厚生労働省
平成17年3月28日
担当 雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課
課長  石井 淳子
課長補佐  都築 輝繁
電話03-5253-1111 内線7837、7834
夜間03-3595-3271

「平成16年版 働く女性の実情」


 厚生労働省雇用均等・児童家庭局では、毎年、働く女性に関する動きを取りまとめ、「働く女性の実情」として紹介している。
 今年は、「I 働く女性の状況」において、平成16年を中心に働く女性の実態とその特徴を明らかにし、「II 女性の就業希望実現に向けて」では、様々な角度から女性の就業状況を整理し、諸外国との比較や地域間の比較を通して女性が就業を継続できる条件を探った。



《  概要  》
 当概要版における図表の番号は、白書本体の番号と合わせてあるため、図表番号は必ずしも連番となっていない。


I 働く女性の状況
1 労働力人口、就業者、雇用者の状況
(1) 労働力人口
 平成16年の女性の労働力人口は3年ぶりに増加し(前年差5万人増)、2,737万人(男性3,905万人、前年差29万人減)。女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、48.3%と前年と同じで、男性は、73.4%で7年連続で低下(前年差0.7%ポイント低下)した(付表1、6、8)。
 女性の年齢階級別労働力率は、25〜29歳層(74.0%)と45〜49歳層(73.0%)を左右のピークとし、30〜34歳層(61.4%)をボトムとするM字型カーブを描いているが、前年と比べ労働力率が最も上昇したのはボトムの30〜34歳層であった(1.1%ポイント上昇)。
 平成15年と16年の年齢階級別労働力率の変化について未既婚比率変化と労働力率の変化を要因分解してみると、労働力率が上昇傾向にある25〜29歳層及び30〜34歳層では、他の年齢階級に比べて未既婚比率の要因が3割程度に対して、労働力率自体の変化要因が7割程度あり、双方あいまって労働力率の上昇につながっていることがわかる(図表1-2、1-3)。

(2) 就業者及び完全失業者
 平成16年の女性の就業者数は2,616万人(男性3,713万人)で、2年連続で増加した(19万人増、0.7%増)。15歳以上人口に占める就業者の割合は46.1%となっている。女性の就業者のうち、雇用者は2,203万人(女性の就業者総数に占める割合は84.2%)、家族従業者は232万人(同8.9%)、自営業主は169万人(同6.5%)であった。 平成16年の女性完全失業者数は121万人(前年差14万人減)で、男性(192万人、前年差23万人減)とともに2年連続で減少した。平成16年の女性の完全失業率は前年より0.5%ポイント低下し4.4%であった(男性4.9%)(付表1、6、8)。


付表1、6、8  労働力状態の推移
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」



図表1-2 女性の年齢階級別労働力率
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」



図表1-3 女性の労働力率変化の要因分解
図



(3) 雇用者
 平成16年の女性雇用者数は2,203万人となり、前年に比べ26万人の増加(1.2%増)と2年連続で増加した(昨年は前年比0.7%増)。雇用者総数に占める女性の割合は前年からさらに0.3%ポイント上昇し、41.1%になった(図表1−9)。
 平成16年の女性雇用者数を年齢階級別にみると、最も多いのは25〜29歳層で290万人(女性雇用者総数に占める割合13.2%)で、次いで50〜54歳層の263万人(同11.9%)となっている。
 年齢階級別に女性の当該年齢人口に占める雇用者比率(人口に占める雇用者割合。以下同様。)をみると、労働力率のM字型カーブに似た曲線を描いているが、若年層ほど労働力率との差が小さく、中高年層では若干大きくなっている。10年前と比較すると24歳以下の若年層での低下を除いて、どの年齢階級においても雇用者比率は上昇している(図表1−10)。
 産業別にみると、卸売・小売業が487万人(女性雇用者総数に占める割合22.1%)と最も多く、次いで医療,福祉、製造業、サービス業(他に分類されないもの)が続き、これら4業種で女性雇用者の69.5%を占めている。なお、女性比率(雇用者総数に占める女性の割合)が高い産業は、医療,福祉であった(79.3%)。
 職業別にみると、事務従事者が715万人(女性雇用者総数に占める割合32.5%)と最も多く、専門的・技術的職業従事者、保安・サービス職業従事者が続く。女性比率をみると、専門的・技術的職業従事者で上昇を続けている。
 雇用形態別にみると、常雇(常用雇用)が1,702万人(非農林業女性雇用者総数に占める割合77.8%)、臨時雇が422万人(同19.3%)、日雇が63万人(同2.9%)となり、常雇は前年比1.3%増で2年連続で増加している。
 配偶関係別にみると、有配偶者は1,244万人(非農林業女性雇用者総数に占める割合56.9%)、未婚者は711万人(同32.5%)、死別・離別者は224万人(同10.2%)となっており、有配偶者の占める割合は0.1%ポイント上昇し56.9%であった。
 平成16年のパートタイム労働者を除く女性一般労働者の平均勤続年数は9.0年(男性13.4年)で、前年同であった。
 女性一般労働者を勤続年数階級別にみると、勤続10年以上の者の割合は 35.6%と、前年より0.4%ポイント上昇した。10年前(平成6年27.1%)と比較すると、勤続10年以上の者の割合は8.5%ポイント上昇し、3人に1人以上は10年以上の勤続者となっている(図表1−13)。
 なお、平成16年の女性一般労働者の平均年齢は38.3歳(男性41.3歳)で前年より 0.2歳(同0.1歳)高くなった。10年前と比較すると、2.2歳(同1.3歳)高くなっている。


図表1-9 雇用者数の推移
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」



図表1-10 女性の年齢階級別雇用者比率
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」



図表1-13 勤続年数階級別女性労働者構成比の推移
図
資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(昭和59、平成6、16年)



2 求人・求職状況
 新規学卒及びパートタイムを除く一般労働市場の動きを厚生労働省「職業安定業務統計」によりみると、平成16年の新規求人数(男女計)は、月平均51万8,724人で、前年比15.9%増となった。新規求職者数(男女計)は46万9,237人で、前年比9.6%減(男性8.6%減、女性11.1%減)となった。

3 新規学卒者の就職状況
 高校新卒者の就職状況を厚生労働省「高校新卒者就職内定状況等調査」によりみると、平成16年3月卒業者の就職率は女性が94.9%(前年94.0%)と男性の96.8%(同96.1%)より1.9%ポイント低くなっている。
 次に大学新卒者の就職状況について厚生労働省・文部科学省「大学等卒業予定者就職内定状況等調査」からみると、平成16年3月卒業者の就職率(平成16年4月1日現在)は、女性が93.2%(前年92.2%)と男性の93.0%(同93.2%)と、調査開始(平成8年度)以来初めて男性を上回った。

