本研究は,学級歌づくりの実践事例において,特別な音楽技能を伴わない小学生児童がどのように曲を聴いて
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をするのか,その創作過程と聴き方について検討することを目的とする。現場での問題意識と先行研究・実践から,①児童はどのような手法で歌詞づくりをしたのか,②児童は自分たちの方法と異なる方法とを比較しながら,どのような特性を見出したのかの2点の研究課題を設定した。調査対象は,
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の中心メンバーとなった小学生児童5名である。質問紙調査と半構造化面接を段階的に実施し,データはM–GTAによって分析した。その結果,3個の大カテゴリー,10個の中カテゴリー,27個の概念が生成された。コアカテゴリーの[試行錯誤の連続]を中心に考察したところ,①読譜や採譜といった特別な音楽技能を伴わなくとも,児童は試行錯誤しながら独自の手法で
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した,②言葉選びでは,音楽的な側面とテーマ的な側面を往還しながら作業を進めた,③オリジナル楽曲での曲先の
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では,創作詩よりもリズムやメロディによる言葉の制約は見られるが,詞先よりも修正負担は少なく,替え歌のように原曲の影響を受けずにオリジナリティを見出せる,といった知見が得られた。本実践の
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においては,没頭する聴き方と分析的な聴き方の間に位置づけられる両義的な聴き方を通して,音楽と言葉との調和を図る様相が最終的に考察された。
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