本研究は, これまでの相撲研究において扱われることのなかった「タニマチ」をネットワークをもとに分析することによって, 相撲社会が現実的な社会全体においてどのように位置付き, どのような役割を果たしているのかを明らかにすることを目的としている。
具体的な分析対象である「タニマチ」は, 相撲社会とそれを取り巻く外部の社会との間で様々な形の相互関係を媒介する存在である。そこで, 一般的な構造を持つ組織としては捉えきれないインフォーマルな集団を理解していく有効な手段であるネットワーク分析は, 相撲社会の内外で強い影響力を行使しているにもかかわらず, その位置付けが曖昧な「タニマチ」という個人を体系的に把握することを可能にしてくれる。
こうして分析した「タニマチ」のネットワークの特質から, 相撲社会は「タニマチ」を介して外部社会からの政治的, 経済的な援助を受けると同時に, 外部社会の恣意的な政治的, 経済的なネットワークを隠蔽するという役割を果たしているということと, そうした役割を持つ社会的な装置として全体社会の一部を構成していることが明らかになった。
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