4 労働条件等の状況
 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、平成16年6月のパートタイム労働者を除く女性一般労働者(平均年齢38.3歳、平均勤続年数9.0年)のきまって支給する現金給与額は、24万1,700円(前年比1.0%増)、うち所定内給与額は22万5,600円(同0.6%増)であり、ともに前年より増加した。年齢階級別にみると、平成16年では女性の賃金のピークの年齢層が35〜39歳層から40〜44歳層に移動した。一方、男性一般労働者の所定内給与額は3年連続で前年を下回った(図表1-14)。
 男女間の賃金格差(男性=100.0とする女性の給与額)は、長期的にはきまって支給する現金給与額でも所定内給与額でも緩やかな縮小傾向が続いており、平成16年には前年に比べて、きまって支給する現金給与額で65.7であり、所定内給与額では67.6とそれぞれ0.8ポイント上昇し格差が縮小した(図表1-15)。
 初任給についての男女間賃金格差をみると、高卒で94.3(同1.0ポイント上昇)、高専・短大卒で96.2(同0.1ポイント低下)、大卒事務系で95.5(同1.4ポイント上昇)、大卒技術系で96.3(同3.8ポイント低下)となっており、高卒及び大卒事務系で格差が縮小した

5 パートタイム労働者の状況
 平成16年の女性の非農林業雇用者2,146万人(休業者を除く)のうち、週間就業時間35時間未満の短時間雇用者数は857万人(前年差4万人減)、週間就業時間35時間以上は1,285万人(前年差34万人増)で、女性雇用者に占める短時間雇用者割合は39.9%(前年差0.8%ポイント低下)となり4年ぶりに低下した(図表1-23)。
 平成16年「賃金構造基本統計調査」により女性パートタイム労働者の賃金をみると、1時間当たりの所定内給与額は904円で、前年に比べ11円増加している。
 女性の一般労働者の所定内給与額を時給換算したものを100とした場合、女性のパートタイム労働者は65.7で前年同であった(図表1-24)。


図表1-14 一般労働者の賃金実態
図
資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成16年)
(注)( )内は前年の数値である。



図表1-15 所定内給与額と男女間賃金格差の推移
図
資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」



図表1-23 短時間雇用者数及び構成比の推移〜非農林業〜
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」
(注) 休業者を除く雇用者であり、週間就業時間35時間未満
の者を短時間雇用者とした。



図表1-24 女性パートタイム労働者と女性一般労働者の賃金格差の推移
図
資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
注) 一般労働者の1時間当たりの所定内給与額は次の式により算出した。
1時間当たりの所定内給与額=所定内給与額÷所定内実労働時間数



II 女性の就業希望実現に向けて
 わが国の女性の典型的な就労パターンは、結婚や出産を機にいったん労働市場から離脱するというものであるため、年齢階級別労働力率は30〜34歳台をボトムとするM字型カーブを描いている。M字型カーブの底はなだらかになってきてはいるが、他の先進諸国と比べM字型の形状が際だっている状況は変わらない。しかし、女性の就業希望は育児期も含めかなり高い。女性の潜在的な就業希望を実現し、継続して就業を続けられるようにするためには、仕事と家庭を両立しやすい環境と、職場における男女の均等な機会および待遇の確保の両面がともに重要と考えられる。
 第II部では、年齢、配偶関係等様々な角度から女性の就業状況を整理するとともに、諸外国との比較や地域間の比較を通して女性が就業を継続できる条件を探っていく。

1 女性の労働力率の特徴と推移
(1)日本の女性の労働力率の特徴
(我が国の女性労働力率はバブル崩壊以降停滞)
 日本の女性の労働力率は国際婦人年である1975年以降1992年までは緩やかな上昇が続いたが、近年は停滞し下落傾向にある(図表2-1)。
 1970年代初頃には日本の女性の労働力率はドイツ、フランス、イタリア等を上回っていたが、2003年になると日本はイタリアに比べ高いもののドイツ、フランス、韓国をやや下回っている。

(我が国の年齢階級別労働力率は依然M字型)
 女性の年齢階級別労働力率の推移を諸外国と比較すると、日本と韓国は現在でもM字型カーブを描いているが、それ以外の欧米諸国はいずれも概ね台形を描いている(図表2-2、2-3)。

(高学歴の女性の労働力率が低い日本)
 図表2-4は、25〜64歳層の女性の労働力率を学歴別に比較したものである。いずれも学歴が高いほど労働力率の水準は高く、ここで取り上げた日本以外の国においては大学、大学院卒の女性の労働力率は8割を超えている。


図表2-1 日本と諸外国の女性の労働力率の推移
(1)女性の労働力率の推移(国際比較)
図
(2)15歳以上及び15〜64歳の女性の労働力率
図
  資料出所:ILO“LABORSTA”、総務省統計局
「労働力調査」
  (注)オランダ1977,79年は14〜64歳
アメリカ1970,82-94年は15歳以上、1975〜82,
95年以降は16歳以上。
その他の国15歳以上。



図表2-2 女性の年齢階級別労働力率の国際比較
図
資料出所:ILO“LABORSTA”、
総務省統計局「労働力調査」
(注) アメリカ、スウェーデンの、「15〜19歳」の欄は、「16〜19歳」である。



図表2-4 女性の学歴別労働力率の国際比較(25〜64歳)
図
資料出所:OECD“Education at a Glance 2004”
(注) 2002年の数値である。



図表2-3 女性の年齢階級別労働力率の推移(オランダ、イギリス)
図
資料出所:
  ILO“LABORSTA”



(2)日本の女性の労働力率の推移
(1)年齢階級別労働力率の推移
(女性の25-54歳の労働力率はなお上昇傾向、雇用者比率は各年齢層とも上昇)
 25〜54歳(注)の女性の労働力率は、現在まで上昇傾向で推移している。(注:OECDの国際ベンチマークにおいては生産年齢人口を25歳未満、25〜54歳、55〜64歳に分け、そのうち25〜54歳をプライムエイジとしている(OECD“Employment Out Look 2003”))
 女性の労働力率を各年齢層ごとにみると、「25〜29歳層」及び「30〜34歳層(M字の底)」は大きく上昇、35歳以上の各年齢層で労働力率は近年横ばいとなっている(図表2-6)。 女性の雇用者比率(人口に占める雇用者割合。以下同様。)をみると、25歳以上のいずれの年齢層でも一貫して上昇しており、「雇用」という就業形態の比重が高まっている。

(M字型カーブと育児休業)
 1975年以降女性の年齢階級別労働力率のM字カーブの底は大きく上昇し、1979(昭和54)年には25〜29歳層から30〜34歳層へとシフトした(図表2-8)。
 現状では労働力人口に含まれていない育児休業取得者数を推計し、これを労働力人口に加えた労働力率を試算してみると年齢計で48.5%(平成15年)となり48.3%から0.2%ポイント上昇する。また、年齢階級別にみると、25〜39歳の各年齢層で上昇する(図表2-9)。

(上昇が続く25〜29歳層の有配偶女性の労働力率)
 女性の年齢階級別労働力率の推移を未婚者と有配偶者の別にみると、近年の変化の特徴として(1)未婚者の労働力率は25〜44歳の年齢層で概ね上昇していること、(2)有配偶者の労働力率は25〜29歳層及び40〜54歳層で大きく上昇していること、(3)有配偶者比率は40歳台前半層まで各年齢階級で低下し、特に25〜29歳層で低下幅が大きいこと、があげられる。
 年齢階級別労働力率の変化を未既婚比率変化要因と労働力率変化要因に分解すると、この10年間については25〜34歳では、7〜8割は未婚率の上昇により説明できるが、残りの要因は、未婚者や既婚者の労働力率が上昇していることにより説明される(図表2-11)。

