背景および目的 : 糖尿病患者の心筋障害の発生機序については不明な点が多く存在する. 今回, 血中高感度トロポニンT濃度を指標にして2型糖尿病患者の心筋障害に影響する因子の検討を行った. 対象 : 心血管病の既往がない312名の2型糖尿患者を対象とし, 血中高感度トロポニンT濃度と各臨床指標との関係を検討した. 結果 : 280名に血中高感度トロポニンT濃度が検出された. 血中高感度トロポニンT濃度と空腹時血糖値およびHbA1cとの間には有意な関連を認めなかった. 一方, 血中高感度トロポニンT濃度は年齢, 糖尿病罹病年数, 血中BNP濃度, 推定糸球体濾過量, 炎症 (血中高感度CRP濃度), 酸化ストレス (d-ROMsテスト), 血管機能指標 (Cardio-ankle vascular index) とそれぞれ有意な関係を認めた. 重回帰分析の結果, Cardio-ankle vascular index (t値=4.3, p<0.001), 血中BNP濃度 (t値=3.7, p<0.001) およびd-ROMsテスト (t値=3.5, p<0.001) は従属変数である血中高感度トロポニンT濃度に対する独立した寄与因子として選択された. 結論 : 2型糖尿患者の心筋障害の進展に対して, 酸化ストレスやCardio-ankle vascular indexの上昇が関与している可能性が示唆された.
抄録全体を表示