非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛(ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る。)
○中等度から高度の疼痛を伴う各種癌
○中等度から高度の慢性疼痛
5.1 本剤は、他のオピオイド鎮痛剤が一定期間投与され、忍容性が確認された患者で、かつオピオイド鎮痛剤の継続的な投与を必要とするがん疼痛及び慢性疼痛の管理にのみ使用すること。
5.2 慢性疼痛の原因となる器質的病変、心理的・社会的要因、依存リスクを含めた包括的な診断を行い、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。
本剤は、オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する。
通常、成人に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替えて使用する。
初回貼付用量は本剤投与前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案して、0.84mg、1.7mg、3.4mg、5mgのいずれかの用量を選択する。
その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。
7.1 初回貼付用量
初回貼付用量として、本剤6.7mgは推奨されない(初回貼付用量として5mgを超える使用経験はない)。
初回貼付用量を選択する下記換算表は、経口モルヒネ量90mg/日(坐剤の場合45mg/日)、経口オキシコドン量60mg/日、経口コデイン量270mg/日以上、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(6〜8錠)、フェンタニル経皮吸収型製剤(3日貼付型製剤)4.2mg(25μg/hr;フェンタニル0.6mg/日)に対して本剤1.7mgへ切り替えるものとして設定している。
なお、初回貼付用量は換算表に基づく適切な用量を選択し、過量投与にならないよう注意すること。
換算表(オピオイド鎮痛剤1日使用量に基づく推奨貼付用量):がん疼痛における切り替え
本剤貼付用量 | 0.84mg | 1.7mg | 3.4mg | 5mg |
定常状態における推定平均吸収量a)(mg/日) | 0.3 | 0.6 | 1.2 | 1.8 |
|
モルヒネ経口剤(mg/日) | <45 | 45〜134 | 135〜224 | 225〜314 |
モルヒネ坐剤(mg/日) | <30 | 30〜69 | 70〜112 | 113〜157 |
オキシコドン経口剤(mg/日) | <30 | 30〜89 | 90〜149 | 150〜209 |
フェンタニル経皮吸収型製剤 (3日貼付型製剤;貼付用量mg) [定常状態における推定平均吸収量(mg/日)] | 2.1 [0.3] | 4.2 [0.6] | 8.4 [1.2] | 12.6 [1.8] |
換算表(オピオイド鎮痛剤1日使用量に基づく推奨貼付用量):慢性疼痛における切り替え
本剤貼付用量 | 0.84mg | 1.7mg | 3.4mg | 5mg |
定常状態における推定平均吸収量a)(mg/日) | 0.3 | 0.6 | 1.2 | 1.8 |
|
モルヒネ経口剤(mg/日) | <45 | 45〜134 | 135〜224 | 225〜314 |
コデイン経口剤(mg/日) | <270 | 270〜 | - | - |
トラマドール/アセトアミノフェン配合錠b)(錠/日)[トラマドール塩酸塩の用量(mg)] | 4〜5 [150〜187.5] | 6〜8 [225〜300] | - | - |
フェンタニル経皮吸収型製剤 (3日貼付型製剤;貼付用量mg) [定常状態における推定平均吸収量(mg/日)] | 2.1 [0.3] | 4.2 [0.6] | 8.4 [1.2] | 12.6 [1.8] |
a)本剤6.7mgは、初回貼付用量としては推奨されないが、定常状態における推定平均吸収量は2.4mg/日に相当する。
b)1錠中トラマドール塩酸塩37.5mg及びアセトアミノフェン325mgを含有する。
7.2 初回貼付時
本剤初回貼付後少なくとも2日間は増量を行わないこと。本剤の血中濃度が定常状態に達するには時間を要することから、この時点での増量は過量投与となる可能性がある[
16.1.1-
16.1.3参照]。
他のオピオイド鎮痛剤から本剤に初めて切り替えた場合、フェンタニルの血中濃度が徐々に上昇するため、鎮痛効果が得られるまで時間を要する。そのため、下記の「使用方法例」を参考に、切り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤の投与を行うことが望ましい。
[使用方法例]
使用していたオピオイド鎮痛剤注)の投与回数 | オピオイド鎮痛剤の使用方法例 |