(2)学歴別有業率の推移
(短大・大学・大学院卒の女性の有業率は上昇傾向)
 高卒の女性の有業率は平成4年をピークに反転し、低下傾向にある中で、短大・大学・大学院卒者(以下、「大卒者等」という。)については緩やかな上昇傾向にある。しかし、年齢階級別でみると、大卒者等、特に大学・大学院卒はM字の底の後の40歳以上の年齢層において、高卒者ほどの上昇はみられない(図表2-13)。年齢階級、学歴及び配偶者の有無別の有業率をみると、大卒者等は配偶者がある者の、特に35歳以上での有業率が他の学歴に比べ低くなっている(図表2-15)。しかし、平成4年と9年を比較すると、40歳台で有業率が高まるという変化もみられる。


図表2-6 女性の年齢階級別労働力率の推移
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」



図表2-8 女性の年齢階級別労働力率の推移(2)
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」



図表2-9 育児休業者を含めた場合の年齢階級別労働力率
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」(平成16年)、厚生労働省「出生前後の就業変化に関する統計」(平成15年)、「人口動態統計」(平成13年)、「女性雇用管理基本調査」(平成14年)より雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課において試算
(算出方法)「出生前後の就業変化に関する統計」における「就業継続型」の母の年齢別構成割合、育児休業取得率、出生数により育児休業取得者数を推計。



図表2-11 女性の年齢階級別労働力率変化の要因分解
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査」より試算



図表2-13 女性の年齢階級別学歴別有業率
図
資料出所: 総務省統計局 「就業構造基本調査」



図表2-15 学歴別年齢階級別有業率(配偶者ありの女性)
図
資料出所: 総務省統計局 「就業構造基本調査」 (平成9年)



(3)地域別にみた女性の就業の状況
(1)都道府県別の有業率
(都市部の有業率は低く、M字の谷も深い。また、通勤時間が長いほど有業率は低い)
 つぎに、都道府県別に女性の有業率の状況をみると、25〜54歳層の女性の有業率が高い県は、福井、石川、山形、島根、富山など北陸、山陰、東北地方の県に集中している。そして、これら有業率の高い県はM字の谷も浅い。また、神奈川、千葉、埼玉など政令指定都市を抱える人口が集中している都市部圏では有業率は相対的に低く、M字の谷も深い。都道府県別に女性の有業率と谷の深さ(年齢階級別有業率の左肩のピークと有業率のボトムとの差)をプロットすると、右肩下がりに分布し、有業率のM字の谷の深さが女性の有業率の低さに関係していることがみてとれる(図表2-17)。
 また、都道府県別に有配偶女性の通勤時間と有業率の関係をみると、概ね政令指定都市を抱える都道府県で通勤時間が長く、有業率が低いという傾向がみられる(図表2-19)。

(3)政令指定都市及び特別区の状況
(有業率と末子が6歳未満の核家族世帯の妻の有業率がともに高い福岡市と広島市)
 政令指定都市及び特別区について女性労働者の就業状況を相互に比較すると、25〜54歳の女性の有業率は、特別区以外は全国平均を下回っており水準が高い順に特別区、福岡市、広島市、次いで仙台市、北九州市となっている(図表2-21)。
 年齢階級別有業率の形状をみると、特別区ではM字のボトムの水準が高く、その形状は比較的緩やかであるが、その周辺に位置する千葉市、川崎市、横浜市や北九州市ではM字のボトムが深くなっている。
 福岡市、仙台市ではM字のボトムの水準はあまり高くないにもかかわらず、40歳以降の有業率が比較的高いことにより有業率(25〜54歳)の水準が比較的高くなっている。特別区、広島市、福岡市では末子が6歳未満の核家族世帯の妻の有業率が高くなっている(図表2-21、23)。
 福岡市では、有配偶者の比率は低いものの、世帯に占める6歳未満の子のいる割合、6歳未満の子がいる女性の有業率も比較的高く、40歳以降で有業率が高くなっている。
 広島市では有配偶者の比率が横浜市、千葉市に次いで高く、世帯に占める6歳未満の子のいる割合、核家族世帯で6歳未満の子がいる女性の有業率はともにトップである。このことは、広島市では政令指定都市及び特別区の中では結婚をし、子供を産み、かつ子どもが6歳未満であっても働ける状況が最も整っているとみられる(図表2-22、23)。


図表2-17 都道府県別25〜54歳層の女性の有業率とM字の谷の深さ
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-19 有配偶女性の通勤時間と有業率の関係
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)、「社会生活基本調査」(平成13年)



図表2-21 政令指定都市、特別区の女性の有業率
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-22 政令指定都市、特別区の女性の有配偶率
図
資料出所:「国勢調査」(平成12年)



図表2-23 政令指定都市、特別区における6歳未満の子のいる世帯の状況
図
資料出所: 総務省統計局 「就業構造基本調査」 (平成14年)



2 日本の女性の就業希望とM字型カーブ
(1)女性の就業希望の推移
(出産・育児期の女性の就業希望実現者割合は上昇傾向)
 女性の有業率(15歳以上)は、昭和49年の44.0%から平成4年の51.0%へ上昇した後低下し、平成14年には47.9%となっている。また、「有業者」と「無業者」のうち就業を希望している者の合計に占める有業者の割合(以下「就業希望実現者割合」という。)は、昭和52年(69.8%)以降上昇傾向にあり平成4年には79.1%と8割近くなったがその後低下している(図表2-24)。
 このうち、出産・育児期にあたる25〜34歳層について推移をみると、有業率、就業希望実現者割合ともに昭和49年をボトムとして上昇が続いているが、就業希望者割合も引き続き上昇基調にある(図表2-26)。

(M字の底にあたる第二次ベビーブーム世代)
 30歳台はM字の底にあたり、無業者割合及び就業希望者割合が高い水準にある。同時に、現在30〜34歳となっている年代は第二次ベビーブーム世代にあたり、世代別の人口層として大きなシェアを占めている。
 仮に現在のM字型カーブと就業希望者割合が現在と同じ水準であったとし、こうした年齢別人口数の変化を織り込んで改めて確保されうる女性の労働力人口を試算してみると、それが5年先であれば794万人、10年先であれば760万人となる。もとより世代としての就業希望者割合は世代の意識に規定されるところが大きいとも考えられるが、後になればなるほど確保しうる労働力人口数が減少してしまう点にも留意しておくべきであろう。

