目的:われわれはシランカップリング層の耐水性を向上させるために,疎水性基を有するシランカップリング剤を合成・開発し,一般的に使用されている3-methacryloyloxypropyltrimethoxysilane (3-MPS)単独処理に比較して,長期水中保管後の接着強さが有意に低下しないことを報告してきた.本研究では,疎水性基を有するシランカップリング剤nonafluorohexyltrimethoxysilane (4F),および3- (4-methacryloyloxyphenyl) propyltrimethoxysilane (p-MBS)の生体為害作用の有無を細胞毒性試験により評価した.材料と方法:50mmol/lに調製した3-MPS, 4Fおよびp-MBSで表面改質したガラス板をエチレンオキサイドガスで滅菌した後,細胞培養液(MO5)に浸漬し,37℃, 5%CO
2インキュベーター
中で24時間抽出した.これを100%抽出液としてMO5培養液で10種類に段階希釈(0.5〜50%)し,検体試験液を作製した.培養は24 well組織培養用プラスチックプレートに100個/mlに調製したチャイニーズハムスター肺由来線維芽細胞(V79)を0.5ml/well播種し,37℃, 5%CO
2インキュベーター
中で6時間培養した.培養後,各濃度の検体試験液を0.5ml/wellずつ加え培養し,6日後に0.1%メチレンブルー溶液で染色して,細胞数50個以上のコロニーを計測した.細胞毒性評価は,50%コロニー形成阻害濃度(IC
50)を求めた.結果および考察:その結果,3-MPS, 4Fおよびp-MBSのIC
50は,100%以上であった.このことから,今回用いた疎水性基含有シランカップリング剤は細胞毒性を示さないことが示唆された.
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