1日1回投与 | 投与12時間後に本剤の貼付を開始する。 |
1日2〜3回投与 | 本剤の貼付開始と同時に1回量を投与する。 |
1日4〜6回投与 | 本剤の貼付開始と同時及び4〜6時間後に1回量を投与する。 |
患者により上記表の「使用方法例」では、十分な鎮痛効果が得られない場合がある。患者の状態を観察し、本剤の鎮痛効果が得られるまで、適時オピオイド鎮痛剤の追加投与(レスキュー)により鎮痛をはかること。1回の追加投与量として、本剤の切り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤が経口剤又は坐剤の場合は1日投与量の1/6量を目安として投与すること。この場合、速効性のオピオイド鎮痛剤を使用することが望ましい。
7.3 用量調整と維持
7.3.1 疼痛増強時における処置
本剤貼付中に痛みが増強した場合や疼痛が管理されている患者で突出痛(一時的にあらわれる強い痛み)が発現した場合には、直ちにオピオイド鎮痛剤の追加投与(レスキュー)により鎮痛をはかること。1回の追加投与量として、本剤の切り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤が経口剤又は坐剤の場合は1日投与量の1/6量を、注射剤の場合は1/12量を目安として投与すること。この場合、速効性のオピオイド鎮痛剤を使用することが望ましい。
7.3.2 増量
本剤初回貼付後及び増量後少なくとも2日間は増量を行わないこと。連日の増量を行うことによって呼吸抑制が発現することがある。
鎮痛効果が得られるまで各患者毎に用量調整を行うこと。鎮痛効果が十分得られない場合は、追加投与(レスキュー)されたオピオイド鎮痛剤の1日投与量及び疼痛程度を考慮し、0.84mgから1.7mgへの増量の場合を除き、貼付用量の25〜50%を目安として貼り替え時に増量する。
なお、本剤の1回の貼付用量が20.1mgを超える場合は、他の方法を考慮すること。
7.3.3 減量
連用中における急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと。副作用等により減量する場合は、十分に観察を行いながら慎重に減量すること。
7.3.4 投与の継続
慢性疼痛患者において、本剤投与開始後4週間を経過してもなお期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を検討すること。また、定期的に症状及び効果を確認し、投与の継続の必要性について検討すること。
7.4 投与の中止
7.4.1 本剤の投与を必要としなくなった場合には、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。
7.4.2 本剤の投与を中止し、他のオピオイド鎮痛剤に変更する場合は、本剤剥離後の血中フェンタニル濃度が50%に減少するのに17時間以上かかることから、他のオピオイド鎮痛剤の投与は低用量から開始し、患者の状態を観察しながら適切な鎮痛効果が得られるまで漸増すること。
8.1 本剤を中等度から高度のがん疼痛又は慢性疼痛以外の管理に使用しないこと。
8.2 本剤の使用開始にあたっては、主な副作用、具体的な使用方法、使用時の注意点、保管方法等を患者等に対して十分に説明し、理解を得た上で使用を開始すること。特に呼吸抑制、意識障害等の症状がみられた場合には速やかに主治医に連絡するよう指導すること。また、本剤使用中に本剤が他者に付着しないよう患者等に指導すること。[
14.1.3、
14.1.6、
14.2.1-
14.2.9、
14.3.1-
14.3.3参照]
8.3 重篤な呼吸抑制が認められた場合には、本剤を剥離し、呼吸管理を行う。呼吸抑制に対しては麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が有効であるが、麻薬拮抗剤の作用持続時間は本剤より短いので、観察を十分に行い麻薬拮抗剤の繰り返し投与を考慮すること。[
11.1.2参照]
8.4 他のオピオイド鎮痛剤から本剤への切り替え直後に、悪心、嘔吐、傾眠、浮動性めまい等の副作用が多く認められることがあるため、切り替え時には観察を十分に行い、慎重に投与すること。なお、これらの副作用は経時的に減少する傾向がみられる。
8.5 他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えた場合には、患者によっては、あくび、悪心、嘔吐、下痢、不安、振戦、悪寒等の退薬症候があらわれることがあるので、患者の状態を観察しながら必要に応じ適切な処置を行うこと。[
11.1.1参照]
8.6 本剤を増量する場合には、副作用に十分注意すること。
8.7 連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。また、乱用や誤用により過量投与や死亡に至る可能性があるので、これらを防止するため観察を十分行うこと。[
9.1.6、
11.1.1参照]