(都市部を抱える都道府県での就業希望実現者割合は低い)
 就業希望実現者割合は、政令指定都市を抱える都道府県ほど低い(図表2-27)。
 また、政令指定都市の25〜54歳の女性の就業希望実現者割合は全国平均を下回っており、名古屋市、広島市の順となり、神戸市、横浜市、札幌市、川崎市などがこれに続いて水準が低い(図表2-28)。
 政令指定都市及び特別区を抱える都道府県は日本全国の女性の人口の58%を占めており、政令指定都市及び特別区だけで23%を占めている。そして、政令指定都市及び特別区を抱える地域では就業希望実現者割合が低い。仮にこれらの地域で就業希望実現者割合(年齢計)が全国で最も高い福井県並み(84.0%)になると、それぞれ特別区と政令指定都市を抱える都道府県で187万人、特別区と政令指定都市で75万人の労働力が確保され、100%希望が実現すればそれぞれ514万人、206万人になる。
 このように、労働力の確保という観点からは、現状では有業率や就業希望実現者割合が概して低い人口が集中しているこれら都市部における女性の就業継続や再就職の動向が全体に与える影響は大きい。


図表2-24 男女の有業率等の推移
図



図表2-26 25-34才層有業率の推移
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-27 都道府県別25〜54歳層女性の有業率と就業希望実現者割合
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)
(注) 有業率が高い順に都道府県を並べたものである。



図表2-28 政令指定都市、特別区の25〜54歳女性の就業希望実現者割合
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



(2)女性の就業希望者の状況
(育児を理由とする離職者の就業希望者割合は高い)
 結婚を理由とする離職者のうち、就業を希望する者の割合は51.8%であるが、育児を理由とする離職者については62.4%と10%ポイント以上高い。離職期間別にみても、育児を理由とする離職者の就業希望者割合は離職期間が長くなってもあまり低下せず、結婚を理由とする離職者より就業希望が高い水準を維持している(図表2-29)。

(子のいる妻の就業希望者割合は高い)
 無業の妻について、子の有無別に就業希望者割合をみると、「夫婦のみ」や「夫婦と親」のように子のいない世帯の妻よりも、「夫婦と子ども」や「夫婦と子どもと親」のように子のいる世帯の妻の就業希望者割合の方が高く、子のいる世帯の妻の方が就業希望が満たされていないことがわかる(図表2-30)。

(子の成長段階により異なる希望する就業形態)
 (株)アイデムが実施した「パート・アルバイト就業実態調査」によれば、末子が小学校に入学するまでは短時間勤務や在宅就業で働くことを希望する者が多いが、中学校に進学後は「責任ある仕事」や「フルタイム」の仕事に就くことを希望する者があわせて7割に達する(図表2-31)。

(高卒、短大卒に比べ大卒では正社員での就業を希望する者が多い)
 学歴別にも女性の無業者の希望する就業形態には違いがある。パート・アルバイト・契約社員を希望する者はどの学歴でも高く、一方、正社員(勤め先での呼称が正規の職員、従業員である者。以下同じ。)を希望する者の割合は大卒で25.4%、短大・高専卒で18.5%、高卒で14.7%となっており、大卒者は4人に1人が正社員での就業を希望している(図表2-32)。


図表2-29 離職期間別妻の就業希望者割合(昭和48年以降前職を辞め、現在無業の妻)
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-30 世帯類型別無業の妻の就業希望者割合
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-31 末子の年齢別主婦の働き方の希望
図
資料出所:(株)アイデム「パート・アルバイト就業実態調査」(平成12年)
(注) 末子が3歳以下の主婦パートタイマー、専業主婦に対し、インターネットを
通じて行ったアンケート調査への回答結果である。



図表2-32 年齢階級別無業者の希望する就業形態(女性)
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



(3)女性の就業実態
  (1)就業と雇用形態
(進む雇用形態の多様化と女性の就労パターン)
 女性は既婚者、未婚者ともに雇用者が増加しているが、雇用形態は多様化が進展している。かつてはパートタイム労働者は中高年層すなわちM字の右肩に多かったが、近年では若年層においてもその割合が上昇している。このことは正社員で働いたことのない女性労働者が若い世代に登場しつつあることを意味するものである(図表2-33)。
 これまでは正社員で就職し、結婚、育児等を機に離職し、子育てから手が離れてからはパートタイム労働で再就職というパターンが典型とみられてきたが、今後は必ずしもそのようなパターンでは捉えられなくなるとみられる。

  (2)既婚女性や子を持つ女性の雇用の状況
(子を持つ女性の雇用者比率は上昇傾向)
 母親のうち就業者である者の割合は平成10年以降は低下傾向にあるが、母親の雇用者比率(子のいる世帯に占める妻が雇用者である割合。以下、2(3)(2)において同じ。)についてみると、上昇傾向にある。そして、就業時間別には35時間以上の雇用者の割合は2割前後で推移し、やや減少傾向にあるのに対し、35時間未満の者の割合は上昇傾向にあり、平成9年以降35時間以上を上回っている(図表2-34)。
 これを末子の年齢が6歳未満である母親についてみると、雇用者比率は大きく上昇、35時間以上については緩やかな低下傾向にある。このように、子が小さい母親は短い就業時間数で勤務する者が増えることで雇用者比率の上昇が支えられた形となっている。

(子どもの数が多いほど妻の雇用者比率は高い)
 女性の有配偶者すなわち妻である者について子どもの有無別に雇用者比率をみると、子あり44.9%、子なし31.1%と子を有する妻の方が高い。また、子どもの数別にみると、子どもが1人よりもむしろ子どもの数が多い方が妻の雇用者比率は高い(図表2-37)。


図表2-33 雇用形態の内訳別年齢階級別雇用者比率(女性)
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」



図表2-34 母の就業状態別割合(子のいる世帯に占める割合)の推移
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査特別調査」(昭和61年〜平成13年)、「労働力調査詳細集計」(平成14年〜)



図表2-37 子の有無、子の数、就業時間別妻の雇用者比率
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査詳細集計」(平成16年)



(3)正社員の継続就業の状況
(ア)勤続年数と継続就業の状況
(女性の平均勤続年数は伸び、男性との格差は縮小傾向)
 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、女性正社員の平均勤続年数は伸長化傾向が続き、男性正社員との格差も縮小している。
 正社員の産業別、規模別状況を総務省統計局「就業構造基本調査」の平均継続就業期間でみると、男女の差が小さいのは不動産業、飲食店・宿泊業等、大きいのは金融・保険業、電気・ガス・熱供給・水道業等である。また、規模別には、規模が大きいほど平均継続就業期間の男女間格差は拡大している。

(新規学卒者では継続就業者割合は緩やかに上昇)
 新規学卒者の継続就業者割合はいずれの学歴についても緩やかな上昇傾向がみられる。すなわち、これは若い年齢層ほど就業継続するようになってきていることを意味する。大卒者についても、平成4年及び平成5年入社の者の継続就業者割合は若干低下したが、若い年齢層ほど継続就業をする者の割合が上昇する傾向がある。(図表2-39)。

