感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
インフルエンザ流行の時間差に関する研究
平均気温, 平均相対湿度を中心として
薩田 清明乗木 秀夫坂井 富士子薮内 清
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 59 巻 4 号 p. 355-365

詳細
抄録

1983~1984年にかけてのインフルエンザの流行は主としてAソ連型ウイルスによるものであり, 同流行での患者発生の全国的傾向は1984年1月下旬から2月初旬をピーク期として認められた.しかし, 東京地域でのそのピーク期は1983年12月11~17日にかけての第50週に認められ, 全国との間に著しい流行の時間差が認められた.
そこで, 著者らはこの流行の時間差を解明するために福岡地域を対照に気象学的に検討し, 次のような成績が得られた.
1) 平均気温の上では両地域とも平年に比較して今季は異常低温で流行期を経過したことを認めたが, 地域間に差は認められなかった.
2) 平均相対湿度50%以下の日数 (1983年11月~12月の間) をみると東京地域は平年同期および福岡地域の今季と比較しても有意にその割合の多いことが認められた.
3) 1~3月末の間の平均相対湿度60%以上の日数は東京地域で平年に比べて今季のほうが有意に多く認められた.
以上のごとく, 今季の全国と東京地域のインフルエンザ流行との間に生じたピーク期の時間差に, 平均相対湿度50%以下の日数を占める割合に強い関連性が考えられた.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top