戯曲「世阿弥」や評論「柔らかい個人主義の誕生」などで知られ、兵庫県立芸術文化センター(西宮市)芸術監督などを務めた劇作家、評論家の山崎正和さんが19日午前3時2分、悪性中皮腫のため兵庫県内の病院で亡くなった。86歳。自宅は西宮市。葬儀・告別式は近親者で済ませた。
京都市生まれ、京都大大学院修了。関西大教授や大阪大教授などを務めながら劇作を続け、1963年に「世阿弥」で「新劇」岸田戯曲賞(現岸田國士戯曲賞)。以降も「オイディプス昇天」などを世に出してきた。
「鴎外 闘う家長」(72年、読売文学賞)など、深い見識に裏打ちされた評論も次々発表、注目を集めた。84年の「柔らかい個人主義の誕生」では70~80年代の社会構造の変化を踏まえ、時間を消費して社交を楽しむ個人の登場を予言し、消費文化論ブームを引き起こした。
兵庫県では、85年に開校した県立宝塚北高校の演劇科設置に尽力。また県立芸術文化センターは構想段階から携わり、91年に芸術監督に就任。開館に先駆けてソフト事業に力を注ぎ、「ひょうご舞台芸術」と銘打って数々の演劇作品を上演してきた。
95年の阪神・淡路大震災で被災。芸術活動の自粛ムードに「おにぎりか文化かの二択は間違っている」と異を唱え、同年6月、神戸市内で「ゲットー」の上演を成功させた。その後も同センター芸術顧問、県参与を歴任した。
99年紫綬褒章、2006年文化功労者、11年日本芸術院会員。18年には長年にわたる劇作・評論活動が評価され、文化勲章を授与された。