(イ)出産、育児と継続就業
(正社員の結婚、育児)
 総務省統計局「労働力調査詳細集計」によれば、女性正社員(勤め先での呼称が正規の職員・従業員である者。官公を含む。)に占める有配偶者の割合は平成9年までは低下傾向にあったがそれ以降は必ずしも低下傾向にはなく、むしろやや持ち直しから上昇の動きもみられる(図表2-40)。
 つぎに、総務省統計局「就業構造基本調査」によれば、正社員である妻の人数は平成9年から14年にかけて減少し、また、そのうち子どもがいる者の人数も減少し、正社員のうち子がいる者の割合も低下している。しかし、子どもが6歳未満の正社員の妻の数は増加しており、正社員である妻に占める割合も平成4年の14.5%や平成9年の13.5%を上回る16.7%となっている(図表2-41)。
 なお、正社員として働く女性の数は減少傾向にあるが、平成13年以降、500人以上規模事業所で女性比率が若干上昇の動きがみられ、1〜29人規模事業所においても平成14年以降上昇している。

(4)非正規の継続就業の状況 (非正規の同一企業での継続就業は進んでいない)
 総務省統計局「就業構造基本調査」によればパート・アルバイトで働く女性で継続就業期間5年以上の者の割合は平成4年の45.2%から平成14年の34.6%へと10.6%ポイント低下し、その一方で継続就業期間1年未満が12.5%から24.8%へ、継続就業期間が1〜2年の者が18.6%から25.9%へと上昇しており、パート・アルバイトで働く女性の同一企業での継続就業は必ずしも進展していない(図表2-43)。
 なお、実数ベースでは、5年以上継続就業しているものも含めて増加している。


図表2-39 20歳台前半の者の10年後の継続就業者の割合(女性)
図
資料出所:厚生労働省 「賃金構造基本統計調査」から推計



図表2-40 女性正社員、女性の有配偶正社員の状況
図
資料出所:総務省統計局「労働力調査特別調査」(昭和61年〜平成13年)、「労働力調査詳細集計」(平成14年〜)



図表2-41 正社員である妻の状況の推移
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」 (平成4、9、14年)



図表2-43 女性のパート・アルバイトの就業継続期間別雇用者比率
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」 (平成4、9、14年)



(5)就業意欲と継続就業
(結婚、出産前の就業意欲はその後の就業継続への影響は大きい)
 厚生労働省「第2回21世紀成年者縦断調査」(平成15年)によれば、結婚後も継続就業している者は転職者も含め6割以上となっている(図表2-44)。
 また、「結婚後の就業継続意欲」別にみると、「結婚した後も続ける」意欲があった者の継続就業(転職を含む)している者の割合は73.7%で、「結婚を機にやめる」と考えていた者の割合(39.7%)を34.0%ポイントも上回っている(図表2-45)。
 さらに、「出産後の就業継続意欲」別にみると、「出産した後も続ける」意欲があった者の「同一就業継続」者割合は78.9%と高い。

(6)継続就業を可能にする条件
(両立支援と均等がともに重要)
 (財)21世紀職業財団が実施した「女性労働者の処遇等に関する調査」によれば、働き続けるために会社に希望することとしては育児・介護の労働時間の配慮が35.2%、男女均等待遇32.0%と仕事と家庭の両立支援に関する事項と均等な機会や待遇に関する事項がいずれも高い割合を示しており、中でも仕事と家庭の両立施策として労働時間面の配慮がとりわけ期待されていることがわかる(図表2-47)。
 また、シティリビング(サンケイリビング新聞社シティ事業本部)が都内のOLに対して実施したアンケート調査結果によれば、均等処遇に係る項目については、総合職よりも一般職の女性の方が高い割合を示している。

(男女の均等待遇についての認識に男女格差)
 労働政策研究・研修機構が行った「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」によれば、「自分が重視する労働条件」のうち、男女で重視する程度の差が大きい条件は「育児・介護を行う従業員に対する積極的支援」、「男女の均等待遇を重視」等であり、「男女の均等待遇を重視」については女性正社員(31.9%)の方が女性パート(15.7%)よりも高くなっている(図表2-49)。

(結婚・出産期の転職率は上昇)
 労働政策研究・研修機構が行った「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」によれば、「会社や就業形態を変わりたい」としているのは女性正社員では33.8%、女性のパートでは30.1%となっているが、その理由をみると、女性正社員では「家庭生活や他の活動と両立しやすい仕事につきたい」が最も多く35.6%であった。一方パートタイムでは、「賃金が低い」が最も高く50.8%であり、これに次いで多いのが「安定した仕事につきたい」で27.5%となっている(図表2-54)。


図表2-44 結婚後の就業継続の状況
図



図表2-45 結婚後の就業意欲別継続就業者割合
図
資料出所:厚生労働省「第2回21世紀成年者縦断調査」(平成15年)



図表2-47 継続就業のために会社に希望すること(複数回答)
図
資料出所:(財)21世紀職業財団「女性労働者の 処遇等に関する調査」(平成16年)



図表2-49 「自分が重視する労働条件」(3つまでの複数回答)
図
資料出所:労働政策研究・研修機構「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」(平成15年)



図表2-54 会社や就業形態を変わりたい理由(3つまでの複数回答)
図
資料出所:労働政策研究・研修機構「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」(平成15年)



(7)女性の再就職の状況
(低い30歳台女性の再就職率)
 厚生労働省職業安定業務統計により、女性の就職率(有効求職者数に占める就職件数の割合)をみると、平成5年度ではフルタイム4.3%、パートタイム9.1%であったものが平成15年度ではフルタイム4.4%、パートタイム12.0%となっており、パートタイムの就職率が大きく上昇している。年齢階級別にみると、フルタイムもパートタイムも、25〜29歳ないし30〜34歳層で低く、その後40〜44歳層までは上昇するが、いずれの年齢層もパートタイムの方が高い(図表2-56)。これを10年前と比較すると、パートタイムの就職率はいずれの年齢層でも改善されているものの、35歳以上層についてのフルタイムの就職環境は、男性と同様改善がみられていない。
 さらに、平成10年に日本労働研究機構が行った求職者調査によると、女性の再就職者割合(求職者のうち再就職者の割合)は61.4%と男性61.3%とほぼ同じであるが、これを年齢階級別にみると、先ほどの職業安定業務統計における就職率同様女性の再就職率は30歳台が低いという、男性にはみられない特徴があり、この年齢層は失業期間が長期に渡る者の割合も高い(図表2-57、58)。

(「正社員としての採用」にこだわった再就職女性は32.2%))
 再就職者が再就職活動中にこだわった条件が、「正社員としての採用」であった者の割合をみると、女性は32.2%と男性(28.0%)と比べやや高い。また、再就職のために「正社員としての採用」という条件を下げたかどうかについてみると、再就職の場合、女性は21.1%、男性は7.4%の者が同条件を下げており、女性は「仕事の内容・職種」、「労働時間・休日」を優先させた結果ともみられる(図表2-61)。

(結婚、育児のために離職した女性の再就職は3年以内が約5割)
 女性の転職就業者全体の中では9割近くが離職期間3年以下となっているが、前職の離職理由が「結婚のため」、「育児のため」であった者についてみると、離職期間が1年未満の者はをれぞれ25.4%、13.3%、1〜3年の者が23.8%、34.3%で、離職期間3年以下の者の割合は約5割となっている(図表2-63)このように、離職理由が「結婚」、「育児」の者についてはやや離職期間が長い傾向にある。

