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○職業訓練法の一部を改正する法律の施行について

(昭和五三年一〇月一日)

(労働省発訓第二五号)

(各都道府県知事、雇用促進事業団理事長あて労働事務次官通達)

職業訓練法の一部を改正する法律(昭和五三年法律第四〇号)は、五月八日に公布されたところであるが、明年四月一日から施行される職業能力開発協会に関する規定を除き一〇月一日から施行された。

この法律は、最近における職業訓練をとりまく社会経済情勢の変化に対応して職業訓練行政の新たな展開を図るため、職業訓練法(昭和四四年法律第六四号)を改正するものである。

すなわち、従来、職業訓練は新規学校卒業者に対する養成訓練を主体として実施されてきたところであるが、雇用情勢及び産業構造の変化、年齢、学歴及び職業別の就業者の構成割合の変化等により、新たな役割を果たすことを求められており、今後、生涯職業訓練を推進する上で、特に離転職者の再就職等のための職業訓練の機動的な実施、在職労働者に対する向上訓練の拡充、養成訓練の質的向上を図ることが必要となつている。このような課題に応えるため、公共職業訓練の整備、民間における職業訓練の振興並びに職業訓練及び技能検定の推進を目的とする団体の育成等のための措置を講じ、公共・民間一体となつた幅広い機動的な職業訓練の実施体制の確立を図ろうとするものである。

この法律が国会において全会一致をもつて可決成立したことにもうかがわれるとおり、昨今、職業訓練行政に対する各方面の期待は従来になく大きいものがある。もとより法令の整備は時代の要請に対応した職業訓練行政の展開の第一歩であり、新職業訓練法の目的の適確な実現に向けてのたゆみない努力こそが職業訓練行政に対する評価を左右することとなるものであつて、今後、関係職員が一体となつて一層の努力を傾注する必要がある。

この法律による職業訓練法の改正等の主たる内容及び留意すべき事項は下記のとおりであり、貴職におかれてもこの法律の制定の意義及び趣旨を十分に理解され、新職業訓練法の運用に万全に期せられたく、命により通達する。

第一 職業訓練法の改正

Ⅰ 総則の改正(第一章関係)

一 法律の目的の改正(第一条関係)

今回の改正の内容に対応して、職業訓練法の目的を拡充し、直接的には、職業訓練及び技能検定の内容の充実強化及びその実施の円滑化のための施策を講ずることにより、職業訓練及び技能検定を普及し、及び振興することを目的とし、空極的には労働者の職業に必要な能力を開発し、及び向上させ、職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とするものとした。

二 基本理念の明確化(第三条関係)

国、都道府県及び事業主等が職業訓練及び技能検定の内容の拡充及び実施の円滑化のために講ずる施策、措置全般のあるべき方向としての生涯職業訓練及び生涯技能評価の推進と定着を図るため、改正前の職業訓練法(以下「旧法」という。)の職業訓練及び技能検定の原則に関する規定を強化し、基本理念としてより具体的に明確に規定することとした。すなわち職業訓練は、労働者各人の希望、適性、職業経験等の条件に応じつつ雇用及び産業の動向、技術の進歩、産業構造の変動等に即応できるものであって、その職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行われることを、また、技能検定は、職業に必要な労働者の能力についてその到達した段階ごとの評価が適正に行われることを基本理念とするとともに、職業訓練及び技能検定は、この基本理念に従って、相互に密接な関連の下に行われなければならないこととした。

三 関係者の責務の明確化(第四条関係)

公共・民間が一体となった総合的な職業訓練実施体制を確立するため、職業訓練及び技能検定に関し労働者に対して責任を負うのは事業主並びに国及び都道府県であることを明らかにするとともに、その責務、役割の分担を明確にした。特に、現下の雇用情勢の下で重要となっている離転職者等に対する職業訓練について、国及び都道府県がその実施に努めなければならないことを明らかにした。

(一) 雇用労働者に対する職業訓練についてはまず事業主が役割を担うべきものであるが、事業主の雇用労働者に対する責務を強化し、事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行うことに加えて、その労働者が職業訓練又は技能検定を受けることを容易にするために必要な援助を行うように努めなければならないものとした。

