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厚生労働省発表
平成17年3月18日
担当 職業安定局若年者雇用対策室
 室長  伊藤 正史
 室長補佐  中村 正子
 TEL 5253-1111(内線5775、5691)
3597-0331(夜間直通)


「インターンシップ推進のための調査研究委員会報告書」の取りまとめ


 インターンシップの普及に伴い、その内容、目的等の多様化が進展し、関係者の認識に相違が生じ、結果として、所期の目的を達成する支障となるほか、トラブル発生等の問題点も指摘されている。
 このため、厚生労働省職業安定局においては、平成16年7月から6回にわたり、有識者の参集を求め、インターンシップ実施の実態、企業、学生等の評価、課題等について把握・分析するため、総合的な実態調査を実施するとともに、本調査結果を踏まえ、インターンシップのより効果的な実施・普及のための基本的な方向性、関係者に求められる役割等について検討してきた。
 このたび、報告書が取りまとめられたので、公表する。

【調査結果に見られるインターンシップ実施・参加の形態、効果的なインターンシップを実施するためのポイント】

企業
 ○インターンシップとして学生に従事させている業務の内容は、「社員の補助  的業務の一部」が最多(61.1%)、「社員の基幹的な業務」が44.7%(複数回答)。
 ○自社のインターンシップ参加を採用に活用している企業の割合は37.0%。
 ○企業がインターンシップ実施の効果として認識する点として、
指導に当たる若手社員の成長
大学や学生への自社の認知度の向上、地元の大学との交流の深化
学生の配置による職場全体の活性化などのメリットが多く挙げられた。
 ○インターンシップの効果が上がっている企業では、次のような取組が見られた。
全社的なインターンシップ推進体制の整備
マニュアルの整備、ノウハウの蓄積
実習計画の作成と学生への事前の伝達
受入担当者の配置(さらに、会社から受入担当者への事前説明・指示がある場合に、受入担当者の今後の受入意向が高い。)
 ○企業が受け入れやすいインターンシップ期間は、1週間(31.3%)から2週間(44.5%)程度。一方、企業、受入担当者ともに、学生が実習効果を得るには1か月程度が必要と認識している(大学も同様の認識)。

学生
 ○インターンシップ応募企業数は平均1.9社、参加企業数は平均1.2社。
 ○インターンシップ参加期間は2週間程度(10〜14日)が多数(56.4%)。
 ○インターンシップに参加した学生が得た印象や意見としては、次のようなものが挙げられた。
社員との交流機会が増えること、実習内容が事前に十分説明されることなどが、インターンシップの効果を高めるために有効。
参加期間別には、3週間を超える場合に最も満足度が高く、また、参加期間が長期になるほど、働くことの楽しさや社会に出る自信を実感。
経験した業務の内容別には、「社員の基幹的業務の一部」で満足度は高く、「アルバイトやパートの業務の一部」では満足度が低い。

大学
 ○学生がインターンシップに関心をもったきっかけは、大学就職課などの勧めが25.2%と最も多い。
 ○大学が把握する希望学生数と企業の受入可能数の関係について、企業の受入可能人数が不足(52.5%)、総数は釣り合っているが特定企業に希望集中(32.5%)等の指摘。


【全国のインターンシップ参加大学生数(推計)】
 ○ 企業調査に加え、文部科学省が実施する「大学等におけるインターンシップ実施状況調査報告」(大学等の授業科目として実施されるインターンシップに限って参加学生数等把握)に基づき推計すると、全国で概ね12万人の大学生がインターンシップに参加しているものと見込まれる。



調査の概要
 ◇ 調査対象
インターンシップ実施企業(回答 1,210社(回収率48.7%))
インターンシップ実施企業の受入担当者
(回答 1,406人(回収率28.3%))
大学(回答 40大学 (回収率80.0%))
インターンシップ参加学生
  (郵送調査:回答594人(回収率39.6%)、Web調査:回答308人)
 ◇ 調査時期
 平成16年10月15日〜11月8日(大学、学生は15日)



参集者
  (五十音順、敬称略)○は座長
 岩越  隆美 国士舘大学 就職センター就職課主任
 日下  幸夫 早稲田大学 商学部事務長
(前キャリアセンター副センター長兼課長)
 ○ 佐藤  博樹 東京大学 社会科学研究所教授
 神野  清勝 豊橋技術科学大学 工学部教授
 鈴木  正人 社団法人日本経済団体連合会 常務理事
 武石 恵美子 株式会社ニッセイ基礎研究所 上席主任研究員
 内藤  憲治 阪和興業株式会社 人事部人事課課長代理
 牧野  正人 大同特殊鋼株式会社 人事部部長
  (専門委員)
 堀田  聰子 東京大学社会科学研究所 助手
 堀  有喜衣 独立行政法人労働政策研究・研修機構 研究員
  (オブザーバー)
 文部科学省高等教育局専門教育課
 経済産業省産業技術環境局大学連携推進課


インターンシップ推進のための調査研究委員会 報告書(概要)


