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積丹が生んだ「巨匠」造形家 竹谷隆之

  • 2023年9月1日

みなさん、猛暑ですが、お元気ですか?「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」道央担当リポーター、坂井里紗です。今回伺ったのは、自然豊かな町、後志の積丹町。実は、ある有名な造形作家の出身地なんです。

 それが竹谷隆之さん。2016年に公開された映画「シン・ゴジラ」や「仮面ライダーシリーズ」など数々の特撮やアニメでキャラクターデザインなどを手掛けた「巨匠」です。 

ふるさと、積丹町で8月29日(火)から開かれた竹谷さんの展示会には、作品のほか写真やデザイン画などが所狭しと並べられています。訪れた人たちは「細かいところまで作り込んであって、すごい!感動しました」などと声をあげながら熱心に見入っていました。中には、竹谷さんが子どものころから知る人も。「小さい時から絵を描くのがとっても上手で、何かできるかなと思っていたらやっぱりという感じ。すばらしいと思っています!」と話していました。竹谷さんは、思春期まで家族と過ごした積丹町での経験をベースに創作活動に取り組まれているとか。その思いをうかがいました。

「第八十八恵比須丸」

昭和の田舎の風景にSF要素を取り入れた作品。大きな「もり」を載せた巨大な漁船。乗っている漁師は父親をモデルに。

造形作家 竹谷隆之さん
「父親が漁師で、自分も魚をとるところに立ち会っていたので、そういう経験を生かせるようなストーリーを考えました。また、昭和の時代に育ち、その佇まいが好きなので、そこにさらにSF要素を加えた舞台設定にしました。人間より強い凶暴な生物がたくさん生息しているという設定にして、船には、大きい生物を仕留めるための大きい『もり』がついています。」

造形作家 竹谷隆之さん
「父が乗っていた船や漁船の後ろのほうに『化粧板』という船大工さんが彫刻したものがありまして。それを見て育ち、子どもの時から惹きつけられていました。これも漁船なので後ろのほうに化粧板があったほうがよかろうと思ってつけてみました。」

「鉄砲を構えるカネヒサ」

造形作家 竹谷隆之さん
「父が、海の漁師であると同時に山の猟師でもあったので、一緒に山に連れられて行ってました。親父は鉄砲を撃つんですけど、『どん』と撃つと子どもの僕の胸にすごくビリビリ響いてくるんですよね。これを作った時は、親父生きていたんですけど、親父に聞いても何も教えてくれなかったので。鉄砲詳しい人にどういう持ち方が良いのかとか口径とか長さとかを聞きました。」

造形作家 竹谷隆之さん
「都会のセンスでいうおしゃれとは違う、実用性だけの服を作りたかったですね。今の漁師さんはだいぶおしゃれになりましたけど、当時はやっぱり昭和でしたので、本当にこういうイメージがありましたね。」

どの作品も、人物の表情や道具まで、かなり緻密に作られています。

造形作家 竹谷隆之さん
「実際にあったら自分が小さくなって運転してみたくなるようなものにしたかったですね。楽しんで作りました。楽しんで取り組めば集中できますので、『できるだけ楽しく作るにはどうしたらいいか』っていうのを趣味でも仕事でも考えるようにしています。」

積丹町で中学卒業までを過ごした竹谷さん。積丹にいたころを振り返ってもらいました。
「ひ弱」な子どもだったとか。

造形作家 竹谷隆之さん
「周りにやんちゃな同級生たちがいっぱいいて、それについていくのが精一杯でしたね。夏は泳いだり、その辺ぶらぶらするというか、自然風景をただ眺めて石投げたりしていましたね。1人の時は絵を描いたり、粘土で何か作ってみたりとかっていうのはやっていました。プラモデルはもう大好きで。子どものころに漫画や仮面ライダー、ウルトラマン、ゴジラが出始めて周りにたくさんあったので、やっぱりそういうのに影響されて好きになっちゃいました。ただ田舎なので、お店の片隅にちょこっと申し訳程度にプラモデルがあるだけで、なかなか手に入らず。その手に入らない感じなのが良かったんだと思うんですよね。じゃあ自分で作ろうかな、となるので。やっぱりその環境も有り難かったと今では思います。」

竹谷さんが特に思い出深いのが、トンネルを抜けた先にある「茶津海岸」だといいます。

造形作家 竹谷隆之さん
「しょっちゅう泳いでいたんですけども、やっぱりそこが美しくて。大きな島の手前に、『鴎島(ごめじま)』ってあるんですけど、ちょっと怪獣みたいな形をしているんですよね。それをずっと見ながら『ゴジラみたいだな』と思いながら泳いでいたんですけども。大人になってゴジラの仕事を少しさせていただくことになって、妄想していたのが直結したような気がしてちょっと感慨深かったですね。」

積丹町の自然に間近で触れていたという竹谷さん。そのすべてが創作活動の源になっているそうです。竹谷さんの作品は、緻密でありながら大胆で圧倒されてしまうような迫力がありました。そして、そのひとつひとつから今にも動き出しそうな、『鼓動』を感じます。

造形作家 竹谷隆之さん
「人間が立ち入れないような断崖絶壁とか山奥とか怖い熊とか、そういうのが残っているっていうのが、『人間がコントロールしきれない自然がある』っていうのはやっぱり都市生活と違うところ。都会だと経験できないことを見たり聞いたり体験できたりしたのは本当に貴重な経験で良かったと思います。もう血肉というか根幹というか。土台というか。大切な財産ですね。」

取材後記

訪れたお客さんもかなり熱心に見ていましたが、アニメやゲームのフィギュアが大好きで映画「シン・ゴジラ」を何度も見返している私も、作品のすべてに圧倒されてしまい、(取材を忘れて…)思わず真剣に見入ってしまいました。興奮と感動と少し怖さを感じるくらいの迫力で…私の持てる語彙力ではどの言葉も安っぽく聞こえてしまいそうですね。まだまだご紹介したい作品はたくさんあるのですが、せっかくの貴重な機会ですので、会場へ足を運んで360度じっくり見てみてはいかがでしょうか。
「竹谷隆之・積丹展」は、9月4日(月)まで、海森スタジオとヤマシメ番屋で開かれています。展示会と一緒に、竹谷さんが過ごした積丹の風景や空気感も味わってみるのもいいかもしれませんね。ちょっと積丹の見方も変わるかも。

今回初めてお会いした竹谷さん。「巨匠」と呼ばれる方なので、ちょっと緊張していたのですが…どんな質問にも考えて丁寧に答えて下さり、とっても優しく暖かい方でした。積丹を「愛おしい」と語っているのがとても印象的でした。さらに今回、竹谷さんの奥様、たけやけいこさんにもお会いすることができました。けいこさんも、取材する私たちをとっても素敵な笑顔で出迎えて下さいました。ありがとうございました!
取材を通して、竹谷隆之作品のファンになってしまった私は、取材後思わず「竹谷さんは北海道の宝です!」と心の声が強めに出てしまったのですが、竹谷さんは「そんなそんな、言い過ぎですよ」と優しく笑ってご謙遜されていました。

道央いぶりDAYひだか
坂井里紗
2023年8月31日

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