(「育児」より「結婚」のための転職就業者が多い正社員) 転職就業者(5年前以降前職を離職した有業者)の転職理由をみると、「労働条件が悪かった」とする者の割合が最も高く12.1%、「結婚」とする者の割合は4.3%、「育児」とする者の割合は3.4%となっている。「結婚」は低下傾向、「育児」は平成9年以降以前より高い値を示している。
 さらに、これを前職の雇用形態別にみると、いずれも正社員で最も高くなっている(図表2-65)。


図表2-56 年齢階級別有効有職者に占める求職者割合の推移
図
資料出所:厚生労働省職業安定局業務統計報告



図表2-57 男女年齢階級別再就職率
図
資料出所:日本労働研究機構「求職者調査」1998年9月〜1999年5月
(注)(1)調査期間中全国の公共職業安定所18所に来所した求職者に
対して行ったアンケートである。
(2)再就職率とは、求職者に占める再就職者の割合である。



図表2-58 失業期間別再就職者割合
図



図表2-61 再就職者が再就職のために下げた条件(複数回答)
図
資料出所:日本労働研究機構「求職者調査」1998年9月〜1999年5月



図表2-63 女性の転職就業者割合(うち、前職離職後3年以内に再就職した者の割合)
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-65 前職の雇用形態別「結婚」、「育児」により転職した女性の割合
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



(「育児」により離職した者で正社員として再就職している者は少ない)
 前職が正規であった転職者は29.1%が正規で、70.9%が非正規として就業している(図表2-67)。
 これを、前職の離職理由が「結婚」、「育児」である者についてみると、正規に就業している者の割合はそれぞれ12.2%、9.2%と離職理由計よりいずれも低く、特に、「育児」により前職を離職した者の割合が低い。
 さらに、離職期間が長くなるほど正規の間で転職した者の割合は低くなる。
 以上から、家庭生活や他の活動と両立しやすい仕事への転職を希望する女性は相当数いるとみられるものの、実際に正規としての再就職を希望しても容易ではなく、育児を理由に離職した女性は、転職できるまでの期間も長期にわたっている状況がうかがえる。

(女性有業率の高い地域は正社員として再就職する者が多い)
 年齢階級別に女性の正社員が人口に占める割合を25〜54歳の女性の有業率の高い県及び政令指定都市・特別区間で比較すると、政令指定都市・特別区においては年齢が高くなるにつれ、正社員比率は低くなっているが、25〜54歳の女性の有業率の高い県では、正社員比率は総じて高く、特に40歳台で再び上昇する県もみられる(図表2-68)。
 40歳台で正社員比率が上昇するということは正社員という雇用形態で再就職していることを示すものであることから、これらの政令指定都市・特別区と有業率上位10県の間の正社員の職業別構成比を比較してみると、正社員比率が低下し続ける政令指定都市・特別区では、事務職の割合が高く、有業率上位10県では生産工程・労務作業者の割合が高い、という違いがみられる(図表2-69)。
 このことから、工場進出等により正社員での雇用機会が得られるということも考えられるところであるが、派遣やパートが増えている事務職では正社員としての再就職は困難が伴うことをもうかがわせるところである。


図表2-67 前職の離職理由、雇用形態の異動区分、離職期間別転職就業者割合
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-68 女性年齢階級別正社員比率(有業者に占める割合)
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



図表2-69 女性職業別有業者割合の比較
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(平成14年)



3 諸外国の女性の就業状況との比較
(1)諸外国の女性の育児期に着目した就業状況
(アメリカ、イギリスでは既婚女性の就業者比率は高い)
 アメリカ、イギリスの未既婚別就業率をみると、我が国とは異なり既婚女性の就業率は高い(図表2-70)。

(6歳未満の子を持つ母親の就業率が高いのはスウェーデン、アメリカ等)
 OECDのEmployment Outlookにより6歳未満の子を持つ母親の就業率の10年間の変化をみると、多くの国では母親の就業率が上昇している(図表2-71)。特に大きく上昇しているのがオランダ、イギリス、アメリカであった。
 一方、スウェーデンでは高水準ながらもこの中では唯一低下している。日本は若干上昇したものの、水準が低い上に上昇幅もわずかとなっている。この結果、最近時点ではかつては日本より水準が低かったオランダを下回り、イタリアの水準を下回ったままとなっている。

(子が多い母親の方が就業率が高いスウェーデンと日本)
 子の人数別に女性の就業率を国際比較すると多くの国において子がいる母親の就業率は子がいない女性の就業率よりも低く、子の数が1人よりも2人の方が低くなっているが、スウェーデンについてはそもそも子がいるかいないかに関わらず母親の就業率は高い上に子の有無や子の人数別の差は小さく、むしろ子が1人の母親よりも子が2人以上の母親の方が高くなっている。我が国の子が1人以上いる妻の就業率はイタリア以外の国を下回っているが、子が2人以上いる妻の就業率に限ってみれば、イタリアの他ドイツを上回っている(図表2-72)。一方、子の数が1人と2人以上とを比べて母親の就業率が大きく低下するのがフランス(15.3%ポイント)、ドイツ(14.1%ポイント)等となっている。

(母親の就業形態)
 図表2-73によれば各国共通にみられる特徴として子がいない女性よりも、子がいる母親、そして子が1人の母親よりも子が2人以上の母親の方がパートタイム比率が高くなっている。しかし、アメリカ、スウェーデンやフランス、イタリアでは相対的にパートタイム比率は低く、逆にイギリス、ドイツ、オランダや日本は高い。
 なお、イギリスやドイツでは子が1人から2人以上になると更にパートタイム比率が我が国と比べても大幅に上昇している。

(希望する就業形態にも国により違い)
 EUのアンケート調査をもとにOECDが取りまとめた資料によれば、スウェーデン、フランス等では「夫も妻もフルタイム」を希望する者の割合が高く、実際にそのような働き方をする者の割合も高いが、イギリス、オランダでは「夫も妻もフルタイム」を希望する者の割合は相対的に低く、「夫はフルタイム、妻はパートタイム」を希望する者の割合が相対的に高くなっているという特徴がある(図表2-74)。

 以上を集約すれば、先進諸国の多くで出産・育児期における女性の労働力率や就業率は上昇してきているが、子育て期の女性の働き方は一様ではない。


図表2-70 未既婚別就業率の日米英比較
図
資料出所:(1)日本 総務省統計局「労働力調査」(2004年)、
(2)イギリス Department for Work and Pensions“Trend in female employment 2002”、
(3)アメリカ Department of Labour“Women in the labour force 2004”



図表2-71 6歳未満の子を持つ母の就業率の国際比較
図
資料出所:(1)日本 総務省統計局「労働力調査詳細集計」、
(2)諸外国 OECD“Employment Outlook 2001”
(注)(1)*の国は必ずしも1989年と1999年の数値ではない。
(2)日本は25〜54歳の世帯の妻、その他の国は25〜54歳の女性が対象である。