(二) 国及び都道府県は次の責務、役割を担うものとした。

① 事業主等の行う職業訓練の振興及び内容の充実を図るため、事業主等に対して必要な援助等を行うように努めること。

② 次の分野における職業訓練の実施に努めること。

イ 離転職者、その他特に援助を必要とする者に対する職業訓練

ロ 事業主等より行われる職業訓練の状況等にかんがみ必要とされる職業訓練

③ 技能検定の円滑な実施に努めること。

Ⅱ 職業訓練の実施体制の整備等(第三章第一節及び第二節関係)

近年の社会経済情勢の変化に対応して、能力再開発訓練、向上訓練の拡充、養成訓練の質的向上を図り、公共・民間一体となった幅広い職業訓練実施体制の確立を図るため、旧法の職業訓練の体系、公共職業訓練施設及び職業訓練の認定等に関する規定を「第一節職業訓練の実施」として統合し、改正するとともに、職業訓練大学校、指導員訓練及び職業訓練指導員に関する規定は一般の職業訓練に関する規定と区分し「第二節職業訓練指導員等」として整備した。

一 多様な職業訓練を受ける機会の確保(第八条関係)

(一) 社会経済情勢の変化の中で労働者の職業訓練ニーズはきわめて多様なものとなっており、労働者の必要とする内容の職業訓練が適時適切に行われることが重要であることから、新たに規定を設け、労働者は、養成訓練、向上訓練及び能力再開発訓練その他多様な職業訓練を受けることができるように配慮されるものとした。事業主並びに国及び都道府県は、準則訓練についてのみならず幅広く労働者の職業能力の開発向上のための職業訓練の実施、各種の便宜の供与等の措置を講ずることを要請されるものである。

(二) 職業訓練の種類として養成訓練、向上訓練及び能力再開発訓練を例示しているが、旧法においては、法定職業訓練の種類は養成訓練、向上訓練、能力再開発訓練、再訓練及び指導員訓練に区分されていたところ、指導員訓練は別に規定することとする(六参照)とともに、旧法における「向上訓練」及び「再訓練」についてはその実施の状況にかんがみ、両者をあわせて「向上訓練」とした。

二 職業訓練の実施の方法等(第九条関係)

公共職業訓練施設において行う職業訓練については、特に、今後、向上訓練及び能力再開発訓練の拡充を図る上で、労働者及び事業主のニーズを十分反映したものとして実施され、活用されることが重要であり、また、能力再開発訓練の機動的な実施を推進する必要があることから、次のとおり旧法の公共職業訓練施設の運営等に関する規定を強化するとともに、事業主の職業訓練の実施を促進するため、新たに規定を設け、事業主はその状況に応じ、自ら又は共同して職業訓練を行うほか、公共職業訓練施設、民間教育訓練施設等にその雇用する労働者を派遣して職業訓練を受けさせる方法があることを示し、これらを職業訓練法に位置づけて奨励していくものとした。

(一) 国及び都道府県は、離転職者等に対する職業訓練を機動的に実施するため、公共職業訓練施設内において実施するほか、必要に応じ、他の適切な施設に委託してその行う教育訓練を受けさせることができるものとした。これは旧法のいわゆる委託訓練の実施に関する規定が委託を行う場合及び委託することができる施設について限定的であったのを改め、離転職者等に対する職業訓練の必要に応じ積極的に委託訓練を活用できることとし、また、委託することができる施設についても専修学校、各種学校等を含め弾力的に取り扱うことができることとしたものであるので、今後、離転職者の発生状況等に応じ委託訓練の積極的活用を図られたい。

(二) 国及び都道府県は、職業訓練の実施に当たり、関係地域における労働者の職業の安定及び産業の振興に資するよう、職業訓練の開始の時期・期間及び内容等について十分配慮するものとした。今後、入校時期の多様化、単位制(モジユール)訓練方式の導入、訓練技法の開発、訓練科目の転換、新設等を積極的に推進することとなるので、関係地域の状況、労働者及び事業主の職業訓練ニーズを把握し、これらの施策の推進に努められたい。

三 準則訓練の基準等(第一〇条から第一三条関係まで)

(一) 旧法において、公共職業訓練施設の行う職業訓練及び認定職業訓練は、「法定職業訓練」と総称されていたのを「準則訓練」と総称することとするとともに、その訓練課程の区分及び訓練課程ごとの教科、設備その他の事項に関する基準については、すべて労働省令で定めるものとした。これに伴い、技能照査等に関する規定についても整備を行っているが、それらの取扱いは従前と実体的にかわるところはないものである。