8.8 連用中における投与量の急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと。[
11.1.1参照]
8.9 重篤な副作用が発現した患者については、本剤剥離後のフェンタニルの血中動態を考慮し、本剤剥離から最低でも24時間観察を継続すること。
8.10 本剤貼付中に発熱又は激しい運動により体温が上昇した場合、本剤貼付部位の温度が上昇しフェンタニル吸収量が増加するため、過量投与になり、死に至るおそれがあるので、患者の状態に注意すること。また、本剤貼付後、貼付部位が電気パッド、電気毛布、加温ウォーターベッド、赤外線灯、集中的な日光浴、サウナ、湯たんぽ等の熱源に接しないようにすること。本剤を貼付中に入浴する場合は、熱い温度での入浴は避けさせるようにすること。[1.、
9.1.5参照]
8.11 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.12 鎮痛剤による治療は原因療法ではなく、対症療法であることに留意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 慢性肺疾患等の呼吸機能障害のある患者
9.1.2 喘息患者
9.1.3 徐脈性不整脈のある患者
9.1.4 頭蓋内圧の亢進、意識障害・昏睡、脳腫瘍等の脳に器質的障害のある患者
9.1.5 40℃以上の発熱が認められる患者
本剤からのフェンタニル放出量の増加により、薬理作用が増強するおそれがある。[1.、
8.10参照]
9.1.6 薬物依存の既往歴のある患者
9.2 腎機能障害患者
代謝・排泄が遅延し、副作用があらわれやすくなるおそれがある。なお、腎機能障害患者を対象として有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.3 肝機能障害患者
代謝・排泄が遅延し、副作用があらわれやすくなるおそれがある。[
16.1.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。フェンタニルクエン酸塩注射液において、分娩時の投与により新生児に呼吸抑制、分娩時を含む妊娠中の投与により胎児に徐脈があらわれたとの報告がある。妊娠中の本剤投与により、新生児に退薬症候がみられることがある。動物実験(ラット静脈内投与試験)で胎児死亡が報告されている。[
11.1.1、
16.3.2参照]
9.6 授乳婦
授乳を避けさせること。ヒトで母乳中へ移行することが報告されている。[
16.3.3参照]
9.7 小児等
9.8 高齢者
副作用の発現に注意し、慎重に投与すること。フェンタニルのクリアランスが低下し、血中濃度消失半減期の延長がみられ、若年者に比べ感受性が高いことが示唆されている。
1)[
16.1.4参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 依存性(頻度不明)
連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。連用中に投与量の急激な減量ないし中止により退薬症候があらわれることがある。また、乱用や誤用により過量投与や死亡に至る可能性がある。[
8.5、
8.7、
8.8、
9.1.6、
9.5参照]
11.1.2 呼吸抑制(0.9%※)
無呼吸、呼吸困難、呼吸異常、呼吸緩慢、不規則な呼吸、換気低下等があらわれることがある。なお、本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が有効である。[
8.3、
9.1.1、
9.1.4参照]
11.1.3 意識障害(頻度不明)
意識レベルの低下、意識消失等の意識障害があらわれることがある。
11.1.4 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
11.1.5 痙攣(頻度不明)
※慢性疼痛患者を対象とした国内臨床試験における発現頻度
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<がん疼痛>
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
循環器 | | | 高血圧、低血圧、頻脈、徐脈、チアノーゼ、動悸 |
精神神経系 | 傾眠・眠気 | 不眠症、頭痛 | 不穏、健忘、めまい、いらいら感、幻覚、多幸症、錯乱、せん妄、うつ病、不安、激越、振戦、錯感覚、感覚鈍麻、回転性めまい、無感情、注意力障害、味覚異常、記憶障害、錐体外路障害 |
皮膚 | 貼付部位のそう痒感、貼付部位の紅斑 | そう痒、汗疹 | 発疹、紅斑、皮膚炎(接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎を含む)、湿疹、貼付部位反応(発疹、湿疹、皮膚炎、小水疱) |
消化器 | 便秘、悪心、嘔吐、下痢 | | 口渇、胃部不快感、消化不良、イレウス、腹痛、痔核、口内炎 |
肝臓 | | 肝機能異常 | |
