快幕じゃ! 広島鈴木誠也外野手(23)が公式戦219日ぶりの出場となる中日との開幕戦で適時二塁打を放った。3回の第2打席に左中間へ、一時勝ち越しとなる一打で打線を勢いづけた。自身初の「開幕4番」で自らの復帰戦を祝うとともに、マツダスタジアム開場初の開幕戦白星をもたらした。

 二塁ベース上で右手拳を力強く握ると、鈴木はチームメートがいる一塁ベンチへ向かって笑った。若き主砲が帰ってきた。同点の3回無死二塁の2打席目。中日小笠原の浮いたチェンジアップを強振した。左中間を真っ二つに割り、スピードを緩めずに二塁を奪った。右足首を負傷した昨年8月23日DeNA戦(横浜)以来、219日ぶりの復帰戦を自ら祝うとともにチームの白星発進に貢献した。

 「(リハビリ期間は)僕にとって大事な時間だった。きついなと思っていたけど、こうやって開幕を迎えられた。あらためて良かったと思う」。

 219日は、とてつもなく長い時間だった。「復帰できないかもしれない」という不安は常につきまとった。リハビリメニューが限られた術後。2軍選手と過ごした大野寮で、後輩の部屋でテレビゲームに加わったこともあったが、すぐに部屋を飛び出した。「俺は何をやっているんだろう」。隣接する練習場で1人、パイプ椅子に座り素振りで気を紛らせた。

 緒方監督にカミナリを落とされて目覚めた初開幕スタメンの15年の朝とは違い、熟睡してこの日を迎えた。「今年のテーマは笑顔」。昨年は4番の重圧などで、周囲への対応がときに鋭利さを放つこともあった。長く続いたリハビリもまたつらかった。3月に入っても「どうなるか分からない」と慎重な言葉を続け、開幕直前にようやく不安はなくなった。昨季までなら試合前練習終了後には鬼気迫る表情になっていたが、この日は晴れやかにプレーボールのときを待った。

 復帰戦で今年初めてフル出場し、マツダスタジアム開場初、緒方監督就任初の開幕戦白星をもたらした。「疲れました」と笑うと「もう過去は振り返らずに、1日1日を過ごしたい」と前を向きなおした。長いリハビリとの戦いは終わり、新たな戦いが幕を開ける。【前原淳】