なお、準則訓練の訓練課程は、養成訓練については、その質的向上を図るため、旧法における専修訓練課程を廃止し、高等職業訓練課程に相当する普通訓練課程と特別高等訓練課程に相当する専門訓練課程の二区分とするものであるが、既に設置されている専修訓練課程については、当分の間、従前のとおり取り扱うものとする。また、向上訓練については、その弾力的実施を図るため、一級技能士訓練課程、二級技能士訓練課程及び監督者訓練課程と旧法による向上訓練の技能開発訓練課程、及び生産技能訓練課程並びに再訓練の技能追加訓練課程及び技能補習訓練課程を統合した技能向上訓練課程の四区分とするものである。

(二) 職業訓練ニーズの多様化に対応し効果的な職業訓練を実施するため、旧法においては養成訓練及び能力再開発訓練のための教科書についてのみ労働大臣が認定することとされていたのを改め、向上訓練を含めたすべての準則訓練についての教科書及び教科書以外の視聴覚教材等の教材を労働大臣の認定の対象とすることとした。

四 職業訓練施設(第一四条関係)

今後重要となる能力再開発訓練及び向上訓練の拡充、養成訓練の質的向上を推進するため、次のとおり、旧法における、職業訓練施設に関する規定を統合し、職業訓練施設の種類及び機能の分担を再編整備することとした。なお、公共職業訓練施設及び事業主等の設置する職業訓練施設を統一的に規定することとし、また、職業訓練大学校については、一般の職業訓練施設とは区分して別に規定することとした(六参照)。

(一) 職業訓練施設の種類は、職業訓練校、職業訓練短期大学校、技能開発センター及び身体障害者職業訓練校とし、職業訓練校は地域における職業訓練の基盤となる総合的な職業訓練施設として、その他はそれぞれの分野についての専門的な職業訓練施設として機能の分担を図るものとした。

(二) 職業訓練校は、地域における職業訓練の基盤となる職業訓練施設として普通訓練課程の養成訓練のほか、労働者及び事業主の必要に対応して向上訓練及び能力再開発訓練をも総合的に行う機能を果たすものとした。なお、旧法による専修職業訓練校と高等職業訓練校はいずれも職業訓練校となるものである(職業訓練法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。附則第二条第一項)。この場合、現に専修訓練課程の養成訓練の訓練科を設置している職業訓練校においては、当分の間、従前どおり専修訓練課程を実施できるものとするが、地域の実情に応じて普通訓練課程に漸次移行していくよう適切に対処されたい。また改正法の施行により、都道府県の設置する公共職業訓練施設の名称の変更のための措置を講じなければならないものではないので念のため申し添える。

(三) 職業訓練短期大学校は、専門訓練課程の養成訓練を専門に行う職業訓練施設とした。

(四) 技能開発センターは、向上訓練及び能力再開発訓練を専門に行う職業訓練施設とした。

(五) 身体障害者職業訓練校は、身体障害者等に対する職業訓練を専門に行う職業訓練施設とすることは従前のとおりである。

五 公共職業訓練施設(第一五条及び第一六条関係)

職業訓練施設に関する規定を改めたことに対応して公共職業訓練施設に関する規定を統合整備するとともに、国と都道府県又は市町村の職業訓練施設の設置の分担等を次のとおり再編し、明確にした。すなわち、従来、公共職業訓練は、新規学校卒業者に対する養成訓練を主体に実施されてきたが、進学率の上昇等によりその面での公共職業訓練に対する職業訓練ニーズは減少しており、一方、今後能力再開発訓練、向上訓練及び高度の養成訓練の実施体制を拡充する必要があることに対処するため、従来の養成訓練の実施については都道府県が分担するものとし、雇用促進事業団については、従来実施してきた養成訓練を廃止し、能力再開発訓練、向上訓練及び高度の養成訓練の実施を分担するものとすることにより、全体として公共職業訓練における従来の養成訓練の規模を縮少し、能力再開発訓練、向上訓練及び高度の養成訓練の規模を拡充しようとするものである。

(一) 国は、職業訓練短期大学校、技能開発センター及び身体障害者職業訓練校を設置するものとした。なお、職業訓練短期大学校及び技能開発センターについては、現実には従前のとおり国に代わって雇用促進事業団が設置するものであり(Ⅴの三参照)、現在雇用促進事業団が設置している高等職業訓練校は、職業訓練短期大学校又は技能開発センターに転換するものとする(第二のⅡの一参照)。

