死に闘っている姿を見せるのが、自分自身ができること」と前を向く。「(十両では)番付最下位だけど、元気な相撲を取る。強くなって目に触れる機会が増えれば、沖縄のことを考えるきっかけを与えられる」と意気込んだ。

節目の日に同じく白星を挙げた幕下の出羽大海は、宮古島市出身。「おじ・おばの家にドル札がいっぱいあるという話を聞いた。今でも個人経営のスーパーではドル札が使えるんですよね。返還が50年前といえ、(アメリカの影響は)まだ身近ですよ」と地元の独特な事情について明かす。三段目の美は「(沖縄返還は)アメリカのことで縛られなくなり、日本人として生きていけるようになった」と話し、「この時期には社会の授業で沖縄が日本復帰したと習うんですよ」となつかしんだ。

序二段の瑞光は太平洋戦争を経験した祖父から食糧不足で困窮した話を聞いて育ったことに触れ、「ここから遠いですけど、祈りをささげて頑張ってる姿を見せたい」と決意を見せた。大海原を渡った郷土力士たちはさまざまな思いを持ちながら、きょうも土俵に上がる。【平山連】

◆沖縄と大相撲 県出身の現役力士は十両美ノ海ら8人。初の関取となった琉王を含めて計6人の関取が誕生した。コロナ禍以前は毎年12月の冬巡業に沖縄開催が組み込まれており、19年には美ノ海、木崎海(首の負傷により20年8月に引退)の兄弟関取が生まれたうるま市にて、2日間の日程で開催された。

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