泌尿器 | | 排尿困難 | 尿閉 |
眼障害 | | | 縮瞳、霧視、結膜炎、複視 |
感染症 | | | 鼻咽頭炎、膀胱炎、帯状疱疹 |
臨床検査 | | 白血球数減少、血中カリウム減少 | 血小板数減少、ALT増加、蛋白尿、AST増加、血中ビリルビン増加、尿糖陽性、総蛋白減少、体重減少、白血球数増加、血中ALP増加、血中尿素窒素上昇 |
その他 | | 発熱、体熱感 | 倦怠感、発汗、しゃっくり、食欲不振、性機能不全、勃起不全、無力症、筋痙縮、疲労、末梢性浮腫、インフルエンザ様疾患、冷感、体温変動感、薬剤離脱症候群、貧血、白血球増加症、食欲減退、耳鳴、背部痛、筋骨格痛、四肢痛、不正子宮出血、胸部不快感、胸痛、悪寒、異常感 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<慢性疼痛>
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
循環器 | | 低血圧 | 高血圧、頻脈、徐脈、チアノーゼ、動悸 |
精神神経系 | 傾眠、めまい、不眠症 | 頭痛、味覚異常 | 健忘、幻覚、多幸症、錯乱、うつ病、不安、激越、振戦、錯感覚、感覚鈍麻、回転性めまい、無感情、注意力障害、記憶障害、錐体外路障害、不穏、せん妄、いらいら感 |
皮膚 | 貼付部位のそう痒感、そう痒 | 発疹、皮膚炎(接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎を含む)、湿疹、貼付部位皮膚炎、貼付部位の紅斑 | 紅斑、貼付部位反応(発疹、湿疹、小水疱)、汗疹 |
消化器 | 便秘、悪心、嘔吐、下痢 | 腹痛、口渇、口内炎 | 胃部不快感、消化不良、イレウス、痔核 |
肝臓 | | 肝機能異常 | |
泌尿器 | | 排尿困難 | 尿閉 |
眼障害 | | 複視 | 縮瞳、結膜炎、霧視 |
感染症 | | 鼻咽頭炎 | 膀胱炎、帯状疱疹 |
臨床検査 | | ALT増加、AST増加、体重減少、血中ALP増加 | 蛋白尿、血中ビリルビン増加、尿糖陽性、総蛋白減少、白血球数減少、白血球数増加、血中尿素窒素上昇、血小板数減少、血中カリウム減少 |
その他 | 倦怠感、食欲減退 | 薬剤離脱症候群、末梢性浮腫、発汗、悪寒、異常感、背部痛、筋骨格痛、無力症、胸部不快感、胸痛 | 発熱、食欲不振、性機能不全、勃起不全、筋痙縮、疲労、インフルエンザ様疾患、冷感、体温変動感、貧血、白血球増加症、耳鳴、四肢痛、不正子宮出血、しゃっくり、体熱感 |
13.1 症状
フェンタニルの過量投与時の症状として、薬理作用の増強により重篤な換気低下を示す。また、フェンタニルの過量投与により白質脳症が認められている。
13.2 処置
過量投与時には以下の治療を行うことが望ましい。
・換気低下が起きたら、直ちに本剤を剥離し、患者をゆり動かしたり、話しかけたりして目をさまさせておく。
・麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)の投与を行う。患者に退薬症候又は麻薬拮抗剤の副作用が発現しないよう慎重に投与する。なお、麻薬拮抗剤の作用持続時間は本剤の作用時間より短いので、患者のモニタリングを行うか又は患者の反応に応じて、初回投与後は注入速度を調節しながら持続静注する。
・臨床的に処置可能な状況であれば、患者の気道を確保し、酸素吸入し、呼吸を補助又は管理する。必要があれば咽頭エアウェイ又は気管内チューブを使用する。これらにより、適切な呼吸管理を行う。
・適切な体温の維持と水分摂取を行う。
・重度かつ持続的な低血圧が続けば、循環血液量減少の可能性があるため、適切な輸液療法を行う。
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 オピオイド鎮痛剤が投与されていた患者であることを確認した上で本剤を交付すること。
14.1.2 包装袋を開封せず交付すること。
14.1.4 患者等に対して、本剤を指示された目的以外に使用してはならないことを指導すること。
14.1.5 患者等に対して、本剤を他人へ譲渡してはならないことを指導すること。
14.1.6 本剤を子供の手の届かない、高温にならない所に保管すること。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2 薬剤貼付時の注意