(二) 都道府県は、職業訓練校を設置するものとするほか、労働大臣の認可を受けて職業訓練短期大学校、技能開発センター又は身体障害者職業訓練校を設置することができるものとした。旧法においては高等職業訓練校の設置については、労働大臣の認可を要することとされていたのであるが、職業訓練校は、認可を要せず設置できることとしたものである。なお、職業訓練校は四の(二)のとおり、普通訓練課程の養成訓練のほか、必要な向上訓練及び能力開発訓練を総合的に実施する機能を果たすべきものであるので、これらの推進について十分配慮されたい。

(三) 従来、公共職業訓練施設間で業務が競合する等の問題を生ずることのあったことにかんがみ、新たに規定を設け、国、都道府県及び市町村は、公共職業訓練施設の設置及び運営について、相互に競合することなくその機能を十分に発揮できるように配慮するものとした。今後、この趣旨を十分ふまえて職業訓練計画の策定等に当たられたい。

六 職業訓練指導員等(第三章第二節関係)

(一) 職業訓練大学校は職業訓練施設と区分して規定することとし、同校は国が設置し、その主たる業務は指導員訓練及び職業訓練に関する調査及び研究を行うものとした。なお、職業訓練大学校は、現実には従来どおり国に代わって雇用促進事業団が設置するものである(Ⅴの三参照)。

(二) 指導員訓練は準則訓練とは区分することとし、これにあわせて、指導員訓練の認定に関しても一般の職業訓練の認定とは区分して規定することとした。

Ⅲ 事業主等の行う職業訓練に対する援助助成等(第三章第三節関係)

今後生涯職業訓練を推進していく上で、事業主等の行う職業訓練の振興を図ることが重要となっていることにかんがみ、新たに節を設け、次のとおり、事業主等の行う職業訓練に対する援助助成等に関する規定の拡充を図った。

一 職業訓練に関する調査研究等(第三〇条の二関係)

事業主等の行う職業訓練の振興と内容の充実を図るため、新たに規定を設け、国は、職業訓練に関する調査及び研究並びに情報の収集及び整理を行い、事業主、労働者等の利用に供するよう努めなければならないものとした。

二 事業主等に対する援助(第三〇条の三関係)

多様な職業訓練の振興とその内容の充実を図る必要があることから、旧法の認定職業訓練に対する援助に関する規定を強化し、国及び都道府県は、認定職業訓練に限らず、その実施が適切であると認められる職業訓練については、広く事業主等に対し、援助を行うように努めなければならないこととした。

三 事業主等に対する助成等(第三〇条の四関係)

事業主等の行う職業訓練に対する助成等は、雇用保険法に基づく能力開発事業として実施されてきたところであるが、今後、事業主等の行う職業訓練の振興を図る上で、総合的な職業訓練施策と直結したものとして実施されることが必要であるため、新たに規定を設け、職業訓練法にその施策を位置づけることとした。なお、具体的な措置は、従前のとおり、雇用保険法の規定により実施されるものである(Ⅴの三参照)が、この規定の創設にあわせ、次の改善が図られたところである。

(一) 職業訓練派遣奨励給付金の支給の対象となる派遣先を認定職業訓練施設に拡大したこと。

(二) 有給教育訓練休暇奨励給付金の支給について中高年労働者に関し優遇措置を講じたこと。

(三) 地域職業訓練センターを設置することができることとしたこと。

(四) 都道府県に対し、離転職者に対する職業訓練の実施の奨励のための措置を講ずることができることとしたこと。

Ⅳ 職業能力開発協会の設立(第六章関係)

旧法においては職業訓練、技能検定関係の団体は、中央においては、職業訓練法人中央会と中央技能検定協会、都道府県においては職業訓練法人連合会と都道府県技能検定協会とされているが、

(一) 今後、生涯職業訓練体制を確立する上で、民間における職業訓練の飛躍的拡充を図る必要があり、そのためには、事業主等が幅広く連携し、自主的かつ積極的に職業訓練を推進する必要があること。

