温暖化政策における国際交渉は1992年に国連の下,「気候変動に関する国際連合枠組条約」が採択され,1995年から毎年,気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催されている。
これまでのCOP決定を分析すると,NAMA(Nationally Appropriate Mitigation Actions/途上国における適切な緩和行動)は義務ではなく,各国が自主的に温暖化対策を実施すればよく,詳細な取り決めについては今後の国際的な議論の結果を待たなくてはならない。
現在,東アジア及び東南アジアでは,温室効果ガスの削減義務を負わされることに,賛成の声こそ少ないが,一方,気候変動に関連する資金を活用し,温室効果ガスの排出量が少ない最新の技術を導入することには,興味を示している。
ベトナムは他のメコン地域諸国と比較して,人口も多く,また
チャイナリスク
等の観点から,昨今,海外の投資も増加しており,日本企業の工場新設も相次いでいる。エネルギーセクターのみならず,廃棄物セクター等における排出量が増加することが予想される。これらの温暖化対策に欧州や国際機関が支援を開始しており,投入される資金や実施体制が整備されていくため,該当するセクターに対しての一般企業の進出も促進されるものと期待される。
ラオスは,電力の殆どを水力に頼っている。日本企業としては,石炭やディーゼルで稼働する工場等の省エネなどに絞って,進出を狙うことが必要となる。逆に電気の使用で温室効果ガスを排出しないため,ガソリンやディーゼル車の電気自動車代替,オール電化機器促進等の電動機器であれば,導入の可能性は高いと言える。
カンボジアはラオスと反対の状況であり,現在,重油による発電が主ではあるが,国内の発電量が不足しており電力価格が高騰している。よって電力をエネルギーとした機器の代替案件,新設は温室効果ガス削減の効果が大きい。短中期的にはエネルギー供給及び需要の対策が有効であり,将来的には,産業工業及び廃棄物等の経済成長に比例して,排出量が増えていくセクターの対策に,カンボジア政府や国際社会の投資が集中していくと考えられる。
モンゴルは寒冷な気候に起因し,エネルギーセクターが全体の温室効果ガス排出量の60%以上を占める。特に熱電併給の石炭火力発電所,地域暖房の熱供給専用ボイラ,首都郊外や地方のゲル用(遊牧民の移動式住居)ストーブ等に使用される石炭が大きな排出源となっている。石炭だけでなく,金,銅,亜鉛,モリブテン,原油等の豊富な資源があり,鉱業分野はもとより,長期的には産業工業及び廃棄物等のセクターに,欧州や国際機関の支援が増えてくることが予想され,一般企業の進出も促進されるものと期待される。
温暖化対策については,一地域ではなく世界的に取り組まなければならない課題であることもあり,特別に資金が投入されている。民間企業だけでこれらの対策を講じることは難しく,今後はより一層の,官民一体となった戦略の策定と実行が必要になると考える。
NAMAに関わる全ての記載内容は今後の国際交渉の結果により変更される可能性がある。加えて,二国間クレジット制度に関わる全ての記載内容は,ホスト国とのさらなる検討・協議により変更される可能性がある。
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