体外受精において,多胎妊娠を防ぐため単一胚の移植が
勧告されている。そのためには,胚盤胞までの培養が必要
となるが,胚盤胞に至らずキャンセルになるケース,一絨
毛膜性双胎,培養室での煩雑さ,胚移植スケジュールの調
整などの問題もある。今回は,day2またはday3移植の
際の移植胚選択基準を検討した。
〈方法〉平成20年6月から,39歳以下で治療周期5回以下
の症例について,受精確認後は培養液のドロップ内で個々
の胚を経時的に観察した。
〈検討内容〉1.核小体前駆体(Nucleolar precursor bodies;
以下NPB)の数と妊娠例・胚盤胞(以下Bl)達成
率。2.割球数と
グレイド
の妊娠例・非妊娠例の比較。
3.培養継続による胚盤胞到達状況。
〈結果〉妊娠の有無とNPB の数では差を認めず,NPB
数と5~6日培養後の胚盤胞達成状況についても,特に差
は認められなかった。妊娠群と非妊娠群で移植した最良好
胚について,割球数の推移をみると,day2の夕方で割球
数の少ない例が見られるが差を認めない。胚の
グレイド
を
Bl 達成の有無で比較すると,明らかにBl 達成は良好胚の
比率が高かった。妊娠の有無での比較では差を認めなかっ
たが,その相違は,件数によるものと思われる。
〈まとめ〉前核期におけるNPB の数は,妊娠・非妊娠,
胚盤胞達成で差を認めなかった。day2移植での妊娠群と
非妊娠群の比較では,割球数に差はなく,非妊娠群でわず
かに
グレイド
が悪い傾向がみられた。胚盤胞までの経時的
観察では,Conventional,ICSI ともday1の夕刻より分
割スピードに差がみられ,
グレイド
も悪くなる傾向であっ
た。胚盤胞の達成率を経時的にみると,day2,day3で
は60%前後であった。
〈結論〉形態から,分割が早く
グレイド
の良い胚を良好胚
として胚移植するが,現状以上の良好胚選択マーカーは見
い出せなかった。
抄録全体を表示