1 インターンシップ(※)の現状
    (※) 調査及び検討に当たっては、インターンシップを「企業が学生を一定期間受け入れ、仕事を体験させる仕組み(アルバイトなど雇用によるものを除く。)」と一般的な定義よりも幅広く捉えた上で、近年インターンシップの拡がりが顕著であり、今後の発展、定着が期待される一方で、効果的な在り方が確立していないこと等による課題もみられる、大学の文系学部・学科に在籍する学生に係るインターンシップを中心的な課題としている。

 ○プログラム内容としては、社員の補助的な業務の一部が61.1%(複数回答)と最も多いが、企業、受入部署等により、社員の基幹的な業務の一部、通常の業務とは別の一定の課題から、仕事をしている社員の同行・同席、職場・工場の業務見学、アルバイトやパートの業務の一部まで多岐にわたる。

受入学生に提供するインターンシッププログラムの内容 (企業調査:MA:n= 892)


 ○企業の立場での学生受入れの目的としては、学生の就業意識向上(67.6%)に加え、大学や学生の自社の認知度向上、指導に当たる若手社員の成長、地元の大学等との交流の深化、職場全体の活性化など、自社の経営上のメリットが挙げられる。

大学生を受け入れるに当たっての目的 (企業調査:MA:n= 972)


 ○インターンシップと新卒者採用選考との関係では、インターンシップ参加の有無や評価は採用とは一切関係がないとする企業が61.3%と最も多く、参加の有無・評価が採用に直結乃至参考とする企業は37.0%。
 ○次のような取組がみられる企業において、インターンシップの効果が高い。
 ・全社的なインターンシップ推進体制の整備
 ・マニュアルの整備、ノウハウの蓄積
 ・実習計画の作成と学生への事前の伝達
 ・受入担当者の配置(さらに、会社から受入担当者への事前説明・指示がある場合などでは、受入担当者の今後の受入意向が高い。)
 ○学生がインターンシップに応募した企業数は平均1.9社、インターンシップに参加した企業数は平均1.2社となっている。
 ○学生のインターンシップ参加期間は、2週間程度(10〜14日)が最も多く56.4%、2週間程度以内が約8割を占めている。
 ○学生は、社員との交流機会が増えること、実習内容が事前に十分説明されることなどがインターンシップの効果を高めるために有効と考えている。

インターンシップの効果を高めるために有効なこと(学生調査 問28:MA)


 ○学生が有効であると感じた大学からの指導としては、ビジネスマナー講習が37.4%と最も多く、次いでインターンシップの概要説明会、実習生からの報告・発表など。
 ○学生がインターンシップに関心を持ったきっかけは、大学就職課などの勧めが25.2%と最も多く、次いで新聞・雑誌・インターネット等のメディアから。インターンシップ情報源としては、大学内の掲示、大学の説明会が最も多い。
 ○ 今般の企業調査結果に加え、文部科学省が実施する「大学等におけるインターンシップ実施状況調査結果」(大学等の授業科目として実施されるインターンシップに限って参加学生数等把握)に基づき推計するなら、全国で年間概ね12万人の大学生がインターンシップに参加していると見込まれるもの。


2 インターンシップにおける課題
 (1)インターンシップの実施目的・効果に関する課題
企業が想定する学生像と学生の意識の格差
企業、受入担当者は、学生の具体的な目的意識、やる気を重視。学生は(特定の職務内容に関してということでなく、一般的な意味で)働くことの体験を目的。
インターンシップの実施期間
企業が受け入れやすいとする期間は1週間〜2週間程度。
学生が高い実習効果を得るには1か月程度必要と、企業、受入担当者、大学のいずれも認識。
インターンシップ実施企業の体制整備
全社的な推進体制の整備がされていない企業が約半数、マニュアルもなく、ノウハウの蓄積がない企業が約2割。
インターンシップと企業の採用選考の関係
インターンシップの参加の有無や評価が採用選考に関連するとする企業は4割弱。大学の側では、インターンシップを通じた採用選考が、採用選考の早期化、学生の拘束につながることを懸念する意見も。
 (2)インターンシップの円滑な普及、拡大に関する課題
大学における受入企業数の確保等
過半数の大学が、学生の希望に対し、企業の受入可能数が不足と認識
インターンシップ情報の入手経路、大学におけるインターンシップ推進体制
学生にとって、大学がインターンシップ情報を入手する主たる情報源であり、大学が発信する情報量が学生の参加希望の実現に与える影響が大きいもの。
インターンシップ推進の全学的な組織がある大学は半数強にのぼるが、企業開拓は教職員の人的ネットワークによるものが多いなど、実際には、学内の情報流通、共有化は不十分。
インターンシップ実施に伴うリスク
インターンシップ実施に伴うリスクとして、企業では、往復途上で事故、器物等の破損、機密の漏洩、傷害など企業自らや顧客等第三者に損害を与えることに関する懸念が高い。
一方、自らの保険加入について、わからないとする学生も2割程度。学生のリスク、保険加入に関する意識は必ずしも高くないものと推測。