14.2.1 体毛のない部位に貼付することが望ましいが、体毛のある部位に貼付する場合は、創傷しないようにハサミを用いて除毛すること。本剤の吸収に影響を及ぼすため、カミソリや除毛剤等は使用しないこと。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.2 貼付部位の皮膚を拭い、清潔にしてから本剤を貼付すること。清潔にする場合には、本剤の吸収に影響を及ぼすため、石鹸、アルコール、ローション等は使用しないこと。また、貼付部位の水分は十分に取り除くこと。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.3 皮膚刺激を避けるため、毎回貼付部位を変えることが望ましい。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.4 活動性皮膚疾患、創傷面等がみられる部位及び放射線照射部位は避けて貼付すること。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.5 本剤を使用するまでは包装袋を開封せず、開封後は速やかに貼付すること。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.6 包装袋は手で破り開封し、本剤を取り出すこと。手で破ることが困難な場合は、ハサミ等で包装袋の端に切り込みを入れ、そこから手で破り本剤を取り出すこと。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.7 本剤をハサミ等で切って使用しないこと。また、傷ついたパッチは使用しないこと。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.8 本剤を使用する際には、ライナーを剥がして使用すること。[
8.2、
14.1.3参照]
14.2.9 貼付後、約30秒間手のひらでしっかり押え、本剤の縁の部分が皮膚面に完全に接着するようにすること。[
8.2、
14.1.3参照]
14.3 薬剤貼付期間中の注意
14.3.1 本剤が他者に付着しないよう注意すること。本剤の他者への付着に気付いたときは、直ちに剥離し、付着部位を水で洗い流し、異常が認められた場合には受診すること。海外において、オピオイド貼付剤を使用している患者と他者(特に小児)が同じ寝具で就寝するなど身体が接触した際に、誤って他者に付着し有害事象が発現したとの報告がある。[
8.2、
14.1.3参照]
14.3.2 本剤が皮膚から一部剥離した場合は、再度手で押しつけて剥離部を固定するが、粘着力が弱くなった場合はパッチを剥離し、直ちに同用量の新たなパッチに貼り替えて、剥がれた製剤の貼り替え予定であった時間まで貼付すること。なお、貼り替え後血清中フェンタニル濃度が一過性に上昇することがあるので注意すること。[
8.2、
14.1.3参照]
14.3.3 使用済み製剤は粘着面を内側にして貼り合わせた後、安全に処分すること。未使用製剤は病院又は薬局に返却すること。[
8.2、
14.1.3参照]
18.1 作用機序
受容体結合試験の結果、フェンタニルはヒト・クローン化μ(ミュー)オピオイド受容体に対してKi=1.02nmol/L、δ(デルタ)オピオイド受容体に対してKi=1530nmol/L及びκ(カッパ)オピオイド受容体に対してKi=1080nmol/Lの親和性を示した。また、モルモット全脳膜組織を用いた検討では、フェンタニルはμオピオイド受容体に対してKi=2.11nmol/L、δオピオイド受容体に対してKi=109nmol/L及びκオピオイド受容体に対してKi=308nmol/Lの親和性を示した。これらの結果から、フェンタニルはμオピオイド受容体に対して選択的に高い親和性を示した
17)18)。(
in vitro)
したがって、フェンタニルはμオピオイド受容体を介してアゴニストとして作用し、強力な鎮痛作用を示すものと考えられている。
18.2 鎮痛作用
18.2.1 機械的侵害刺激法の一つであるマウス尾根部のピンチによる発痛に対して、フェンタニル(皮下投与)は鎮痛作用を示し、ED
50は0.07mg/kgであった。モルヒネ硫酸塩水和物(皮下投与)のED
50は9mg/kgであった。
19) 18.2.2 化学的侵害刺激法の一つであるラットのブラジキニン発痛法において、フェンタニルは皮下投与15分後に最大作用を示し、そのED50は0.010mg/kgであった。フェンタニルの鎮痛活性は、モルヒネ硫酸塩水和物(皮下投与後30〜60分にED50が2〜3mg/kg)に比べて、約200倍強い効力比を示した。
18.2.3 電気的侵害刺激法のウサギ歯髄刺激誘発脳波覚醒反応試験において、デュロテップパッチ(2.5mg(25μg/hr))は1回の貼付で3〜72時間まで持続的な鎮痛作用を示した
20)。
18.2.4 神経障害性疼痛モデルの一つであるスナネズミの絞扼性神経損傷モデルにおいて、フェンタニルは0.04mg/kg以上の皮下投与で冷的アロディニアを有意に抑制した
21)。
慢性疼痛の診断、治療に精通した医師によってのみ処方・使用されるとともに、本剤のリスク等についても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いられ、それら薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。
本剤は厚生労働省告示第75号(平成24年3月5日付)に基づき、投薬期間は1回30日間分を限度とされています。
26.1 製造販売元
ヤンセンファーマ株式会社
〒101-0065
東京都千代田区西神田3-5-2