おとこ気熱血!! 元大リーガーでマリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(48)が12日、高松市のレクザムスタジアムで高松商(香川)ナインを臨時指導した。

約4時間、自ら打撃を実演して柵越えを披露。今夏の甲子園大会でイチロー氏が昨年12月に指導した智弁和歌山に敗れ、その際に長尾健司監督(51)が「うちにも来てほしい」と熱望したことがキッカケで実現した。国学院久我山(東京)、千葉明徳に続く3校目で、年内の指導終了。この3校から、智弁和歌山に続く全国制覇は出るか?

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今年最後のイチロー氏の高校球児訪問は粋だった。今夏の甲子園で優勝した智弁和歌山に3回戦で敗れた高松商ナインと向き合った。フリー打撃で右翼への4本の柵越えを披露。選手は口々に叫んだ。「エグい」「打球速い」「打球高い」。日米通算4367安打の技術を惜しみなく見せた。

「バッティング練習も全力で(振って)いい形を目指しています。疲れます。バテてから、ここから形を崩さず振るのが大事」

53スイングの途中、何度も意図を説明。生きた手本だった。イチロー氏が今年3校目の指導で高松商を訪れたのは理由がある。「今夏の甲子園、智弁和歌山との試合後の監督の発言がきっかけ」と明かした。敗戦直後、長尾監督は「(智弁和歌山は)イチローさんにも教えていただいて強くなったんだろうな、やる気が出たんだろうなと思うと、うちにも来てほしい」と熱望した。この日、同監督は発言を「智弁和歌山のような落ち着きと積み重ねたもの…。イチローさんが来たかどうかの差があったと思った」と説明した。

11日から濃密な2日間だった。ティー打撃の方向、走塁のリード姿勢…。指揮官は「1カ月の練習をした感じです」と感謝した。イチロー氏は最後に「みんな、レベルがとっても高い。センスがいい。期待してます。で、ずっとチェックしています。すごくいい雰囲気で、高松商業。応援したくなっちゃいました。多分、また、来るかもしれないですね」と伝えた。誇り、自信…。春夏2度ずつ甲子園を制している強豪校が、心をかき立てられる時間を過ごした。

○…イチロー氏がプレゼントした黒バットが高松商ナインの“お目付け役”だ。「この2日間の時間をたまに思い出してほしいので、ティーバッティングで使っていたバットを置いていきます。気合を入れたいときはこれを握ってもらっても構わないので。打っちゃダメだよ。握って。僕に見られている感じがするでしょ。みんなのこと見てますから。監督(のことも)見てますよ」とユーモアたっぷりに話した。

◆イチロー氏の智弁和歌山指導(20年12月2~4日) 同校の応援にほれ込んでファンとなった縁で実現。最終日には自身の打撃を見せるなど全開モード。「緊迫したときは全体を見ようとすること。筋肉が緊張するとパフォーマンスが下がるのでそれを避けたい。打撃でもリリースポイントだけを見ると緊張する」など心構えも説いた。今夏の甲子園では、大会前に「ちゃんと見てるよ」とメッセージを届け、チームは21年ぶりの頂点に立った。