図表2-72 子の人数別女性の就業率の国際比較
図



図表2-73 子の人数別女性のパートタイム比率の国際比較
図
資料出所:(1)日本 総務省統計局「労働力調査詳細集計」(2004年)、
(2)諸外国 OECD“Employment Outlook 2002”
(注)(1)日本は2004年、アメリカは1999年、その他の国は2000年の数値である。
(2)日本は25〜54歳の世帯の妻、その他の国は25〜54歳の女性が対象で、
15歳未満の子について調査したものである。



図表2-74 6歳未満の子を持つ夫婦の働き方のパターンの現実と希望の国際比較
図
資料出所:OECD“Employment Outlook 2001”、総務省統計局「労働力調査」(平成16年)
(注) 日本は2004年、他は1998年の数値である。なお、日本のパートタイムは30時間未満として算出した数値である。



(スウェーデンの母親の就業率の高さは休業により底上げ)
 フランスで母親がフルタイムで就業していることの背景には労働時間の短さ、特に法定労働時間は2002年に一部緩和がなされたとはいえ週あたり35時間であり、また、時間外労働についてもかなり厳しい規制が設けられていることが背景にあると見られる。
 スウェーデンにおいては近年フルタイムの女性労働者が増加傾向にある。週35時間以上就業者(休業者を含む)の割合は上昇傾向にあり、2003年には66.1%となっている。
 そして、スウェーデンにおいてもフランス同様、労働時間は日本に比べ短く、保育施設が充実していることがつとに指摘されてきたところである。また、スウェーデンにおいては就業者に含まれる休業者数が男女とも多く、休業率は女性15.0%、男性10.4%となっている。そこで失業者と休業者を除く従業者割合でみるとスウェーデン、日本はそれぞれ57.8%、56.4%とその差は1.4%ポイントと労働力率の差(16.0%ポイント)と比べて大きく縮小する(図表2-76)。さらにこれを年齢階級別にみると、労働力率のそれに比べ15%ポイント以上低い山形を描き、20〜24歳層及び25〜34歳層では日本を下回っている(図表2-77)。
 なお、スウェーデンで多い休業者の内訳をみると、7歳未満の子のいる女性では58.9%が「育児・介護」とされている。このことから、スウェーデンにおいては育児などにより休業し、実際には働いていないものの、就業者にカウントされているため元々の就業形態がフルタイム労働の場合、フルタイム労働で勤務していることとして統計上現れている側面もあるとみられる(図表2-78)。

(管理職の女性比率が大きく上昇したイギリス)
 イギリスにおいて、18歳以下の子を有する女性がパートタイムで働く理由をみると95%が「フルタイムで働きたくない」を理由にあげている。
 また、出産休暇を取得した働く母親の68%が「時間短縮やパートタイム労働者で元の仕事に復帰できる」制度があるとし、実際、制度があるとする者のうち69%が利用している(図表2-80)。
 25〜34歳の女性労働力率と女性パートタイム比率との関係の推移をみると、イギリスでは労働力率の上昇とパートタイム比率の低下が同時進行している(図表2-81)。
 さらに、フルタイムとパートタイムの賃金格差と25〜34歳層の労働力率の関係をみると、イギリスについては賃金格差の縮小傾向が確認できず、かつ、賃金格差の変動と労働力率との間にも明確な関係は認められなかった(図表2-82)。
 なお、イギリスでは、父親休暇を取得した男性は5%であり、男性の育児参加が進んでいる様子がうかがわれる。
 次に、女性管理職の状況をみると、イギリスでは25〜34歳の労働力率が上昇した時期は管理職女性比率が高まった時期と重なっており、管理職女性比率の上昇とともに労働力率の上昇がみられる(図表2-83)。


図表2-76 スウェーデン女性の就業状態
図
資料出所:Statistics Sweden“Statistical Yearbook of Sweden 2005”、
総務省統計局「労働力調査」(平成16年)



図表2-77 年齢階級別女性働力率及び失業者・休業者を除く従業者率(スウェーデン)
図
資料出所:Statistics Sweden“Labour Force Survey 2003”、
総務省統計局「労働力調査」(平成16年)



図表2-78 休業理由別休業者割合(スウェーデン)
図
資料出所:Statistics Sweden“Labour Force Survey 2003”



図表2-80 出産後のサポート制度と利用状況(イギリス)
図
資料出所:イギリス貿易産業省「働く両親の職業と家族・家庭のバランス調査」(2000年)
<日本労働研究機構 『諸外国における女性労働者の母性保護』より>
(注) ( )内の数値は利用可能者に占める利用者割合である。



図表2-81 女性労働力率(25〜34歳)と女性パートタイム比率(25〜34歳)との関係(イギリスと日本)
図
資料出所:ILO“LABORSTA”、OECD “Labour Market Statistics”、
総務省統計局「労働力調査」
(注) 1985、1990、1995、2000、2001、2002、2003年の数値である。



図表2-82 女性労働力率(25〜34歳)とフルタイムとパートタイムの賃金格差との関係(イギリスと日本)
図
資料出所:ILO“LABORSTA”、OECD “Labour Market Statistics”、
総務省統計局「労働力調査」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」等
(注) 1985、1990、1995、2000、2001、2002、2003年の数値である。



図表2-83 女性労働力率(25〜34歳)と管理職女性比率との関係(イギリスと日本)
図
資料出所:ILO“LABORSTA”、総務省統計局「労働力調査」等
(注) 1974、1983、1990、1995、2000年の数値である。



(オランダにおいても管理職の女性比率が上昇)
 オランダではフルタイムとパートタイムの賃金格差は、1987年時点ではなくなっており、労働力率の上昇はパートタイム労働の処遇改善がその背景にあると考えられる。また、オランダにおいても30〜34歳の女性の労働力率は管理職女性比率の上昇とパラレルに上昇してきたことがわかる(図表2-86)。


(2)女性の就業状況のその他の側面
(高学歴女性の就業率)
 日本では大卒女性の労働力率が諸外国と比べ低いことは「II 1(1)」で指摘したとおりであるが、就業率を学歴計の女性、大卒女性及び大卒男性で国際比較をすると、図表2-87のとおりである。
 これによれば、日本を含めいずれの国においても女性の学歴計の就業率、大卒女性の就業率、大卒男性の就業率の順に就業率は高くなっており、大卒の女性と学歴計の女性との就業率の差が大きいのがイタリア(28.0%ポイント)、オランダ(15.7%ポイント)等である。一方、日本(3.5%ポイント)ではその差は小さく、韓国ではむしろ大卒女性の方が就業率が低いという特徴がある。また、大卒女性の就業率の水準については、日本と韓国以外では大卒女性の就業率は8割程度以上となっているのに対し、日本では69.1%、韓国では55.0%と低い。
 さらに、大卒男性の就業率と大卒女性の就業率の差をみると日本と韓国を除いた国では概ね1割程度以下となっているのに対し、日本は26.9%ポイント、韓国は34.9%ポイントとその格差は大きい。
 このように学歴別にみると、日本と韓国は大卒の女性の就業率はそれ以外の国に比べ低く、男性との差も大きくなっていることがわかる。