(二) 公共・民間が一体となって職業訓練を推進する上で、国等の施策に呼応し、きめ細かな浸透を図るための強力な民間の指導的団体を育成強化していく必要があること。

(三) 職業訓練の推進と技能の評価は相互に密接な関連のもとに行われるべきであるところから、それらに関する団体は一体であることがより適当なものであること。

等から、上記の団体を中央及び都道府県の職業能力開発協会に統合することとした。

職業能力開発協会の概要は次のとおりであり、これにより、事業主等に対する指導援助機能を強化し、民間における職業訓練推進の中核団体として発展することを期するものである。

一 中央職業能力開発協会(第六章第一節関係)

(一) 中央職業能力開発協会(以下「中央協会」という。)は、職業訓練及び技能検定の基本理念の具現に資するため、都道府県職業能力開発協会の健全な発展を図るとともに、国及び都道府県と密接な連携の下に職業訓練及び技能検定の普及及び振興を図ることを目的として全国を通じて一個設立されるものである。

(二) 中央協会は、旧法において職業訓練法人中央会又は中央技能検定協会が行うこととされていた業務に加え、事業主等の行う職業訓練に従事する者及び都道府県技能検定委員の研修等の業務を行うものである。

(三) 中央協会の会員の資格を有するものは、都道府県職業能力開発協会、全国的な団体及びその他定款で定めるものである。

(四) 中央協会には、役員のほか、中央協会の業務の運営に関する重要な事項に参与させるため、学識経験者のうちから委嘱する参与を置くものである。

(五) 国は、中央協会に対して、必要な助成を行うものである。

二 都道府県職業能力開発協会(第六章第二節関係)

(一) 都道府県職業能力開発協会(以下「都道府県協会」という。)は、職業訓練及び技能検定の基本理念の具現に資するため、都道府県と密接な連携の下に職業訓練及び技能検定の普及及び振興を図ることを目的として都道府県ごとに一個設立されるものである。

(二) 都道府県協会は、旧法において職業訓練法人連合会又は都道府県技能検定協会が行うこととされていた業務に加え、事業主、労働者等に対する相談、指導、援助及び技能労働者に関する情報の提供等、並びに事業主等の行う職業訓練に従事する者の研修等の業務を行うものである。

(三) 都道府県協会の会員の資格を有するものは、都道府県協会の地区内に事務所を有する事業主等で職業訓練を行うもの及びその他定款で定めるものである。

(四) 都道府県協会には、役員のほか、参与を置くものである。

(五) 都道府県は、都道府県協会に対して、必要な助成を行うものとし、この助成を行う都道府県に対して国は補助するものである。

(六) 都道府県協会に関する規定は、明年四月一日から施行されるものである(改正法附則第一条)が、次の点に留意し、迅速かつ円滑にその設立が進められるよう関係団体等に対し適切な指導に当たられたい。

① 都道府県協会の設立については、特に、明年四月一日前においても有効に設立準備行為をすることができるよう法的措置を講じているところであること(改正法附則第四条)。

② 職業訓練法人連合会又は都道府県技能検定協会は、都道府県協会の成立の時に、その一切の権利及び義務を都道府県協会に承継して解散するものとされており(その場合、権利及び義務の承継については総会の特別議決及び都道府県知事の認可の手続を経ることとされ、解散については手続を要せず当然に解散するものとされている。)、また、明年四月一日から起算して二年を経過して、なお、都道府県協会に統合していない場合には、その時に当然に解散するものとされているものであること(改正法附則第八条)。

③ 明年四月一日に現に存する職業訓練法人連合会及び都道府県技能検定協会は、同日から起算して二年を経過するまでの間に限り、都道府県協会に統合しない場合においても、従前どおり法人として活動することができ、中央協会の会員となることとされていること(改正法附則第五条)。

Ⅴ その他

一 単一等級技能検定の導入(第六二条関係)

旧法においては、技能検定は等級に区分して行うこととされているが、技能的職種の中には等級を区分せず単一等級で行うことが適当なものがあることにかんがみ、等級に区分することが適当でない職種については等級に区分しないで技能検定を行うことができるものとした。

二 技能検定委員の地位の法定(第七七条の四及び第九二条の二関係)

技能検定委員の社会的権威を高め、技能検定制度の普及推進を図るため、新たに中央技能検定委員及び都道府県技能検定委員に関する規定を設けた。すなわち、技能検定委員は中央協会又は都道府県協会が一定の要件を備える者のうちから選任するものであり、職業能力開発協会が行うこととされている技能検定試験の実施に係る技術的な事項に関する業務を行わせるものとした。

