明治期に成立した市町村の規模は,封建時代の旧藩領とそれの再編成から生れた県とが枠組となって,ほぼ平均化した人口規模をましているが,他方,そしてその故に,面積規模はその人々と土地との係わりあい,つまり生活様式によって影響されて来る.ここではその枠組によって地域区分し,それによって歴史及び行政的要因を捨象し,次に1920年の第1回センサスにおける職業分類をもとに,農林業,水産業,鉱業,工業その他の五つの類型によって,区分された諸地域に支配的な生活様式を示した.このような作業を基礎として,農村,漁村の2生活様式と市町村規模との対応関係を統計的に示した.農村の人口規模は農業生産の,主として水稲生産力の規模(水田面積,反当収量を含めた)と密接な関係を持っているが面積は山村と平地村の間に明確な差をもち,特に直接村民の生活に関与しない林野等が包含されるか否かによって,面積規模が飛躍的に増大してしまう.
他方漁村は農村にくらべて狭域であるが,砂浜と岩磯の自然条件に助けられた漁業生産力が大きく影響を及ぼしている.砂浜漁村は農業に傾いているが,岩磯漁村では専ら漁業生産に頼っているため,面積は漁場分割の基礎確保の意味と,水揚,加工場,住居に使用される他は,存在するが故に村域に算入されているものがあって,漁村毎のバラツキが大きいことが示された.
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