日本農芸化学会誌
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レシチンで乳化したエマルションの安定性におよぼす油相成分の影響
金谷 昭子
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1979 年 53 巻 12 号 p. 407-414

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抄録

レシチンの乳化作用と乳化される油の種類との関係をしらべた.
無極性油と種々の極性基をもつ油と種々の疎水基をもつ油を抽相とし,これらに乳化剤であるレシチンを0.2, 2.0, 20.0%wt/wt溶解した.水相には脱イオン水を用いた.油相と水相を容積比1:1として,一定条件で攪拌乳化してエマルションを調製して,エマルション型,乳化安定性その他を測定した.その結果,次のようなことが明らかになった.
(1) レシチンの乳化作用は油の性質の影響をうける.レシチンは疎水性の大きい乳化剤であるが,一般にはO/W型エマルションをつくりやすい.
(2) 無極性油では炭素鎖の構造にあまり関係なく,安定なO/W型エマルションをつくる.
(3) 極性基を有する油では極性基の影響よりも疎水基の効果が大きく,エマルション型や安定性および分散粒子の粒度分布が異なった.
(4) レシチンを加えずに脂肪酸を油相としてエマルションをつくるときは,脂肪酸の疎水鎖が大きくなるとW/O型エマルションをつくる傾向がでてくる.しかし疎水鎖に二重結合が多くなるとO/W型エマルションをつくりやすくなる.これらのエマルションは不安定であるが,そのエマルションの型はレシチンを加えて乳化したときの型と一致する.
(5) 植物油を乳化するときは,ケン化価が小さい油やヨウ素価の小さい油は, W/O型をつくる傾向が強く,構成脂肪酸の影響が大きい.
(6) 以上の結果を説明するような仮説を提案した.

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