本研究では,
自殺
の新聞報道のされ方について検討するため, 代表的な全国紙 (朝日, 毎日, 読売各紙) を取り上げ, 「ネット
自殺
」以降に
自殺
を報じた記事の内容を分析した。具体的には, 上記3紙朝夕刊を対象とし, 2003年2月11日からの1年半を調査期間とした。新聞記事検索データベースを使用し, 検索語を「
自殺
」として, 検索語が見出し, 本文, キーワード, 分類語のいずれかに含まれている記事を抽出した。その後, 記事の見出しから, 明らかに
自殺
報道ではないと判断でぎる記事を除外し, さらに記事の内容から,
自殺
未遂,
自殺
と判断できないもの, 海外で起きた
自殺
などを分析対象から除外した。最終的に分析の対象となったのは, 2, 334件の記事であった。諸外国の
自殺
報道のガイドライン, さらに, 日本の先行研究を参考に, 記事の評価基準を作成した。本稿では, 掲載箇所および文字数, 見出し,
自殺
の手段の記載, 遺書および
自殺
の原因・動機について報告した。分析の結果, 記事の平均文字数は各紙とも300字程度であったが, 標準偏差が大きかった。また, 見出しに「
自殺
」という文字がある記事は50.8%, 記事本文中で
自殺
の手段に言及しているものは92.5%, 単純化した原因・動機について記載されていたのは24.8%の記事であった。さらに報道されていた
自殺
の手段を見ると, 多い順に, 飛び込み, 総首, ガス, 飛び降りであったが, この順は実際の手段別
自殺
件数とは異なっていた。これらの結果から, 以下の5点が問題点として指摘された。ニュースバリューのある
自殺
が報じられるので, 報道が
自殺
全体の実態を反映していないこと, 詳細な手段が報じられることが多く,
自殺
の模倣を招く危険性があること。
自殺
の原因・動機が単純化して報道されやすいため, 実際の原因・動機が伝わっていない可能性があり,
自殺
に対し一面的な見方を人々に植え付けてしまい,
自殺
を合理化してしまう可能性があること, である。
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