三 雇用保険法との関係(第九九条の二関係)

昭和五〇年に雇用保険法(昭和四九年法律第一一六号)が施行された後においては、広義における職業訓練に関する国の事業は、雇用促進事業団の設置する職業訓練に関する施設の設置及び運営の事業のように職業訓練法のほか、雇用保険法に基づく能力開発事業としても位置づけられているものもあり、事業主に対する助成等の事業のように職業訓練法には明確に規定がなく能力開発事業として実施されているものもある等、総合的な職業訓練に関する施策の体系が未整備な面があったことにかんがみ、事業主等に対する助成等について職業訓練法の体系を整備したこと(Ⅲ参照)等にあわせ、新たに職業訓練法と雇用保険法との関係についての規定を設け、職業訓練法に基づく施策のうち、国による公共職業訓練施設(身体障害者職業訓練校を除く。)及び職業訓練大学校の設置及び運営、技能検定の実施に要する経費の負担、事業主等に対する援助及び助成等並びに職業能力開発協会に対する助成等は、雇用保険法による能力開発事業としてその財源をもって実施することを明らかにした。

なお、国による公共職業訓練施設(身体障害者職業訓練校を除く。)及び職業訓練大学校の設置及び運営は、この規定により雇用保険法第六三条第三項の規定に基づき、雇用促進事業団が実施することとなるものである。

第二 関係法律の改正

Ⅰ 雇用保険法の改正(改正法附則第一一条)

職業訓練法の公共職業訓練施設に関する規定の改正及び都道府県協会に対する助成に関する規定の創設に伴い、所要の整備をしたほか、能力開発事業のうち、職業訓練派遣奨励給付金の支給の対象となる派遣先を公共職業訓練施設以外にも拡大できるよう規定を改めた。

Ⅱ 雇用促進事業団法の改正(改正法附則第一二条)

一 高等職業訓練校の転換(雇用促進事業団法(昭和三六年法律第一一六号)第一九条、附則第一八条及び第一九条関係)

前述(第一のⅡの五参照)したとおり、職業訓練法において都道府県との業務の分担が明らかにされ、今後、雇用促進事業団は、能力再開発訓練、向上訓練及び専門訓練課程の養成訓練の実施体制を拡充していくこととされたことに対応し、現在設置している高等職業訓練校は、従来実施してきた養成訓練を廃止し、次のとおり、職業訓練短期大学校又は技能開発センターに転換していくこととした。この転換は迅速かつ計画的にすすめる必要があるので、その円滑な転換について協力をお願いする。

(一) 雇用促進事業団の職業訓練に関する業務の基本方向を明らかにするため、雇用促進事業団の業務から高等職業訓練校の設置及び運営に関する事項を削除することとした。

(二) 現在設置している高等職業訓練校については、職業訓練短期大学校又は技能開発センターに転換するまでの間、暫定的に従前のとおり「高等職業訓練校」として運営することができることとした。

(三) 雇用促進事業団は、(二)により暫定的に運営することができることとされた「高等職業訓練校」について、関係地域における雇用及び産業の動向、職業訓練の実施状況その他の事情を考慮しつつ、職業訓練短期大学校又は技能開発センターへ転換させるように努めるものとし、このために必要な措置を講ずるものとした。

二 都道府県知事の要請等(雇用促進事業団法第三五条関係)

改正前の職業訓練法においては、都道府県知事は、雇用促進事業団に対する労働大臣の権限の一部を委任されていたが、職業訓練法における雇用促進事業団に関する規定の整備に伴い、新たに雇用促進事業団法において雇用促進事業団に対する都道府県知事の権限を定めることとした。すなわち、都道府県知事は、当該都道府県の区域内において行われる職業訓練の推進のために必要があるときは、雇用促進事業団に対して、報告を求め、及び必要な要請をすることができることとした。今後とも、この規定の趣旨に沿って、雇用促進事業団の設置する職業訓練施設を含めた都道府県の区域内の総合的な職業訓練の推進に配慮されたい。

Ⅲ その他関係法律の改正(附則第一三条から第二四条まで)

職業訓練法の改正による職業訓練施設の名称の変更、職業能力開発協会の設立に対応して、関係法律について所要の整備を行った。