脳腫瘍の影響で今季限りで現役を引退する阪神横田慎太郎外野手(24)が26日、引退試合となったウエスタン・リーグのソフトバンク戦(鳴尾浜)で、病気後初となる1096日ぶりの公式戦出場を果たした。8回2死二塁の守備から中堅に入ると、ヒットで本塁を狙った二塁走者をレーザービームでアウトにした。視力の低下で打球はかすんでいたが、これぞ魂のバックホーム。奇跡のラストプレーを刻み、惜しまれなが現役生活に別れを告げた。

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魂のバックホームだった。中堅横田は不思議な力に背中を押されるように、前に出た。ワンバウンドで打球を捕ると、本塁へ左腕を目いっぱい振った。ノーバウンドで捕手片山まで届いたレーザービームで二走水谷を刺した。ベンチ、ブルペン、スタンド-球場全体がビッグプレーに沸き、総立ちでヒーローを迎えた。

横田 練習でもああいうボールはいったことないんです。本当に神様がいてくれたからだと思います。

脳腫瘍から復活後初、16年9月以来、約3年ぶりの公式戦出場。2点リードの8回2死二塁から慣れ親しんだ中堅に入ると、鳴尾浜に大歓声が沸き起こった。みんなに愛された人柄が分かるように、1軍から矢野監督をはじめ、福留や鳥谷らのベテランまで大勢駆けつけた異例の引退試合。野球の神様が舞い降りた。

いきなり飛んできた5番市川の中越え適時二塁打をそつなくさばいた。そして2死二塁で6番塚田。軽快なダッシュで中前打をつかむと、ドラマのようなストライク送球を突き刺した。

横田 攻める気持ちはありましたが、あんなに前に出れるとは思っていなくて。誰かが前に押してくれたんじゃないかというくらい足が進んで、(打球も)グラブに入ってくれた。本当に今まで諦めずにやってきて良かったなと。(打球は)全然きれいに見えずに二重で見えて、どこで跳ねているかも分からなくて。

引退の原因となった視力は回復していなかった。それでも、この日も試合前練習は誰よりも早くグラウンドに出た。5回裏終了の整備時には1人、センターに向って動作の最終確認。外野から本塁方向を見つめてイメージを巡らせ、奇跡のラストプレーにつなげた。

試合のユニホームは124番だったが、セレモニーは球団が支配下時代の24番を準備。スコアボードには1番高山、2番横田…と16年の1軍開幕オーダーが表示された。あいさつでは涙をこらえ切れず、胴上げされるとまた涙があふれた。

横田 福留さんや鳥谷さんも来てくれて。鳥谷さんにも最後「神様も本当に見ているんだな」と言われて、涙が出ました。(ファンの方で)一番多かったのは「今まで感動をありがとう」と。みんな泣きながら言ってもらえたので、本当にうれしかったです。

みんなありがとう。心からありがとう。大病を克服した24歳が感動の復活を置き土産に、グラウンドに別れを告げた。【奥田隼人】