効果的なインターンシップの実施に向けた取組の在り方


(1)キャリア教育の全体像の中でのインターンシップの位置付けの明確化、推進の方向性
インターンシップについて、単に量的拡充を目指すより、各学校段階でのキャリア教育の機能強化、役割明確化を図る中で、これに相応しい意識醸成が図られた学生を対象に、また、インターンシップに積極的意義を見出す企業との間で、多様なプログラム(最低限遵守されるべき事項が履行され、かつ、関係者それぞれにとって効果があるもの)を確立することに、より重きを置くべき。

(2)大学・学生と企業のミスマッチを防止し、インターンシップの効果的推進を図るための取組
学生の参加目的の明確化
学生が、それぞれの参加目的を明確に設定し、これにマッチした参加企業、プログラムを選択するとともに、目標達成のため、主体的に取り組むことが求められる。
大学における適切な指導の推進
学生がインターンシップの意義を理解し、目的意識を持って主体的に参加するためには、大学における事前の指導が重要
また、インターンシップ参加学生の報告会や、レポートの作成による情報交換等の場の提供等の事後の取組は、他の学生への効果の伝播という観点から有意義。
学生と企業の的確なマッチングの促進
学生に対しては、企業の規模や知名度ではなく、何を経験し、学ぶかが重要であることが適切に理解されるよう指導に努めるべき。
企業による計画の策定と事前の伝達、企業内の体制の整備
企業がプログラム計画を事前に定め、学生、大学、受入担当者等の関係者に提示することで、共通の認識を形成することが肝要。
学生と企業の認識のミスマッチを最小化するためには、企業が事前に学生の興味・関心等を聞き、プログラム、指導内容に活かすなどの工夫などが望まれる。

(3)効果等に関する周知
インターンシップの効果、実績を有する企業の受入れノウハウ、事例等は、他の企業の受入効果の向上、負担の軽減を図る上で、重要な情報であり、行政機関、経済団体等の情報発信等の取組が重要。
個々の企業におけるインターンシップの取組に関する社内周知は、全社的な理解の深化にも貢献。

(4)プログラム内容、アルバイト等との関係
インターンシップの効果を高める上で、プログラム内容を参加学生が達成感が得られるものにすることが特に重要。
アルバイトに類した性格を有するインターンシップについては、インターンシップの効果の発揮、弊害の防止の両面から、厳しく問われるべきもの。

(5)実施時期・期間
受入企業の業務の繁閑や受入体制、学生の興味・関心、学事日程等を考慮しつつ、1か月程度のインターンシップ、1日数時間程度で長期のインターンシップなど多様な形態のインターンシップの普及も検討されるべき。

(6)単位認定との関わり
大学がインターンシップを単位認定の対象とする場合には、学生の単位取得自体の目的化という弊害等を除去するため、事前に学生に対し、とりわけ懇切な指導を行い、インターンシップの目的や意義について十分理解させることなどにより、学生・企業双方に効果があり、満足の高いインターンシップが実施されるよう留意が必要。

(7)インターンシップ実施(参加)に伴うリスク回避のための措置
事故に備えた保険への加入は、学生、企業がともに安心してインターンシップを実施するため、最低限確保されるべき事項。
大学や企業は、学生本人に対するインターンシップ参加に伴うリスクに関する意識喚起、保険加入手続きの督励が求められる。

(8)今後、関係者に期待されること
より適切なインターンシップ推進のため、本研究委員会の実態調査、議論の成果も踏まえ、関係行政機関が中心となって、インターンシップに係る関係者の共通認識を形成するとともに、その効果的な実施を促進するためのノウハウ、留意事項等を取りまとめ、普及を図ること等が期待される。



報告書(全体版)(PDF:54KB)
参考資料 (PDF:251KB)


(参考)

本報告書の成果を活用した厚生労働省としての
当面のインターンシップ施策の展開


◆ インターンシップ受入企業開拓推進事業の効果的な推進
 ○厚生労働省が経済団体に委託し、地域の経営者協会が中核となり実施している「インターンシップ受入企業開拓推進事業」(受入企業の個別開拓、情報発信、企業セミナー、参加希望学生のマッチング等)について、平成17年度の事業展開に当たって、本報告書の成果を活用し、企業へのインターンシップの成果の普及による取組の促進、効果的なインターンシップの実施に関するノウハウの普及のための周知等を強化する。


◆ 大学及び大学生に対する就職支援の強化
 ○平成17年度において、大学の就職指導担当部署との連携強化・大学の就職支援機能の活性化を図るため、大学における標準的な就職支援メニュー、就職支援の具体的なノウハウ等を示した「就職支援マニュアル」を開発し、大学等に配付、活用することとしている。
 ○大学の就職支援の一環として、低学年次からのキャリア教育に取り組む大学も多いことから、本マニュアルにおいて、効果的なインターンシップの実施のための具体的なノウハウ、留意事項等についても盛り込むこととする。




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