図表2-86 女性労働力率(30〜34歳)と管理職女性比率との関係(オランダと日本)
図
資料出所:ILO“LABORSTA”、総務省統計局「労働力調査」
(注) 1985、1990、1995、2000、2001、2002年の数値である。



図表2-87 学歴別、性別就業率(25〜54歳)と男女差の国際比較
図
資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査」(2003年)、OECD“Employment Outlook 2002”



4 まとめ

 我が国の人口は2006年をピークに反転し、労働力人口も減少していくことが見込まれている。そうした中で、我が国が引き続き活力のある社会であり続けるために、その担い手として女性の就労に注目が集まってきている。
 本年はこうした状況を背景に、女性の就業希望をどうすれば実現できるのか、何が求められているのかを探るため、国内の地域別や諸外国の状況を含めてデータを整理してみた。
 まず、状況として、就業者の確保という観点からは現在働いていない女性の中には、なお多くが就業を希望しており、特に我が国の女性の23%が居住する都市部で特に就業を希望しながらそれが実現できていない女性が多いということを確認すべきであろう。そしてこれらの都市部や都市部を抱える都道府県が全国で最も女性の就業率が高い福井県並みになればそれぞれ75万人、187万人の就業者が確保できるという数字のボリュームにも留意すべきである。
 一方、女性の側からみた現状はといえば、全体的に子育て期の就業は依然として厳しい状況にあるのは変わっていない。年齢階級別労働力率をみると、近年25〜34歳層というM字のボトムの労働力率は上昇傾向にあるが、未婚者の割合の上昇による変化の方が大きく、労働力率自体の上昇によるのは全体の3〜4割にすぎない。さらに、35〜39歳層では労働力率の上昇はこのところ足踏み状態にある。6歳未満の子がいる母親のうち雇用者で働く者の割合は緩やかに上昇しているが、その一方で家族従業者など、従前母親の就業形態としてその割合が高かった就業形態で働く母親が減少しており、その結果として就業率の水準としてはささやかな上昇にとどまっている。また、正社員で働く女性が減少する中で子を有する女性正社員数やその割合は減少している。そして育児と両立しやすい仕事に就きたいとして転職を希望する正社員の女性は全体の1割程度にのぼっているが、実際の転職は特に30歳台の再就職率が低い中にあって、容易ではなく、条件を下げ、正社員での転職をあきらめる者も少なくない。
 また、親と同居していれば、正社員での継続就業はしやすい状況がうかがわれるが、全体として、正社員ではなくパートタイム労働など非正規で働く女性は増えており、労働条件面で不満が大きい。こうした状況をみれば就業希望を有していても、特に現在無業で就業希望を有する者の7割以上はパートタイムであるが、労働条件面や将来展望の乏しさから実際の就職活動となると二の足を踏んでいる女性も少なくないであろう。また、現実には子育てとの両立が支障になっているのではない、子がいない妻の就業率がなぜ低いのかについても分析が必要と考える。

 しかし、ここ数年仕事と育児の両立支援施策や保育施策が充実をしてきた中で明るい点もみられることも指摘をしておきたい。
 ひとつには正社員のうち、6歳未満の子を有する女性の割合が上昇し始めている点である。最も子育てに苦労をする、子が小さい時期を継続就業できるようになってきている女性が増えてきていることは歓迎すべきことであろう。
 また、従前かなり低かった高学歴の女性のうちの既婚者の40歳台で就業者割合が上昇していることも見逃せない。諸外国との比較でも特に就業率の面で見劣りがするだけに、この点の改善がみられることは労働力の質を確保するという面からも期待できるものである。
 この他、日本の女性の就業率は低いと指摘されてきたが、実ははるかに高いと思われていたスウェーデンと実際上は大差なく、かつ、日本の女性も子が1人もいない妻や子が1人の妻については就業率は低いが、2人以上の場合はドイツやフランスを上回っていることも明らかになった。

 そして、本題の女性の就業希望を実現する上で何が求められているかということについてであるが、いくつかヒントとなることが浮かんできた。
 一つは、諸外国の状況からみると、育児期の勤務時間を柔軟化、短縮ができる制度や適正な条件のパートタイム労働の機会の創出が女性の就業継続をしやすくし、かつ就業を現実のものにするであろうということである。これはイギリスで勤務時間を短縮する制度が多く採用され、実際に多く利用されていることやオランダで適正な処遇のパートタイム労働が整備されたことに合わせて女性の就業が進んだことをみればうなずけよう。
 しかし、ここで忘れてはならないのはこれらの国でも女性の就業率は女性の登用と同時に進行したという点である。これは我が国の女性の意識調査において働き続けるために会社に希望することとして、育児や介護のための労働時間面の配慮とともに男女均等な待遇と公正な人事評価の徹底が求められていたことと符合する。労働時間面を含めた両立支援策は均等処遇と同時に進められることが必要と考えられる。
 二つには、再就職を希望する女性に対する情報の提供の重要性である。データからみる限り、正社員で再就職をしようとすれば女性の側もあまりブランクをおくことなく実際に就職のための活動を行った方が再就職に成功する確率が高い傾向にあり、離職期間が長いと正規の間で転職した者の割合が低くなっているのである。また、結婚や育児のために離職し、再就職している者の5割は離職期間が3年以内であるということは示唆的でもある。しかし、結婚、出産をしても仕事を続けるという考えであった者が就業継続している割合は、転職を含め、正規・非正規に関わらず、そのような考えではなかった場合に比べ高い。就業継続をしたいという考えの強さによっても違いが生ずることもうかがわれたところである。
 そして、地域別の対策である。今回、東京の特別区は別にしてもなぜ広島市において女性の有配偶率は高く、6歳未満の子がいる世帯割合が高いにも関わらず就業率が高いのか、その理由に迫ることはできなかった。雇用者比率が東京ほど高くなく、家族従業者などの就業形態が高いことも考えられるが、今後の課題である。しかし、有配偶率が高く、6歳未満の子がいる世帯割合が高いものの、女性の就業率が低い特別区周辺については通勤時間の長さや保育所の待機児童の多さなどが関係していることが推察される。これら都市部でとりわけ女性が子を産み育てながら就業できる環境が整うかは極めて影響が大きいとみられる。

 日本は韓国と並んで女性の年齢階級別労働力率はM字型を描き、出生率も低下し続けているし、女性の登用も遅れている。しかし、経済的事情から女性の労働を必要とする時代になりつつあり、女性の就業意欲を顕在化させるに為すべきことはかなり明確になりつつある。要は柔軟かつ公正な処遇、評価がなされる働き方、就業環境の整備でありそれを支える社会的サポートである。画一的な働き方だけでなく、勤務時間の短縮措置を始めとした時間、場所面双方の柔軟性をもつ働き方、かつ、処遇面で公平・公正であり、出産や育児がハンディにならず、将来の展望を持って働ける職場が待たれているのである。一方、男性は両立施策についての認識は女性と同様であっても男女の均等という面については女性との意識の差が大きい。会社側も労働者側も今一度、このギャップがどこから生じているのかについても考え、施策を再構築することが必要になってきているのではないだろうか。

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